人々を笑わせ、考えさせた研究や業績に贈る「イグノーベル賞」が9月14日、アメリカのハーバード大学で発表され、日本人らの研究チームが「生物学賞」を受賞した。共同通信は「性器の大発見」と報じた。
■「とりかへばや物語」にちなんで命名
朝日新聞デジタルによると、生物学賞を受賞したのは吉澤和徳・北海道大准教授(46)、上村佳孝・慶応大准教授(40)と海外研究者らの計4人。
北海道大学のプレスリリースによると、吉澤さんらはブラジルの洞窟に生息する、体長約3ミリのチャタテムシの一種「トリカヘチャタテ」を調べた。メスにペニス状の生殖器があり、オスは穴状の生殖器を持っていることを発見。交尾の際に、メスが自身の生殖器を持ち、オスの生殖器に挿入することを突き止めた。
交尾は40〜70時間と極めて長く、この長い拘束時間にオスは精子とともに栄養物質をメスに渡していることが明らかになった。研究チームは、この栄養をめぐってメス同士の競争が激しくなったと分析。多くの生物と異なり、メスの交尾に対する積極性がオスを上回った結果、メスの生殖器の進化を促したと推測している。
「トリカヘチャタテ」の和名は、平安時代の宮中を舞台に性別を取り換えて育てられた男女を描いた古典「とりかへばや物語」にちなんで命名された。性別役割が逆転した生物の研究は、性差が生じた進化的な背景を探る上でも重要な役割を果たすという。
■「女の子におちんちんがついていた」と子供に分かりやすい驚き
時事ドットコムによると、研究チームは調査のため授賞式を欠席したが、チャタテムシの探索先である高知県の洞窟で撮影したビデオメッセージが上映された。上村さんが「私たちの発見でペニスを男性器と説明している世界中のあらゆる辞書が時代遅れになった」とコメントすると、会場は笑いと拍手に包まれた。
朝日新聞の取材に対して、吉澤さんは「『女の子におちんちんがついていた』と子どもにもわかりやすい驚きがあるし、素直に面白い研究だと思っている。私たちの性に対するイメージを一変させ、進化や性の選択といった研究に重要な意味もある」と授賞の喜びを語った。
サンフランシスコ・クロニクルによると、受賞者らには10兆ジンバブエ・ドルが贈呈された。ハイパーインフレで日本円に換算する1円以下の価値しかない上に、2015年に正式に流通が廃止されている。
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ニコニコ生放送による授賞式中継(吉澤准教授らの受賞シーンは48分前後から)