学校法人「森友学園」が大阪府豊中市に建設している小学校「瑞穂の国記念小学院」の建設予定地に、籠池泰典理事長が3月9日午後、姿を見せた。
この小学校をめぐって学園側は4月開校を目指しているが、国有地だった土地の取得経緯や安倍首相の夫人・安倍昭恵氏が名誉校長に就いていたことが問題視されている。加えて、国や府などに金額の異なる3種類の工事請負契約書を提出していたことや、府の私学審議会に虚偽報告をしていた可能性も指摘され、波紋を呼んでいる。
この日籠池氏は、大阪府の現地調査に応じるため小学校の建設予定地を訪れた。籠池氏は報道陣の囲み取材に応じたが、「報道には捏造がある」「この学校を開校させてほしい」と述べる一方、報道陣の「金額の異なる工事請負契約書をなぜ提出していたのか」といった質問には答えず、一方的に持論を展開した。
これとほぼ同時刻にYouTubeには、籠池理事長が「認可をいただかないと大変なことになる。大阪府に賠償請求せないかんようになる」などと 述べていたり、特定の元保護者とみられる実名を出して批判したりする約30分の演説動画や、塚本幼稚園の園児とみられる子供たちが大勢で「五箇条のご誓文」や「教育勅語」などを暗唱する動画がアップロードされたが、9日中に削除された。
籠池氏の発言全文は以下のとおり。
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国民の皆様にお伝えします。今日、私は森友学園の理事長であります。私が20年来の教育の中でどのように小学校を作っていけばいいのかということを、いつも考えておりました。
そしてこの8年間の中で、総決算の後ろの学校を、今作り上げようとしているわけですが、様々な事柄があって、いま非常に悩んでおります。
一つは私学審議会の認可妥当というふうな結論が出たので、国有地を定期借地をさせてもらって、その後、買収しましたけど、それがまず前提。
そしていま、藤原建設によって建築が進んでいってるわけです。それはわかるでしょ。認可妥当がなければ、我々はこの土地も定借しなかったし建物も立てなかった。
(報道陣:それはわかりますが、3種類の金額が…)
はい次!ちょっとまって。
そして認可妥当ということをいただいたので、いま建築をやっているわけです。その後、国会の中でいろいろなことが疑念が出てきたということを言われる野党の議員さんがいらっしゃって。
予算委員会だから野党の議員さんが一生懸命言うのはわかるけども、他にいうことがないのか。他の重要な国論の話をすることがないのかなというふうに私は今思っております。
しかもあの頃から、あの財務省の方の国有地のことと、こちらの小学校の認可のこととは別々の話であるにもかかわらず、一緒くたになって皆さん方が私を追いかけてきておったんです。
私は2月8日、このことが提訴されたことによりまして、私自身が仕事ができなくなってしまいました。そして皆さん方の対応の中で、たくさんの方々が私をずーっと追いかけてこられた。それは皆さん方の表現の自由もわかるけど、報道の自由もわかるけど、基本的人権の方が僕は大切やないかと思ってます。
しかも、パパラッチのように(幼稚)園バスの後をタクシーに乗って追いかけてくるなんて、それも止まれば止まる。もう少しで事故が起こりそうになったことはたくさんあるわけです。こういうふうなことはするわけではない。
我が国は民主国家だし、そしてみんなと一緒に住んで行かなきゃ、楽しんでいかないかんように教えてる。僕は幼稚園で。そうすると皆さんがたのせいとはいわないけれど、このとんでもない事柄が、どんどんどんどん蔓延することによって風評被害、土の中に物が埋まってるとかいう風評被害じゃない。
皆さん方が我々の子供たちを追いかけてくる、そして保護者を追いかけてくる。そしてそれに怖がって、やはり退園していく人も当然いるんです。当たり前のことです。
そして小学校のこの前の説明会の時に、なんや朝日放送だったか朝日テレビだったかどこだったか、メガネのところにカメラを入れ込んで、しかも保護者と思わせるような態度で侵入してきた。
そして、テレビでまたそれを放送しているという無礼千万なことをしたんです。これは報道の自由ですか。いきすぎですよ朝日放送、朝日テレビ。朝日新聞はなぜこういう風なことをする。
しかも教育の現場である我々の、この学び舎の中に何が起ころうとしているのかということを、会見もしないのに「いついつ会見をします」と書いた朝日新聞、とんでもない話だと思いますよ(編集部注*1)。
あれからこのような騒動が起こった。もうすでにこれは4年ほど前から仕組まれてきたことやと僕は思う。僕たちの保護者の中に我々の教育に合わない人が入ってきて、何かことを起こそうとしたこともわかる。
我々の教育に合わないんだったら、入ってこないでしょう。入るわけがない。それなのにこと起こすために入ってきた人たちがいるわけです。そして退園した。退園させられたという話になって、なんや、なんだったか、今いうところの差別発言とかいうようなことを言われるようになった。それと連動するように、豊中の市会議員の人が提訴した。ここに一緒になっている。これは確実に仕組まれている。
(報道陣:誰が仕組んでいるんですか?)
皆さん方の中にも、我々がいま国家のために、そして国家社会のためにいい人材を創出しようとしている教育の中身を阻止しようとする人たちがたくさんいます。そういうようなことでは困るんじゃないですか。日本国を存続させるために、立派な人材を作っていくというのが教育であるんであれば、もう少し温かい目で見るべきじゃないですか。
(報道陣:理事長、でも報告書の中の虚偽報告疑惑が…)
そしてもう一つ言うと、教育勅語がどうして悪い?。12の徳目の夫婦仲良く、そして友達も仲良く、そして勉強も頑張んなさいよと。何かことあったときは自分の身は捨ててでも人のために頑張んなさい、そういうふうな教育勅語のどこが悪い。悪く全くない。そういう風な偏向したことを皆さん方が考えすぎるから、日本の社会は段々とおかしくなってくる。弱くなってくるんです。
みなさんお願いしますよ、本当に。私にこの学校を開設させて欲しい。ただ、本日は大阪府のお役人の方と胸襟を開いて話させていただいて、果たしてまず開校をさせていただけるのか、そうじゃないのかということまで真摯に承ろうと思っています。
(報道陣:どういうことになりそうですか)
それはわかりません。今からお話を聞きにいかせていただきます。私は皆さん方の報道を全部見ているわけではなくて、そして偏った報道というのは遺憾と思います。私の家族のこと私自身のこと、家内のこといろいろありますよ。それは一市民として、皆さん方が報道する限度を超えてますよ、あまりにも嘘も多いし捏造も多いし。そういうことは本来やめてやって欲しい。
(報道陣:3種類の金額について…)
それともう一つ言いますよ。どうぞやはり学校というのは、静かにして安心したところで教育をしてもらうことが一番であります。このように皆さん方が私を取り巻くことは、子供さん方を取り巻くようなことはしないでやっていただきたいというふうに思っております。
どうぞ、この学校を開設させていただきたい!それだけであります。
(報道陣:3種類の金額について答えてないですよ)
また戻ってきますから。
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■籠池氏、書類提出めぐり大阪府側と齟齬?「原本を持って来いとは言われていない」
大阪府の担当者と面会した後、籠池氏は再び報道陣の前に姿を見せた。主なやりとりは以下のとおり。
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――どういう書類を持ってきてくれって言われたのか?
領収書とかね、それとか、えーっとカリキュラムとか、人員の配置とか、そうこと言われて持ってきたんですが、(建設中の校舎を指差しながら)まだ見てない。見てない。どうなってんですかという前に、もう私が「そんなん、原本なんて聞いてないですよ」と言った途端、帰っていかれた(編集部注*2)…。なんなんですかね、あれは。
――話し合いは?
話し合いどころの騒ぎじゃないじゃないですか。原本とは言われてないから原本持ってきてないんですよ。原本というふうにかかれていたら原本も持ってきますよ。当たり前じゃないですか。
――今後どのような予定に?
わかりません。だって視察、見られてないんだもん。
理事長が用意した原本でない書類も持って行かなかったんですか。持って行ってない。
――府の反応は?
無表情でした。バタバタバターと帰って行かれた。なんなんですかね。
――結局不認可になるのでは。
そうは思っていない。だって中身みてらっしゃらない。認可妥当の答申を私学審議会でいただいたでしょ。いただいたから国有地審議会にかかって借地で借りたんです。そして、藤原建設の方で工事を始めたわけですよ。その最中に生活ゴミが出てきたということでしょ。
ということは、認可妥当を私学審議会がしていて我々は工事しているんです。それが担保。でないと工事しないんです。
――でも、認可妥当を出すための書類にいろいろな誤りがあった疑惑が。
それはないです。ないない、全くないです。
――推薦枠のところから一つ一つ話しませんか。
推薦枠についてはね、我々のコンサルタントとのほうで、ちょっと書きミスをしたということしか言いようがないです。まだ合意もされてないからね。推薦枠にいこうとしていたということですから。まだ現在進行形。
だって6年生から、中学校1年生でしょ。まだ6年後ですから。そんな先の長い話ですから、その中でやっていくことなんです。
――ミスがあったことに関してはどう思うか。
ミスがあったことについては本当に申し訳なく思っています。先方とは理事長が直接やりとりをしるのか。
推薦枠については、ある方に相談をさせていただいたということだけの話であって…。現在進行形ということ、ing(アイエヌジー)ですね。
――先方は聞いてないと言っていますが。
それは担当者があるんだと思うんですわ。学校の担当と、なんや、その学校に連なる方っていろいろいらっしゃるから。そういう関係ですから、それ以上はちょっとわからない。
――正式決定と書くのはおかしい。
それは本当に申し訳ない。そういうことではない。
――許認可に影響があったのでは。
そういうところは私も一つ一つきちっと説明せにゃいかんかったと思うんですけれど、これは出したのは私学審議会ではなくて、大阪府の私学課に出したものでね。あとは、これはどうなんですかとミーティングをせないかん部分なんですが、我々とミーテイングする前にそれが流れてしまった。
流れてしまったらそこでストップになってしまうでしょ。本当はミーティングをすることによって、それがいいのかどうかということがわかってくるわけやから。
――3種類の建設費について。建設費は結局いくら?
7億5000万。
――どうして金額が違うのか。
それについては、もう一回ここで府庁の方と中身を確認してもらわないと…
――今日これで終わりですか。
終わりなんですよ。もう帰ちゃったでしょ。
――理事長、契約書の話だけでもいましましょうよ。
(質問に答えず、その場を去る)
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編集部注*1:籠池氏は2月20日にTBSラジオ「荻上チキ・Session-22」に出演した際にも「朝日新聞の取材を一度断り、(2月)13日に取材に応じると答えたら、記者会見を開くかのように書かれた」と主張。だが、朝日新聞(2月11日付朝刊)は、「森友学園の籠池泰典理事長は(2月)10日の取材に『13日に改めて取材に応じる』としている」と伝えている。
編集部注*2:産経WESTによると、大阪府は籠池理事長から直接事情聴取しようとしたが「籠池氏の妻が職員の顔を写真で撮影し続けるなどしたため、ほとんど事実確認をできないまま」30分ほどで打ち切ったと説明している。松井一郎知事は「全く冷静な話し合いができなかった。(調査は)即打ち切り」と話した。
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