天安門事件の元リーダー、劉暁波氏の死去で中国政府を非難「私の先生は殺された」

中国・北京で1989年6月、民主化を求める学生たちが武力鎮圧された「天安門事件」当時の学生リーダーの一人だったウーアルカイシ氏が7月21日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で会見した。ウーアルカイシ氏は13日に死去した人権活動家の劉暁波氏について、「先生は殺された」と、中国政府を強く非難した。
Kei Yoshikawa

1989年6月、中国・北京で民主化を求めた学生らが武力鎮圧された「天安門事件」で学生リーダーの一人だったウーアルカイシ氏が7月21日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で会見した。ウーアルカイシ氏は13日に死去した人権活動家の劉暁波氏について、「先生は殺された」と、中国政府を強く非難した。

この日、ウーアルカイシ氏は「国境なき記者団」のクリストフ・ドロワール事務局長、2003年にノーベル平和賞を受賞したシリン・エバディ氏とともに会見に臨んだ。

発言の冒頭、ウーアルカイシ氏は「人権と民主主義の闘士、そしてジャーナリストであった劉暁波について語りたい」と述べた上で、「劉暁波は私の友であり、指導者であり、先生だった」と、目を潤ませながらその死を悼んだ。ウーアルカイシ氏は劉暁波氏と同じ北京師範大学の出身で、教え子にあたる。

劉氏は末期のがんに冒され、ドイツやアメリカでの治療を希望していたが、中国政府はこれを拒否した。ウーアルカイシ氏は劉氏に対する中国政府の医療対応を疑問視し、「中国政府は私の先生を殺した」と強い言葉で非難した。

その上でウーアルカイシ氏は「中国の民主化は我々の責任だ」「中国政府は(妻の)劉霞氏のことも殺そうとしていると思う」などと、劉氏の妻の解放を求めた。

「天安門事件はもう一度起こる」

1989年当時の自身の写真を見ながら会見するウーアルカイシ氏

劉暁波氏の死を受けて、中国の民主化運動は今後どう動くのだろうか。ハフポスト日本版はこの日の会見で、ウーアルカイシ氏に見解を聞いた。

ウーアルカイシ氏は「良い質問だ。天安門事件のようなことは、もう一度起こると思う。中国政府は反政府の人たちに圧力をかけている。にも関わらず、中国では毎年20万件もの反政府デモが発生している」と説明した。

さらに、「(民主化運動が)もう一度起こるとして、その背景となるのは、民主主義の自由の旗を掲げるためでも、政治的スローガンによるものではなく、人々が持つ“恐怖”だ」と指摘。

ウーアルカイシ氏は、「反政府の動きを抑圧する中国政府に、人々は不安を抱く。もちろん、恐怖は自然な感情だ。しかし中国の歴史、世界の歴史が示すように、恐怖は中国の人々を、西側諸国と協力によって最悪の事態を避ける瞬間の一歩手前のところに向かわせるだろう」と述べ、中国政府による抑圧こそが民主化運動を高揚させる最大の要因となり得ると主張した。

「私も中国に戻りベストを尽くしたい」


中国で再び民主化運動が高まった場合、ウーアルカイシ氏はどのような役割を果たすつもりなのか。ハフポスト日本版の質問に対し、こう答えた。

「劉暁波氏は1989年当時、研究者としてアメリカの大学にいた。にも関わらず中国へ戻り、北京で学生たちとともに民主化運動に参加した。その後も国外に亡命しなかった。私も中国に戻りベストを尽くしたい」と、中国への帰国を望む姿勢を見せた。

またウーアルカイシ氏は、中国の隣国である日本の役割について言及した。

「日本は決して小さい国ではない。日本は、中国を非難する世界の最前線になることができる。しかし日本は、天安門事件後も中国と信頼関係をもつ西側諸国の代表的な国の一つとして行動した」と指摘した。その上で、「(劉暁波氏が亡くなってしまった今こそ)中国の民主化のため、民主主義のために行動してほしい」と訴えた。

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