犬肉食は虐待か、伝統文化か 平昌オリンピックで進む韓国の「犬肉離れ」

日本の捕鯨のようなテーマが、韓国では国際スポーツ大会のたびに議論になってきた。

犬の肉を食べるのは、動物虐待か、伝統の食文化か。

日本の捕鯨のようなテーマが、韓国では国際イベントのたびに議論になってきた。2018年平昌冬季オリンピックを前に、犬肉食は大きく衰退しているように見える。

「牡丹市場」で売られていた犬。2010年

ハフィントンポスト韓国版によると、韓国最大の犬肉市場として知られる、京畿道城南(ソンナム)市の牡丹(モラン)市場で2月27日、犬を保管し、屠畜・食肉処理する施設の撤去が始まった。

2016年12月13日に、城南市と、市場の犬肉業者でつくる「牡丹家畜市場商人会」に所属する22の業者が協定を結んだ。業者は販売目的で犬を檻に閉じ込めたり、屠殺したりすることを中止し、檻や屠畜施設すべてを自主的に撤去する。市は業者の業種転換のため、低利融資や就業あっせんなどで支援する。

韓国では「補身湯(ポシンタン)」「栄養湯(ヨンヤンタン)」と呼ばれ、犬の肉を香辛料や野菜と煮込んだスパイシーな鍋が、かつては夏バテ防止のスタミナ食として人気があった。中国やベトナムなどでも犬肉を食べる習慣がある。

しかし、1988年のソウルオリンピック開催を前に、韓国の犬肉食は海外から「野蛮だ」と批判されるようになり、ソウル市が取り締まりを始めた。日本と韓国が2002年サッカー・ワールドカップの招致合戦を繰り広げていた1996年5月には、フランスの女優ブリジッド・バルドーさんが、韓国の招致委員会に「犬を友と考える西洋人にとって、犬肉市場の存在は耐えられない」と、犬肉食の非合法化を迫った。

2018年の平昌冬季オリンピックでは、韓国の文化体育観光相が2016年に、マスコットキャラクターを名産の珍島犬に変更しようとしたが、国際オリンピック委員会(IOC)が「韓国の犬肉食文化への反発が起きるため適切ではない」と懸念し、実現しなかった。会場周辺では2017年1月、補身湯や栄養湯の看板を掛け替えるよう自治体が財政支援することを決めた(が、犬肉鍋そのものを提供するなと言っているわけではない)。ソウルなどでは、今でもひっそりと補身湯を出す店がある。

2010年7月、牡丹市場前で犬の虐待反対を訴える動物愛護団体のメンバーら

韓国内外の動物愛護団体は、不衛生な飼育環境や、殴り殺すなどの屠畜方法を「動物虐待」と批判しており、国際イベントを犬肉食追放の好機ととらえてキャンペーンを展開している

こうした中で、年間8万匹の犬が取引される韓国最大の犬肉市場「牡丹市場」がクローズアップされた。2016年10月には「動物虐待禁止」「犬の食用反対」を訴える動物愛護団体と、「業務妨害をするな」という犬肉販売業者らが牡丹市場前でデモを繰り広げた

ただ、国際的な批判の高まりで、犬肉食もすっかり「日陰の文化」となった。李在明(イ・ジェミョン)城南市長は業者と協定を結んだ2016年12月、牡丹市場の犬肉販売業者を「嫌悪施設」と呼び、「騒音、悪臭で、城南市のイメージを失墜させてきた50年来の宿題を解決した」と評価した。

業者の数も減っている。朝鮮日報によると、牡丹市場の犬肉業者は2001年には54業者が営業していたが、2017年2月の自主廃業開始直前は22業者と、半分に減っていた。韓国紙「韓国経済」の論説委員はコラムで「20~30代は表だって愛好家だと明かす人はいない。特に女性のいる場で補身湯の『ポ』の字も言えない」と指摘し、ペットとして犬を飼うことが普及したことや、スタミナ食の多様化、非衛生的な犬肉流通への不信感を理由に挙げている。

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