家族が団らんしている中で、お母さんだけが家事や育児をしている―― そんな広告がイギリスからなくなりそうだ。
イギリスの広告基準協議会(ASA:Advertising Standards Authority)が7月18日、広告における男女の固定観念を調べたレポートで、「男女の役割を押し付けるような広告を、さらに規制する必要があると判断した」と発表した。
お母さんだけが家事や育児をしている描き方の他にも「痩せている体型がいい」といった体に対する不安を煽るメッセージや、「男の子の将来の夢はサッカー選手、女の子はお嫁さん」といった性別によるステレオタイプを含む広告も規制されることになる。
ASAはこれまで、「女性を物のように扱った広告」「不適切なまでにセクシーに描いた広告」「痩せ過ぎのモデルを起用した広告」などを禁止してきたが、新しい規制ではどんな広告が問題になるのか。例として挙げられたのが、ダイエット食品の会社が2015年につくった「ビーチの準備ができた体」広告だ。
ビキニを着たモデルの写真の横に「あなたの体はビーチの準備ができている?」と書かれたこの広告には「女性たちの自分の体型に対する不安をかき立てる」と多くの苦情が寄せられた。
また、2016年のGAP子供服の広告にも多くのクレームが寄せられた。
アルバート・アインシュタインのTシャツを着た男の子の横には「小さな学者。君の未来はここから始まる」という説明文が載っている。その一方で、キラキラした猫の耳をつけた女の子の説明として「社交家、遊び場の話題の的」と書かれている。
他にも、女の子は将来バレリーナに、男の子はエンジニアになりたいと描いた、乳児用粉ミルクの広告も問題視された。
ASAの報告書には、今後次のような広告が禁止されると書かれている。
・家族全員で汚した家を、女性が1人で片付ける
・本来男の子がやるとされるようなアクティビティを、女の子がやるのは不適切であるかのように描く(その逆も)。
・男性が、簡単な育児や家事のみをやっている、もしくは挑戦して失敗する
一方、ただ女性が掃除をしていたり、男性がDIYをしていたりするような描き方は問題にならない。
プロジェクトを主導したASAのエラ・スマイリ氏は「それぞれの人がどう見えるべきか、振る舞うべきかを決めつけるような広告は、受け手に対してネガティブに影響し、選択肢を狭める可能性がある」と述べる。
また報告書は「広告でのジェンダーの押しつけは、危険や攻撃性をはらんでいて、特に子供や若い人たちに重大な影響を及ぼす可能性がある」と若い世代への影響を問題視している。
そして「広告は、男女間の不平等を招く多くの原因の1つではあるが、規制を強化して不平等を失くすことは、良い結果をもたらす」と説明する。
新しい規制は2018年からスタートする予定だ。
この発表の1カ月前には、女性の地位向上を目指す国連の機関「UNウィメン」が、男女のステレオタイプを広告から失くそうとカンヌ国際広告祭で呼びかけた。今後、広告での男女の描き方に関する議論がさらに進むかもしれない。