30代の私、結婚相手をみつけたのは「オタクだけの婚活サイト」だった

大勢の男女が集まって自己紹介や告白タイムをする、いわゆる「婚活パーティー」の過程はここでは必要ない。
al-pacako

「オタク婚活サイト」、それはいろんなジャンルのオタクだけが集まるネット上での出会いの場だ。

オタク婚活サイトの最大の特徴は、年齢・職業・年収といった基本プロフィールに加えて、趣味のジャンルや好きな作品名から相手を検索できるところ。大勢の男女が集まって自己紹介や告白タイムをする、いわゆる「婚活パーティー」の過程はここでは必要ない。つまり、「ゲーム」「コスプレ」「鉄道」「ボカロ」などの趣味嗜好によるマッチングがカップル成立の大きな要因なのだ。

普通の婚活とは違う、オタク婚活ならではのよさとは? 実体験を描いたエッセイコミック『オタクだけの婚活サイトで運命の人を見つけました』の著者・アルパカ子さんに話を聞いた。

アルパカ子さん

■「生活の中に彼氏を作るための隙間がどこにもなかった」

――アルパカ子さんがオタク婚活サイトに登録したのは31歳のとき。どんなきっかけで婚活しようと?

それまでは結婚願望はほとんどなかったんです。「いずれいい人がいたら」くらいの気持ちで、自分からは何も行動しないという、よくあるパターンです。

私はIT会社の技術職ですが、当時、職場に30人くらいいた30~40代の女性陣はほとんどが独身でした。勤務時間が長いこともあって、平日は家と会社を往復するだけ。

さらに私の場合、休日はオタク活動でずーっと家に引きこもっているので、未婚の男性に出会う機会はほとんどなくて。

――「恋人」ではなく、「結婚相手」を探そうと思ったのはなぜでしょう。

生活の中に彼氏を作るための隙間がどこにも見当たらなかった。効率を考えたら婚活が一番いいんじゃないかなぁという気がして。周囲で「この前、婚活したんだけど~」という話を聞くこともあったので、婚活自体に抵抗はなかったんですね。

まずは普通の婚活サイトを色々見てみたんですが、プロフィールが「最近ランニングをはじめました!」みたいな爽やかな感じで、「話が合う気が1ミリもしねぇ!」ってなって(笑)。

「そういえばオタク婚活サイトって聞いたことがあるぞ」と思い出したんです。まったく趣味の違う人とおつきあいするのは自分には難しいなと感じたので。

――アルパカ子さんの「オタク」趣味とは?

私はアニメ、マンガ、ドールです。ターニングポイントは14歳のとき。友達の影響で『新世紀エヴァンゲリオン』『新機動戦記ガンダムW』を見るようになって、その友達に同人誌というものの存在を教えてもらいました。エヴァ直撃世代なんです。

ドール趣味は18歳で目覚めて、今は人形がメインのオタクです。今、家には人形が130体くらいあります。棚に入り切らないのでベッド下収納とか部屋のあちこちに分散しているんですけど、この趣味を隠したまま恋愛や結婚するのは無理だろうなと思って。

――「婚活の期限は1年間」と自分で決めたそうですね。その理由は?

長期化したらモチベーションを保てないだろうという予感があったんです。婚活うつ、婚活ストレスとか、婚活について検索すると、失敗談がすごくたくさん出てくる。今の会社で忙しい仕事をしながらそんなモチベーションを長期間保てる気はしなかった。それで自分で「1年」と期限を区切りました。

■オタク婚活サイトだからこそ、仕事スキルがフルに活かせた

――登録後はどんな流れで婚活は進むのでしょう。

まずは自分のプロフィールを入力するところから始めます。私が登録したオタク婚活サイトは、プロフィールでオタク趣味について、その趣味の重要度や投資額、好きな作品について詳しく語る欄などがありましたね。

前職がプログラマーだったので、サイトのシステムが大体見えて、検索に引っかかる確率を上げるためにどうすればいいか、最初の段階で徹底的に考えました。好きな作品を挙げるにしても『まどマギ』だと検索に引っかからないから『まどか☆マギカ』とタイトルは略さない、とにかく作品名は挙げる、チェックリストはひたすら埋める、文字量はスマホでも読めるくらいを目安にする、など検索率を上げるための工夫は色々しましたね。

流れとしては、検索で引っかかったプロフィールを見る メッセージを送り合う 何度かメールをやり取りしてから実際に会う 順調にいけば交際 結婚という感じだと思います。

――パートナーの条件に、趣味の一致以外では何を求めていましたか?

他人をバカにしないことと、家事を分担してくれることです。私の職場は忙しい時期には午前帰りが続くこともあるので、片方がむちゃくちゃ忙しいときには片方が家事をフォローできる、くらいの相手がいいなと思っていました。

ただ、ITの技術職という仕事柄、やろうと思えば地方でも海外でもどこでもできる。だからもしいい相手と出会うことができたら、私のほうが柔軟に変わればいいだろう、という気持ちもありました。

容姿に関しては生理的に無理なタイプでなければ、特に希望はありませんでした。慣れればどんな人でも大丈夫かなって。間口は狭めないほうがいいと思ったので、年収や身長など相手に求める希望条件は控えめにしました。年収に関しては、私の年収と足してなんとか共働きでやっていけると思う金額をネットで調べて、それを希望しました。

――モチベーション維持のための期限設定、検索率を上げる工夫など、仕事のスキルと経験がすごく役立っていますね。これまでの恋愛・婚活市場ではまったく重要とされていなかったスキルでは(笑)。

そういう意味では私にはネット婚活が一番合っていたんだなぁと思いますね。ネット婚活だとメールのやり取りがすごく重要なんですよ。メールラリーを1カ月以上続けて、ようやく会うというのが普通の流れなので。

最初は文面なんていくらでも取り繕えるだろうって思っていましたけど、実際始めてみたら文章からすごく人柄が見えてくるんですね。最初からタメ口の人、唐突に自分の職業紹介をする人、1行きりで終わる人、皆さん全然違うんです。

ただ、それが面倒だと感じる人は、お見合いパーティーの方が効率いいですよね。長々とメールを続けてようやく会ってみたら、話し方や雰囲気が合わなくて「やっぱダメ」となるケースもあるそうなので。「まずは直接会ってみるほうが手っ取り早い」と考える人は、そちらのタイプの婚活のほうがいいと思います。

■オタクの性質は、もしかするとすごく結婚向きかも

――ほかにも、オタク限定の結婚相談サービスが増えましたね。

アドバイザーがつく結婚相談所タイプのところだと、人件費がかかっているぶん料金は高くなりますが、プロのサポートが受けられます。ネット婚活は自分で写真をアップして自分でメールやりとりして......と究極自分ひとりで全部やっていくものなので、自分に一番合った婚活場所を見つけ出すのも大事だと思います。

でも実はオタクって結婚に向いていると思うんですよ。私も含め、オタクって自分が好きなものを自分で見つけて、楽しめる人たちですよね。

何かつらいことがあったときも、「パートナーに何とかしてもらおう」とはあまり思わない。そうじゃなくて自分の好きなものを見ているうちにメンタルが回復していく(笑)。そういう意味では自立したパートナーシップを築きやすいんじゃないでしょうか。

(取材・文 阿部花恵

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