公立小中学校の教員の勤務時間が10年前と比べて増えたことが、文部科学省が4月28日に公表した教員勤務実態調査結果(速報値)で判明した。中学教諭の約6割が週60時間以上勤務しており、過労死の目安とされる水準を超過。授業時間が増加したほか、中学では土日の部活動の時間が倍増した。
共同通信は「教員の時間外勤務は法律などで限定されているが有名無実化しており、問題視されていた過重労働の深刻さが改めて浮き彫りになった」と伝えた。
この調査は文科省が10年ぶりに実施。2016年10~11月に全国の公立小中学校各400校の教員を対象に勤務状況などを尋ね、小学校397校の8951人、中学校399校の1万687人から回答を得た。
調査結果によると、教諭の平日の勤務時間の平均は小学校が11時間15分で前回より43分、中学校が11時間32分で前回より32分、いずれも増加した。また、土日の勤務時間は小学校が1時間7分で前回より49分の増加、中学校は3時間22分と前回より1時間49分と大幅に増えた。小学校では33.5%、中学では57.6%の教諭が週に60時間以上勤務し、20時間以上残業していた。
厚生労働省は、時間外労働が、1カ月で約100時間を超えるか、2〜6カ月の月平均で約80時間を超えた場合を、労災の基準となる「過労死ライン」に定めている。
それぞれ最も増えた業務は、平日は小中学校ともに「授業時間」、土日は小学校が「授業の準備」だった。文科省は「脱ゆとり」にかじを切った08年の学習指導要領改訂で小中学校の授業時間を増やしており、その影響とみられる。中学校では土日の「部活動・クラブ活動」が前回の1時間6分から2時間10分にほぼ倍増した。
管理職の勤務時間も増えた。小中ともに平日の勤務がもっとも長いのは副校長・教頭で、小学校は12時間12分(06年度比49分増)、中学校は12時間6分(同21分増)に上った。
松野博一文科相は28日の閣議後記者会見で「看過できない深刻な事態が客観的な数字として裏付けられた。早急に対処したい」と述べ、中央教育審議会に対策の検討を依頼する方針を示した。
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