白人至上主義者を明言する人々の襲撃は、米国に衝撃を与えた。大統領の対応は素早く、そしてリアルな感情の引き金を引いた。一方で、企業の役員室は沈黙を守り、介入することを控えた。.........それは、2015年。すでに過去のことだ。
8月12日のバージニア州シャーロッツビルでの事件の後、選挙で選ばれた多くの政治家よりも、企業の方がより敏感に反応するようになった。
2017年の事件では、ドナルド・トランプ大統領が、バージニア州シャーロッツビルで集会を開いた白人至上主義者とネオナチをすぐに非難するのを拒否した。その後、いくつかの国内の大企業の役員たちが通例に反して、アメリカの最高司令官を否定した。
一台の車が、集会に抗議する人々の人混みに突っ込み、32歳のヘザー・ヘイヤーを殺害した。その2日後、トランプ氏は差別主義を「悪」と呼びながらも、集会には「とても良い人々」も参加していたとする、白人至上主義者を容認するとも解釈できるメッセージを発した。
政治的問題に発展しそうになると、大企業はその性質からリスクを嫌う。
顧客やパートナーが離れるのを防ぐために、企業は、その事業に直接関与しない問題では伝統的に政治的中立を保ち、与党政権と友好的な関係を保つのが通例だ。しかし、今回の事件では、政治的主流の肩を持つことは、白人至上主義者を擁護するような状況に陥る。そのことで引き起こされる風評被害の危機は、静観するには大きすぎたようだ。
「ビジネスにとってリスクを冒す価値はありません」コンサルタント会社、バーンスタイン危機管理の創立者、ジョナサン・バーンスタイン氏は話した。「彼らはすぐに、トランプ政権、ホワイトハウスの仲間になりたくないことを自覚しました」。
トランプ氏の側から逃げ出した企業のリーダーたち
事件の2日後、8月14日、企業のリーダーたちはトランプ氏の側から逃げ出し始めた。
大統領のビジネス関連の諮問委員会「アメリカ製造業評議会」で唯一のアフリカ系アメリカ人、メルクのCEO、ケネス・フラツィアー氏は、「個人的良心のために」そして「不寛容と過激主義に反対する態度を示すため」に、評議会を自ら辞任した。その数時間後、アンダーアーマーのCEOケビン・プランク氏と、インテルCEOのブライアン・クルザニッチ氏が続いた。
メルクのCEO、ケネス・フラツィアー氏とトランプ氏
それは、トランプ氏が受けた批判を挽回するスピーチで、クー・クラックス・クラン(KKK)とネオナチを非難した後だった。
トランプ氏は、重役たちを「スタンドプレーヤー」だと非難し、彼らの除名を明言した。しかし、止めることはできなかった。
大衆の圧力は高まり、抗議のために半数近くが委員会から身を引いた。こうして、消費者に直面するブランドは特に危機に立たされた。
大統領のもう1つの委員会「戦略政策フォーラム」のメンバーはまだ脱退していない。しかしウォールマートCEOのダグ・マクミリオン氏も、トランプ氏のシャーロッツビルの悲劇に対する反応に対して苦言を呈し、まれに見る態度をとった。
8月16日、残っていた企業の役員も、潜在的な顧客のボイコット、怒りの電話、SNSでのメッセージに直面し、両委員会の解散に同意した。しかし、トランプ氏は委員会の解散をTwitterで自分の手柄かのようにアピールした。
製造業評議会、戦略政策フォーラムのビジネスマンに圧力をかけるのではなく、私は両方とも終了させる。みなさん、ありがとうございました!
その週の終わりまでに、Politicoのレポートでは、商務省のデジタル・エコノミー・アドバイザー委員会の半数以上が退任した。グループにはMozillaの女性会長、ミッチェル・ベイカー氏も入っていた。
アメリカ政界で企業の力が進化
この週の出来事は、米国政界で企業の力が進化していることを示していた。
2010年の最高裁判所の「シティズン・ユナイテッド」として知られる判決は、大企業を含む裕福な寄付者に、選挙で無制限とも言える出費力を与え、通常の有権者が候補者に対して持つ影響を低下させた。政治的な反対をほぼ不可能にした支持者の選挙区改変と一体となって、議員たちは彼らを代表しているはずの有権者達にとって信用できない存在になりつつある。
トランプのシャーロッツビル事件に対する反応への反動は、それを完全にあらわにした。8月15日までに、共和党の議員たちは鋭く、たとえそれがリップサービスだとしても、大統領の姿勢に対して非難をはじめた。しかし、上院議員、下院議員が言葉だけなのに対し、企業は、同様の大衆の圧力に直面して、行動を起こした。
企業の管理コーチ兼風評コンサルタントを務めるデビア・テミン氏は、複数の企業役員がトランプ氏の委員会から撤退したと話す。
「ビジネスは4年、あるいは8年、12年といった年月よりもさらに遠望的な戦略的見通しを持っています」。彼女はハフポストUS版にそう語りました。
トランプ氏は、メキシコ人を「レイプ魔」や「ドラッグディーラー」と呼び、イスラム教徒を国から追放すると宣言した大統領選挙戦以来、ビジネス界に挑戦的な態度を示してきた。
Apple、 Microsoft、 Coca-Colaのような巨大企業は、トランプ氏が大統領候補の指名を取り付けると決まった時点で、2016年の共和党全国大会への出資を取り下げた。大口のGOP出資者であったヒューレットパッカード株式会社CEOのメグ・ホイットマン氏は、個人的な政治サミットでトランプ氏をヒトラーやムッソリーニと比べたと伝えられている。BuzzFeedも共和党チケットからの広告費を拒否した。
トランプ氏が大統領になってからも、その圧力は弱まっていない。解散する以前の今年初めから、戦略政策フォーラムは、トランプ氏の決定が擁護できないものだとしてその座を降りている。
今年2月には、Uberの当時のCEOトラヴィス・カラニック氏が、イスラム教徒の入国制限に反対するため、退席した。
5月にはTeslaとSpaceXの代表、イーロン・ムスク氏が、パリ協定から離脱を表明したトランプ氏に対して「選択の余地がなくなった」として辞任した。また、ウォルトディズニーCEOのボブ・アイガー氏も同様の理由で辞任。パリ協定をめぐっては、興味深いことに、気候科学の妨害に資金援助していた石油メジャーさえも、トランプ氏に対し合意に留まるように意見を述べていた。
ネットからの締め出しも
多くのIT企業は、白人至上主義のウェブサイトThe Daily Stormerにサービス提供を拒み、結果的にインターネットから締め出した。
「朝起きた時、機嫌が悪かったので、彼らをインターネットから追い出すことにしました」。CloudflareのCEOマシュー・プリンス氏は、記者へのEメールでそう綴った。しかし、「言論の自由」の擁護者は、個人企業がどのようなコンテンツがインターネット上にあるべきかを決めてはいけないと議論している。
テキサスの州議会が2017年、トランスジェンダーに関する「トイレ」法案を通過させようとした時、州全体に及ぶボイコットを恐れたビジネス界はその(少なくとも一時的な)否決に大きな役割を果たした。ある大企業の代表者は、ノースカロライナ州で持ち上がった、これとよく似た法案に対して反対したものの、こちらは2016年に法の中に組み込まれた。
「企業は風評被害により繊細になっている」
「企業は長期間の風評被害により繊細になっている」と、テミン氏は指摘する。その一例として、彼女は2010年のBP社の事例を挙げた。
メキシコ湾原油流出事故:BPの対策集結地域(撮影日:2010年06月16日 EPA/BEVIL KNAPP)
原油流出事故で、何百万ガロンもの原油がメキシコ湾に注ぎ込んだ際、この巨大石油企業のチーフエグゼクティブは「私の人生を返して欲しいものだ」と発言して大炎上を起こした。このコメントが彼の辞職につながったと彼女は語る。
「危機的状況の中で、無神経な発言によってBPのように社会の除け者になった場合、そのCEOはクビになります」。テミン氏は述べた。「彼は正しいことをたくさんしたでしょう、でも正しいことを言わなかった」。
トランプ氏が、白人至上主義者を甘やかしていることにビジネスリーダーたちが抗議しているからといって、それが彼らがホワイトハウスとのコミュニケーションを絶っているということにはならない。
選挙中の抗議にもかかわらず、トランプ氏が2016年11月に予想外の勝利を収めると、ビジネスリーダーたちはその政権に接近した。彼が自由化と税制の改変を自身の政策の方針としてからは特にその傾向が強まった。この事件でトランプ氏から距離を置いた企業が、数カ月、数年後もホワイトハウスに対し陳情運動を続けるということもあるだろう。
「ビジネス界はアメリカ経済にとって重要な問題に関わり続けるでしょう。それが異なった経路を通じてというだけで」。多くの金融サービスクライアントを代表するコンサルティング会社、ハミルトン・プレイス・ストラテジーのディレクター、マイケル・スティール氏はPoliticoにそう語っている。
「ビジネスコミュニティの多くの人々はシャーロッツビルの事件に関する大統領のコメントやツイートに不満を感じています。しかし、アメリカの経済や人々の生活をよくするのに政策が重要だということには変わりありません」。
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ハフポストUS版に掲載された記事を翻訳しました。