アメリカのドナルド・トランプ大統領は3月17日、ドイツのアンゲラ・メルケル首相と会談したが、貿易や難民問題をめぐり意見の違いが鮮明になった。
トランプ氏は共同会見で、北大西洋条約機構(NATO)への強い支持を表明し、ドイツに公平な負担を求め、メルケル氏もこれに応じた。
しかし貿易問題に関しては「私は孤立主義をとらないが、より公平な貿易が必要だ。ドイツの交渉者はアメリカよりもうまくやっている」と主張した。メルケル氏は公平さには同意したが、「交渉者はドイツでなく、EUだ」と述べ、アメリカとEUとの間の自由貿易協定(FTA)の再開を要望。両国の立場の違いが浮き彫りになった。
トランプ氏とメルケル氏は、移民・難民問題でもお互いの意見に隔たりがあった。
トランプ氏は「移民は特権であり、権利ではない。国民の安全が常に優先される」と語った。
一方メルケル氏は、「移民問題に取り組まなくてはならないが、同時に難民の問題にも目を向けなくてはならない」と語った。
「難民問題に悩まされている国の支援が優先事項となる」とメルケル首相は付け加え、難民の受け入れは「正しい解決策であり、私たちはその問題についての意見交換をしている」と強調した。
しかしトランプ氏はメルケル氏の発言を完全に無視した。代わりに、アメリカの利益を増やすために貿易を改善しなくてはならないという、以前からトランプ氏が強調している話に戻した。
「アメリカには多くの工場や工場が戻ってきている」と、トランプ氏は語った。 「我々の政策は異なるが、アメリカにとって素晴らしい政策は、世界にとっても素晴らしい政策になる」
メルケル首相は、ヨーロッパの難民受け入れで主導的役割を担っており、ドイツはこれまでに100万人以上の難民を受け入れている。対照的に、トランプ氏はシリア難民の入国を禁止し、イスラム圏の国々からの入国を一時差し止める2つの大統領令に署名した。
両国の緊張は、トランプ氏が共和党大統領候補だった頃から生まれていた。トランプ氏がシリア人のドイツへの移民を「惨事」と呼び、難民の流入が犯罪増加に繋がったと主張した。ギュンター・グローザー欧州担当国務大臣は、トランプ大統領の発言は「恐怖、嘘、一部だけ真実」だと批判した。
ドイツのジグマール・ガブリエル副首相は、トランプ氏を「新しい独裁主義者で、国際的な排外主義者の先駆けだ」と批判した。
メルケル首相も、トランプ大統領による移民の大統領令への反対を表明している。
メルケル首相のスポークスマンは1月、「首相は、難民と特定の国の市民に対するアメリカ政府の入国禁止措置を遺憾に思っている」と述べた。 「首相は、テロリズムに対する戦いは必要なのは疑う余地がない。しかしそれは特定の出自の人々や、特定の宗教に対する疑念を正当化するものではない」
メルケル首相も、トランプ氏が大統領選で勝利した直後、「ドイツとアメリカは、出自、肌の色、宗教、性別、性的嗜好、政治的見解とは無関係に、民主主義、自由、法の尊重、人間の尊厳の価値観によって結ばれている。私は、こうした価値観に基づき、次期大統領に緊密な協力を申し出る」と語っている。
ドイツ国際安全保障問題担当上級研究員のスザンヌ・ドレーゲ氏はNBCに、メルケル氏とトランプ氏のスタンスは「完全に正反対だ」と指摘している。
ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。
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