JAXAとCNESの署名式の様子。左から3番目がCNESのジャン=イヴ・ル・ガル総裁、4番目がJAXAの奥村直樹理事長
小惑星の次は、火星の衛星だった。探査機「はやぶさ」を打ち上げて、小惑星イトカワからのサンプルリターンを成功させた宇宙航空研究開発機構(JAXA)が、フランス国立宇宙センター(CNES)と共同で、火星の衛星からサンプルを持ち帰る計画を発表した。4月10日、JAXAとCNESの間で実施取り決めが締結された。JAXAが行い、探査機のセンサーなどをCNESが提供するという。
この火星衛星サンプルリターンミッション(略称:MMX)では、火星の周囲を回る小型衛星「フォボス」もしくは「ダイモス」に探査機を着陸させて、数グラムのサンプルを地球に持ち帰る予定だ。2024年9月に打ち上げ、2025年8月に火星周辺に到達。3年かけて衛星を観測しながら、衛星への着陸と浮上を繰り返す。最終的に地表のサンプルを携えて帰途につき、2029年9月に地球に戻ることを目指している。
■「生命の起源、宇宙の起源を調べる」
火星などの地球型惑星は、もともとはカラカラに乾いた状態で形成された。火星の衛星は、過去に火星に水を運んだ可能性が指摘されている。今回のプロジェクトでは「地球に生命が居住可能な環境がどうして生まれたのか」を探る目的があるという。
火星の衛星「フォボス」(左)とダイモス(右)
この日、JAXAとCNESが東京で締結式と共同記者会見を開いた。JAXAの奥村直樹理事長は「大変、冒険的な内容で私としても誇りに思っているし、嬉しく思っている。生命の起源、宇宙の起源を調べる上でCNESのセンサーは有力な武器になる。具体的なミッションに進むようにCNESとの協力関係を進めたい」と自信を見せた。
CNESのジャン=イヴ・ル・ガル総裁は「MMXは、この先10年間での最も重要なミッションになると思う。火星は宇宙におけるパイオニアで、各国はとてもやる気を見せている。JAXAとともに科学的データを分析してウィンウィンの関係にしていきたい」と期待をにじませた。
■「フォボスの方がボーナス」
観測する衛星がフォボスかダイモスになるかは未定だが、会見ではCNES側から「フォボスの観測」という表現が頻出していた。
JAXAの藤本正樹教授は「フォボスの方が火星本体に近い軌道を回っているため、火星の影響をより強く受けている可能性がある。どのように火星に水が運ばれたのかを観測する上では、フォボスの方がボーナスがある」と話した。
■スライドショー「美しい火星の地形」
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