中国が提案した積極的な環境投資は、気候変動政策を後退させたアメリカと対照的だ

「我々は、『一帯一路』の緑化開発のための国際協力体制の確立を提案する」
Chinese President Xi Jinping makes a toast during a welcome banquet for the Belt and Road Forum at the Great Hall of the People in Beijin on May 14, 2017.China touted on Sunday its new Silk Road as 'a project of the century' at a summit highlighting its growing leadership on globalisation, but a North Korean missile test threatened to overshadow the event. / AFP PHOTO / POOL / WU HONG (Photo credit should read WU HONG/AFP/Getty Images)
Chinese President Xi Jinping makes a toast during a welcome banquet for the Belt and Road Forum at the Great Hall of the People in Beijin on May 14, 2017.China touted on Sunday its new Silk Road as 'a project of the century' at a summit highlighting its growing leadership on globalisation, but a North Korean missile test threatened to overshadow the event. / AFP PHOTO / POOL / WU HONG (Photo credit should read WU HONG/AFP/Getty Images)
WU HONG via Getty Images

中国が主導する「シルクロード経済圏構想」(一帯一路)の国際会議「一帯一路フォーラム」が5月14、15日に北京で開催され、130カ国以上の代表が参加した。中国の習近平国家主席はインフラ整備に使うシルクロード基金に1000億元(約1兆6400億円)増資し、参加国・地域に600億元(約9700億円)援助すると表明した。

また習氏は、クリーンエネルギーへの投資、科学的な協力体制の構築、そして気候変動に取り組む他国への支援を約束した。

一帯一路フォーラムには、中国が広大な貿易ネットワークを共に構築したいと考える130カ国が集まり、習主席は財政を「近代経済の生命線」だと述べた。

29カ国の首脳が参加した会議後の会見で習氏は「我々は、『一帯一路』の緑化開発のための国際協力体制の確立を提案する。そして関係諸国の気候変動の取り組みも支援する」と語った。CNNは、今回のフォーラムを「『中国の新世界秩序』の形成」と評している。基調演説の全文は、政府系機関紙環球時報」に英語で掲載された。

「エネルギー網の世界的な相互連結や環境に優しい低炭素開発を実現するため、エネルギーミックスの新たな変化やエネルギー技術の改革がもたらす機会をとらえる必要がある」と、習氏は15日に演説した。

2017年5月15日、北京で開かれた「一路一帯フォーラム」の最後に記者会見する中国の習近平主席。JASON LEE / REUTERS

スイスのダボスで開かれる「世界経済フォーラム」やG20の中国主導版とも言えるこのフォーラムは、欧米主導の西側陣営に代わる、懐の深い強力な存在としての中国をアピールするものだ。その根底にあるのは、古代のシルクロードを思い起こさせる商業と外交の広大なネットワークの確立を目標とする、中国の「一帯一路」構想だ。トランプ政権が東アジアでのアメリカの経済基盤を強固にするための12カ国の貿易協定だった環太平洋パートナーシップ協定(TPP)から離脱した後、習氏は特にこの政策に力を入れてきた。

習氏がアメリカに代わって温暖化対策で世界を主導していくことを模索する中、エネルギー・環境面を取り仕切るという役割が重要視されている。トランプ大統領は、過去10年間継続してきた気候変動政策を後退させる動きを見せており、パリ協定からも間もなく脱退する可能性がある。パリ協定は、シリアとニカラグアの2か国を除く全世界の国が署名した歴史的な取り決めであり、今世紀末までに温暖化の原因である排出物を大幅に削減することを目指している。中国は、トランプ氏に脱退を思いとどまるよう警告している

長年「気候変動はアメリカの経済競争力を削ぐため中国人がでっち上げたものだ」と主張してきたトランプ大統領は、環境保護庁(EPA)の長官に、化石燃料の擁護者であるスコット・プルイット氏を指名し、石炭増産にかじを切った。さらに、貧困国の温暖化への対応を支援するプログラムの廃止を提案した。これには、気候変動に関連する海面上昇や歴史的な干ばつのリスクが最も高い国も含まれる。

中国が、アメリカをしのぎ今も世界最大の二酸化炭素排出国なのは間違いない。地球上の人為的な炭素排出量に占める割合は29%程度。炭素排出物は太陽からの熱を大気中に閉じ込め、温暖化を引き起こす。アメリカは排出量の約15%を占めている。

国際エネルギー機関(IEA)が3月に発表したデータによると、2016年の排出量は中国とアメリカがともに減少し、世界全体では3年連続横ばいとなった。しかしスモッグに苦しむ中国が今後4年間で再生エネルギーへの投資に2兆5000億元(約42兆円)を確保し、103カ所の石炭火力発電所の新設を中止したのに対し、トランプ政権は石炭を増産し、気象学者やその研究を追放するなどしている。

中国やその他の国にとって、これは大きなチャンスとなっている。フォーラムの演説の中で習氏は、科学者の直接交流プログラムや共同研究室イニシアチブ、その他のフォーラムを立ち上げ、科学者の国際的な協力を促すことを確約した。

「中国は、他国とともにイノベーションのための協力体制を強化する」と習氏は述べた。「来たる5年間で、若い外国人研究者のために2500件の短期滞在を提供し、外国人の科学者やエンジニア、管理者を5000人訓練し、50の共同研究所を設立する」

一方で、フォーラムでは参加国間で中国との思惑の違いも表面化した。中国が提示した貿易に関する文書をめぐり、環境基準への懸念からドイツやエストニア、ハンガリーといったEU加盟国が署名を拒否。ある高官はAFP通信に、EU各国は文書に物資の公的調達の透明性や環境基準について十分な記述がなかったことが理由だと語った。

ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。

▼画像集が開きます

(スライドショーが見られない方はこちらへ)

注目記事