文部科学省の前川喜平・前事務次官が6月23日午後、都内の日本記者クラブで記者会見した。学校法人「加計学園」(岡山市)の獣医学部新設を巡る問題で、朝日新聞や週刊文春が「行政がゆがめられた」などと証言するインタビューを掲載する直前に、前川氏が在職中、東京・歌舞伎町の出会い系バーに出入りしていたことを報じたことを「首相官邸の関与があった」として、「日本の民主主義は死んでしまう」と警告を発した。
■文書公開で「国民の疑惑がさらに深まった」
前川氏は文科省の再調査で疑惑に関わる文書が次々に見つかったことについて、「国民の疑惑がさらに深まった」として、以下のように話した。
「文部科学省は100%とは言えないが、一定の説明責任を果たしつつあると思います。一方、記載されている事実は内閣府や総理官邸との関係を示すものであって、これらの事実関係につきましては、さまざまな理由をつけて官邸あるいは内閣府は事実関係を認めようとしていないという状況にあります。そういった姿勢は私から見れば、不誠実であると言わざるを得ない。真相解明から逃げようとしているとと評価せざるを得ない。
文部科学省の文章に出てきます『官邸の最高レベルが言っていること』『総理のご意向』という文言を含んだ文書がありますが、この内容については、内閣府においては自分の口から発した言葉を自ら否定していると。そういう状況ですから、あり得ない話ではないかと思っております」
このように内閣府と首相官邸の対応を厳しく批判。「規制改革を全体としてスピード感を持って進める」という安倍首相の意志を反映したものだという山本幸三・内閣府特命担当大臣(地方創生担当)の説明については「かなり無理がある」と話した。
「これらの文章に記載された言葉を素直に読めば、『官邸の最高レベルが言っていること』『総理のご意向』が何を言ってるかと見れば、獣医学部の開設時期を平成30年4月にしてほしいと、この一点なんですね。このことに言及している言葉だというのは、文章を読んでいただければ明らか。それが加計学園のことであることは、関係者の間では事実上公然の共通理解であった」
このように述べた上で、「総理自ら先頭に立って説明責任を果たして欲しい」と安倍首相に注文した。
■出会い系バー報道「首相官邸の関与があったと考える」
また、前川氏は5月22日付の読売新聞に「出会い系バー」に通っていたと報じられた経緯について「首相官邸の関与があったと考える」との認識を示した。その根拠として以下のように言った。
「もともと、私がそういうバーに出入りしているというのは官邸は知っていました。杉田(和博)副長官から『そういう場所には行くな』と注意を受けていました。そして、読売新聞の記事が出たのは5月22日ですが、20日と21日に読売新聞の記者から私にアプローチがありました。
私的な行為について報道したいのでコメントが欲しいということでしたが、私は答えませんでした。正直申し上げて、読売新聞がそんな記事を書くとは思いませんでした。
同じ21日に、和泉(洋人)総理補佐官から、文科省の某幹部を通じて『和泉さんが話をしたいといったら応じるつもりがあるか』と打診を受けました。私は『少し考えさせて欲しい』と言ってそのままにしておきました。
私は報道が出たとしても構わないというつもりだったので、報道を抑えてほしいと官邸に頼もうということは思っておりませんでした。私は、読売新聞のアプローチと、官邸からのアプローチは連動しているという風に感じました」
これらが官邸が読売新聞の報道に関与している「一つの根拠」とした上で、権力が私物化されると『日本の民主主義は死んでしまう』と警告を発した。
「これが私以外にも起きているのとするならば、大変なことだと思います。監視社会化、警察国家化ということが進行していく危険性があるのではないか。
権力が私物化されて、『第4の権力』と言われるメディアまで私物化されたら日本の民主主義は死んでしまうと、その入り口に我々が立っているのではという危機意識を持ちました」
■前川会見の動画