東京都環境局は7月6日、強い毒を持つ外来生物「ヒアリ」が東京湾の大井埠頭のコンテナ内で発見されたと発表した。関東地方でヒアリが発見されるのは初めて。
産経ニュースによると、6月27日に大井埠頭で陸揚げされた中国・三山港からのコンテナ内部からヒアリ1匹が確認された。コンテナは30日に千葉県内の荷主に搬出され、大井埠頭に返却されたコンテナの確認作業中に発見されたという。
国内での発見は、兵庫県尼崎市、神戸市、愛知県弥富市、大阪市に続き5件目。大阪市では、国内初の女王アリも見つかっていた。
環境省は「ヒアリの簡易的な見分け方」とする文書を公表して、警戒を呼びかけた。東京都環境局は「もし発見した場合には、素手で捕まえたり触らないように注意し、お住いの区市町村や東京都環境局(03-5388-3548)までご連絡ください」と訴えている。
■ヒアリとは? 北米では死亡者も
ヒアリは南米原産の赤褐色のアリで、日本での定着は確認されていなかった。6月9日に兵庫県尼崎市で見つかったのを皮切りに、神戸港、名古屋港で働きアリが確認されていた。
毎日新聞によると、ヒアリは地面に高さ15~50センチほどの巣(アリ塚)を作り、雑食性で何度も刺す強い攻撃性を備えている。刺されると、有毒物質のアルカロイドの作用で激しい痛みやかゆみ、発熱などを引き起こす。
人によってはアレルギー性のショック症状「アナフィラキシーショック」で呼吸困難や意識不明に陥ることもある。ハチに刺されてアレルギー症状を起こしたことがある人は要注意だ。
ACAAI(アメリカ アレルギー・ぜん息・免疫学会)によると、アナフィラキシーショックは小児の0.4%〜0.8%および成人の3%で起こると推定されている。アメリカ合衆国ではハチやヒアリなどの昆虫によるアナフィラキシーの結果で、毎年では少なくとも90〜100人が死亡しているという。
この死亡者のうちヒアリが、どれくらいの割合を占めるのかは不明。1976年のアメリカの科学雑誌に載ったヒアリについての論文には、「アメリカ合衆国で年間に40人以上が亡くなっていると推定される」と書かれている。
■国内でのヒアリの確認状況(7月3日まで)
環境省の発表と、Google Mapを元に筆者が作成
(1)6月9日 兵庫県尼崎市
5月20日、中国・広州市の港から神戸港(ポートアイランド)に運ばれたコンテナが、同港に陸揚げされ25日まで保管された。翌26日、尼崎市でコンテナ内の積み荷を取り出す際、内部でヒアリの集団が見つかったという。コンテナは神戸市内に移され、消毒。6月9日にヒアリと確認された。
(2)6月18日 兵庫県神戸市
ヒアリが確認されていたコンテナが保管されていたポートアイランドのコンテナヤードを調べたところ、舗装面の亀裂などで約100匹のヒアリを見つかった。緊急防除を実施済みだという。
(3)6月30日 愛知県弥富市
愛知県弥富市にある名古屋港の鍋田ふ頭のコンテナ置き場で、外来種と見られるアリ7匹が見つかった。その場で殺虫剤で処分するとともに、港の管理会社が29日に環境省にこのうち2匹の鑑定を依頼。30日に環境省は、いずれもヒアリと確認したと発表した。
(4)7月3日 大阪府大阪市
大阪南港で、ヒアリとみられる死骸約50体を回収。周辺の緊急調査を実施している。
■関連スライドショー(世界の有毒生物)
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