キューバ・ハバナにあるアメリカとカナダの大使館の職員らが、聴力が低下する被害に見舞われている。音波装置を使った「音響攻撃」を受けた可能性があると、CNNなどが報じた。
在キューバ大使館に勤務するアメリカ政府の職員数人が、勤務中に身体症状を訴えた。そのうち少なくとも2人は深刻な健康被害があり、治療のためアメリカへ帰国した。回復が不可能なほどの聴覚障害が残る可能性があるという。
被害にあった場所や時刻は異なるものの、2016年後半以降、複数の職員が脳しんとうなどの症状を訴えているという。
国務省は数カ月にわたってキューバ政府に懸念を伝え、現地に医師を送るなどの対応を取ってきたが、事実関係は明らかになっていない。
アメリカ政府はこうした事態を受けて、今年5月、在米キューバ大使館の外交官2人を国外追放処分とした。FBIが捜査に乗り出しているという。
また、キューバに駐在するカナダの外交官も聴覚障害や頭痛を訴えている。アメリカの政府職員と同様に、音波装置による影響の可能性があると、BBCが報じた。
カナダの外務省はBBCの取材に対して、「キューバに駐在するカナダやアメリカの大使やその家族に起きた特異な症状は把握している。アメリカ、キューバ政府と協力し、原因の究明に向けて努力している。今のところ、カナダ人や他の国の観光客への影響はないものと考えている」と答えた。
一方、キューバ政府は8月9日に声明を出し、「キューバ国内で、外交官やその家族に対するいかなる(暴力)行為も許したことはない」と、問題への関与を否定。事態を知らされたのは今年2月17日で、政府として緊急調査をしていると説明した。
アメリカによる外交官の追放は「不当だ」と反発し、「キューバはアメリカ人を含めた旅行者や外交官にとって安全な場所であると考えている」と述べた。
アメリカとキューバは2015年、50年以上ぶりに国交が回復。翌16年にはオバマ前大統領がアメリカ大統領としては88年ぶりにキューバを訪問していた。