日本将棋連盟は2月27日、青野照市専務理事(64)と中川大輔常務理事(48)、片上大輔常務理事(35)の3人を解任したと発表した。
対局中に将棋ソフトを不正使用していたと指摘され、のちに「不正の証拠はない」と認められた三浦弘行(43)九段を出場停止処分にした一連の対応をめぐり、プロ棋士28人が、2月6日に就任した佐藤康光会長と井上慶太・新常務理事以外の常務理事・専務理事5人の解任を要求していた。
この日、棋士会の会員である棋士と女流棋士が東京と大阪の将棋会館に集まり、「臨時総会」が開かれた。臨時総会では、解任が要求された5人の理事の信任をそれぞれ問う形で投票が実施された。その結果、青野専務理事、中川大輔常務理事、片上大輔常務理事の解任が決まった。東和男常務理事(61)、佐藤秀司常務理事(49)の解任動議は、それぞれ否決された。
総会出席者は、委任状を出した64人を含めて216人だった。
一連の問題を巡っては、2月6日、会長だった谷川浩司九段(54)と常務理事だった島朗九段(54)が辞任している。
■佐藤会長「会員(棋士)の不満が大きかったのかなと思う」
記者会見する佐藤康光会長
総会終了後、佐藤康光会長(47)らが東京・渋谷区の将棋会館で記者会見を開いた。会見は予定より10分遅れ、17時10分から始まった。
会見の冒頭、佐藤会長は「本日臨時総会が開催され、3名の理事の解任が決定しました。私自身、理事になって3週間、皆様にいろいろと教えていただいていた最中でしたが、会員の皆様の総意ですので、3人の理事の解任というこの事態を率直に受け止めております」と述べた。
理事3人が本日付で解任されたことについて、佐藤会長は「会員(棋士)の不満が大きかったのかなと思う」「基本的に理事というのは、会員が決めるものなので…。不満の部分が大きくてこうなった」と所感を述べた。
その上で、空席となった理事職については「これから急いで検討する。こういうことになる可能性は考えていたが、年度末ということもあり、どうしていくかまで決めていなかった部分がある」として、今後対応する方針を述べた。
会見開始10分ほどのところで、将棋連盟職員が「次の質問で最後…」と、会見を区切ろうとした場面があった。この時、まだ複数の記者が手を挙げていた。佐藤会長は連盟職員に「大丈夫です。(まだ)いいですよ」と述べ、会見を続行。時おり熟考しながらも、全ての質問に答えた。
報道陣と佐藤会長の主な質疑応答は以下のとおり。
――各理事の解任動議票の票の内訳は公表するか。
票の内訳の開示は行わない。
――谷川前会長の実兄が提出した、三浦九段の名誉回復渡辺竜王などの処分を求める要望書は読んだか。
大変分厚い要望書だった。17日に来ていただき、職員の方に受け取ってもらい、翌々日に(自身が)受け取った。現在、読んでいる。個人個人、いろいろな意見があった。今回のことを集約したレポートになっていて、たくさんの意見がまとめられていた。
連盟への批判の意見が多かったが、応援の意見もあった。いろいろな意見が集められており、将棋界の信頼回復への一つの意見。様々な意見をいただいた。直接署名していただいた方、一人一人の気持ちが書かれているので、まとめていただいたことはありがたい。
――渡辺明竜王について、渡辺竜王が釈明するような場は設けるか。
三浦さんとの補償の問題もあるので、そちらの収束を前に向けるよう進める。常務会としても渡辺さんと話をする機会はある。現在のところ、(公の場を設ける)予定はない。早く一歩でも前に進めるようにする。
――観戦記者の小暮克洋氏から依頼を受けて、大山滋郎弁護士が26日に公開した「三浦九段不正疑惑について、渡辺明竜王を弁護する」という文書について把握しているか。
完全には把握していない。
――今日の会見、ネット配信がなかったのはなぜか。
連盟職員:通常、記者会見はインターネットで配信はない。今回は地上波のテレビ局からも中継の要望も入っていなかったので、ネット配信はなかった。
――発端となった冤罪事件について、改めて検証する予定は。休場届について三浦九段側と連盟側のズレは解決したのか。
改めて調査する形は考えていない。将棋連盟としてどうあるべきだったか、検証する必要はあるかもしれない。
――休場届について、第三者委員会と三浦九段の立場が異なる。解明することは大事だと思うが。
意見が食い違っている部分がいくつかあるというご指摘を、今いただいた。その点の話は、改めて検証というか、話をきくことが出てくるかもしれない。ただ、基本的な連盟の方針は変わらない。
――第三者調査委員会の報告書は、現在は概要版しか公開されていない。報告書の全文は公開するのか。
きょうから棋士は閲覧できる。一般向けには難しいと思う。
【UPDATE】記事内容を更新しました。(2017/02/27 19:53)