イギリス政府は3月20日、テリーザ・メイ首相がEU離脱(ブレグジット)に関する交渉を正式に開始するため、29日に欧州理事会へ離脱通告をすると発表した。
メイ首相は29日に、ドナルド・トゥスクEU大統領に対してEU加盟国の離脱手続きを定めた「リスボン条約第50条」を発動させる文書を提出し、2年間にわたる離脱交渉が始まる。
メイ首相の報道官は20日朝、同じ29日にイギリス庶民院(下院)にメイ首相の声明を出し、離脱交渉の開始を下院に通知する。
イギリス政府によると、ティム・バロウ駐EUイギリス大使は20日午前10時半頃、トゥスクEU大統領の事務局に対しEU離脱の手続きを正式に発動させる政府の意向を伝えたという。
報道官は、交渉のタイミングを前もって知らせた理由について、「あらゆる意見の人々がブレグジットに対応できるようにするためだ」と述べた。
リスボン条約第50条が発動されれば、トゥスクEU大統領はメイ首相に対する一次的な回答を48時間以内に提出することになる。そしてイギリスを除くEU加盟27カ国に対し、EU離脱交渉の指針案をまとめることになる。
イギリス政府は20日、「我々としては離脱交渉をすぐに始めたいと考えているが、EU加盟27カ国にも自分たちの見解をまとめる機会が与えられるべきだ」と述べた。
トゥスクEU大統領は自身のTwitterで、48時間以内に「EU離脱の指針案」を準備できるだろうとコメントした。
イギリスがリスボン条約第50条を発動してから48時間以内に、#EU離脱の指針案をEU加盟27カ国に示すつもりだ。
デービッド・デービスEU離脱担当相は20日朝の声明で、「この国の新たな時代のために、我々は重要な交渉の出発点に立っている」と述べた。
「政府は目標をはっきりと理解しています。すべての国民、すべての地域、そしてすべてのヨーロッパ諸国のためになる交渉を目指します。また、イギリスとEUの仲間や同盟国と、新たに前向きな協力関係を築くことも目指します」
リスボン条約第50条が発動すれば、イギリスとEUは2年かけて離脱の条件を交渉することになる。
重要なポイントとして議題に上がっているのは、イギリスがEUに支払わなければならない未払いの分担金だ。これは2016年6月23日に実施された国民投票の前から決まっており、EUの予算案や年金に充てられる。
最終的な分担額は、150億ユーロ(約1兆8000億円)から600億ユーロ(約7兆2500億円)になると見込まれている。
EU離脱の交渉と並行して、イギリスは2年以内にEUとの包括的な自由貿易協定を結ぼうと考えている。
イギリス政府の発表に対し、自由民主党のティム・ファロン党首は、「分裂と苦しみを爆発させよう」としている」と、メイ首相を批判した。
ファロン氏は「メイ首相は、極端で、対立をもたらすEU離脱に向かっている。メイ首相は無計画に、何もわからずに手続きを急いでいる」と述べた。
保守党のロイストン・スミス議員はTwitterに、離脱交渉では最初に決められるべきは、EUとイギリス国民の行く末だとコメントした。
リスボン条約第50条は3月29日に発動される。離脱交渉では、まず最初にEU諸国に住むEU市民とイギリス人の在留資格について話し合うべきだ。
労働党「影の内閣」でEU離脱担当相を務めるキアー・スターマー氏は20日午後、リスボン条約第50条の発動日が発表されたことに対して「イギリス全体にとって非常に重要な瞬間だ」と述べた。
スターマー氏は、「メイ首相はEU離脱について国民の合意を形成したいと繰り返し発言しているが、意見をまとめられていないのが明らかになるばかりだ。今のイギリスは国内で意見が対立し、世界から孤立している」と語った。
「メイ首相がEU離脱に向けた計画についてはっきりとした情報を何も開示できておらず、EUとの交渉がまとまらない危機的状況にも対処できていないのは異常だ」
「労働党はメイ首相の責任を全面的に追及していく。また、雇用や経済、生活水準を最優先にした離脱交渉を求める」
ハフィントンポストUK版より翻訳・加筆しました。
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