プレミアムフライデー、私たちもやってみた。「このプレミアム感は何物にも代えがたい」「逆に疲れた」意見も十人十色

「妙に忙しいのだが気持ちは休日モード」「明るいうちにオフィスを出る罪悪感は楽しい」などなど...。
Ryoko Tajima / The Huffington Post

毎月最終週の金曜日は午後3時に退勤するよう呼びかけ、個人消費を促す取り組み「プレミアムフライデー」が2月24日から始まりました。当日は、ハフィントンポストでも実験的にプレミアムフライデーを実施し、午後3時退勤に挑戦しました。

いつもより早く仕事を終えるため、当日朝から、人によってはさらに遡って前日木曜日から、多くのメンバーが前倒しで仕事量を調整。プレミアムフライデー実施にあたって懸念点として挙げられていた「業務のしわ寄せ」が、やはり発生する結果となりました。

午後3時を皮切りにプレミアムフライデーが始まってからは、「#みんな3時に帰れる?」というハッシュタグをつけて、各メンバーがそれぞれの動向をツイートをしましたが、「無理だ!」「仕事終わらない」といった意見が続出しました。(そもそも、ツイートすることが仕事になっていたという本末転倒な意見も。企画者である私、深く反省しています)

後日、「午後3時退社」を実現するにあたって直面した問題点などについて、メンバーから意見を聞きました。プレミアムフライデー中のメンバーの過ごし方なども含めて、その一部を紹介します。果たして、「プレミアム」な時間を過ごすことはできたのでしょうか。

コメントをまとめた動画はこちら。

Q. 午後3時に退勤できましたか?

  • できなかった!直前に急ぎのメール対応が発生し、少し時間がかかってしまった。金曜日なので、引き延ばすと返信がさらに先の月曜日になってしまうことが懸念点だった。(井土/ブログエディター/20代)
  • 午後3時30分に退社。ぴったりとはいかなかったが、まあまあ合格レベル。(和田/副編集長/40代)
  • 15時ちょっと前に急な用件が発生しましたが、無理やり退勤しました。(永山/CTO/30代)
  • 取材が入っており、都外へ出張に行ったためできなかった。(泉谷/ニュースエディター/30代)

結果として、「午後3時退社」ができたのはその日出社していたメンバーのうち、約3割ほどでした。私もプレミアムフライデーの一環で社内イベントを実施した会社に取材へ行ったため、午後3時に仕事を終えるということは不可能でした。プレミアムフライデーが存在するが故に、プレミアムフライデーを実施できないという皮肉な結果に...。

2月24日当日撮影したオフィスの様子。

Q. 「午後3時退社」のあと、何をしましたか?

  • 耳鼻科、眼科の診察に行った。病院は土日休みが多いので、この機会を利用した。休暇を取るという趣旨とは異なるが、平日の早上がりは、普段できないことができるので助かる。(濵田/ニュースエディター/20代)
  • 普段なかなか行けないお店に行ってみた。(和田/副編集長/40代)
  • 映画館に行ったが、混んでいて観たい映画を観られなかった。(吉川/ニュースエディター/20代)
  • 出張のため仙台にいたが、早めに着いたので立ち食い寿司とビールを一杯。早めの時間からなじみのない土地にいくのは楽しい。(竹下/編集長/30代)
  • 勉強会→カフェで時間をつぶして(メールチェックなど仕事もしてしまった)→飲み会(安田/ライフスタイルエディター/30代)

多く挙がったのは、「平日だからこそメリットを感じられることをやった」という声。2月24日に公開された映画『ラ・ラ・ランド』(『ムーンライト』ではない)を観に行ったというメンバーもいました。プレミアムフライデーによって、平日の早い時間からお酒を飲みに行ったり、週末だと混んでいる場所に行けたりといった利点は確かにあると感じられます。

Q. プレミアムフライデーを実施する上で大変だったことや問題になったことは?

  • 15時に上がらなくてはいけないということがプレッシャーになって精神的にキツかった。プレミアムフライデーをやることで私は逆に疲れた。(生田/ニュースエディター/20代)
  • 土曜日の半ドン(午後休みの日)と一緒で、妙に忙しいのだが気持ちは休日モードになってしまい、仕事がはかどらなかった。(久世/ニュース・翻訳エディター/40代)
  • 焦りすぎて仕事が雑になってしまったので、質・量ともにダメージを受けてしまった。(田嶋/スチューデントエディター/20代)
  • 午後3時までに、記事を書き終えることができなかった。やらなければいけない仕事をしているのに、悪いことをしているような気持ちにさせられた。「こっちはまじめに仕事しているのに、なんでこんな気分ならなきゃいけないのか」「我々は、お国が旗振る制度の奴隷か」と、やり場のない怒りが芽生えた。(吉川/ニュースエディター/20代)
  • クライアントや代理店など、周りが完全に動いているため、ものすごく後ろめたい気持ちで作業を止めなければいけなかった。その分週末に対応したり月曜日の作業が山積みなのが悲しくなった。(水嶋/広告エディター/30代)

予想はできていたことですが、「早上がりのために他の時間に仕事を詰める」という人が過半数いました。プレミアムフライデーという制度に縛られ、振り回され、強い憤りを覚えたメンバーも。

Q. プレミアムフライデーをやってよかったと感じた点があれば教えてください。

  • 16時に保育園の子供のお迎えに行けました。日が高いうちに元気で笑顔の子供をお迎えできた瞬間はとても感動しました。このプレミアム感は何物にも代えがたい。(久世/ニュース・翻訳エディター/40代)
  • 平日の昼間に遊ぶ、という非日常が楽しめた。(水嶋/広告エディター/30代)
  • 明るいうちにオフィスを出る罪悪感は楽しい。長時間労働改善のため、日頃の業務内容や働き方を見直すきっかけにはなったと思う。(吉野/ニュースエディター/40代)
    • いつもと違う街の雰囲気を味わえた。(磯村/広告エディター/30代)
  • 早く帰ることはいいことだと思うし、目指すべきことだと思う。できるできないはどうあれ、そちらの方向に皆の目が少しでも向いたならよかったんじゃないでしょうか。(坪井/ブログエディター/30代)

ハフィントンポストには、小さな子供がいるメンバーもいます。午後3時に仕事を終えられたおかげで、お迎えに行けたという素敵な意見も挙がりました。働き方を見直すきっかけになるという観点ではメリットがあったと、ポジティブに捉えた人もいました。

Q. その他、プレミアムフライデーについて思ったことがあれば教えてください。

  • 実施していない会社もあるので、友達と予定を合わせるのは難しい。(濵田/ニュースエディター/20代)
  • 世間にはまだまだ浸透していない。いつも行けないお店に行ってみたら、そのうち2軒が休みで「世の中、プレミアムフライデーをスルーしまくりだ」と感じた。なかなか会えない主婦の友達のところにいこうかと思ったが、午後3〜5時という時間は夕飯の支度などで忙しいことを思い出し、声がかけられなかった。(和田/副編集長/40代)
  • この取り組みで危惧されるのは、「プレミアムフライデーを実施できるのは恵まれた企業だけ」という分断が生まれること。国全体として労働時間(もちろん、労働量も)削減の方を向くべきときに、「帰れないのが大多数で、早く帰そうとする勢力は敵」という空気が生まれたら本末転倒だし、プレミアムフライデーがそれを煽ってしまうのなら罪深いと思う。(坪井/ブログエディター/30代)
    • そもそも、プレミアムフライデーを成り立たせるためには、実質ブラック企業公認している36協定の抜け穴など他に改善しないといけないことが無数にあります。あまりにも矛盾が多すぎると感じます。(古家/スチューデントエディター/20代)
  • 有給の消化が先じゃないか、と思います。半日休むより、1日休めたほうが選択肢が広がります。企業・団体に有給完全消化を徹底してもらうことが大切。(久世/ニュース・翻訳エディター/40代)
  • クールビズが広まったときは、小池百合子環境相(当時、現東京都知事)が自ら音頭をとって国民にメッセージを伝えたことがうまく社会に浸透する一因だった。今回は国や経済界の旗振り役の「顔」が見えず、どこの誰が覚悟をもって実行しているのか分からなかった。社員に休んでもらうリスクやコストを負担する分、リーダーは強いメッセージを出すべきだった。(竹下/編集長/30代)

2月21日に開催されたキックオフイベントには、経団連副会長の石塚邦雄氏や、プレミアムフライデーの賛同企業であるアサヒビール、小田急電鉄などの執行役員が登壇した。

意見は十人十色でも、「帰れない!」という人が圧倒的。今後どうなる、プレミアムフライデー?

ハフィントンポストで実験的にプレミアムフライデーをやってみた結果、全員が「やってよかった」と自賛できるような状態にはなりませんでした。

政府や経団連は、この取り組みは「消費喚起」だけではなく「働き方改革」という一石二鳥の効果を期待できるものだと展望を示しています。しかし、そもそも以下のアンケート結果のように「午後3時に帰れない」という人が圧倒的に多いのが現状です。

実現にあたって多くの問題点が浮き彫りになる中、今後どのようにこの取り組みは推進されていくのでしょうか。次回のプレミアムフライデーは、多くの日本企業にとって1年の中で最も忙しい日ともいえる年度最終日、3月31日に実施されます……。

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