アメリカのドナルド・トランプ大統領は日米首脳会談を前にした2月9日、ホワイトハウスで開かれた会合で「日本と中国では至る所に高速鉄道(新幹線)があるが、アメリカには1つもない」と発言し、アメリカ国内の交通インフラが「時代遅れだ」という認識を示した。
この発言は航空会社のトップらとの会合の中で述べたもの。トランプ氏は日本などの新幹線を評価した上で、アメリカの空港や管制システムは「時代遅れだ」とし、航空インフラの整備のため、企業向けの大規模な減税策を近く発表する考えを明らかにした。
トランプ氏は「なるべく安い料金で、時間の遅れも極めて少なく、便利な素晴らしいサービスが受けられる公共交通を望む。航空会社がそれを実現できるようにしたい」と話した。
■日本が狙う「鉄道ビジネス」の追い風となるか
トランプ氏はかねてより、雇用の創出を最優先課題と位置づけ、空港や高速鉄道などインフラへの投資を表明している。
時事ドットコムによると、安倍晋三首相は10日の日米首脳会談でトランプ氏に対し、高速鉄道計画への投資などで70万人規模の雇用を創出する政策を提示するものとみられている。
高速鉄道をめぐっては、テキサス州で日本の新幹線の技術を活用した高速鉄道計画が進められている。ダラス〜ヒューストン間(約385キロ)を結ぶ計画で、総事業費は1兆6000億円あまり。2022年の開業を目指している。JR東海が現地法人を設立し、N700系をベースとした技術支援を実施している。
カリフォルニア州でも、サンフランシスコ〜アナハイム間(約837キロ)を結ぶ高速鉄道が計画され、2013年から工事が始まった。2029年に開業予定だが、総事業費は最終的に「7兆1000億円まで膨らむ」とみられている。今後、車両や信号システムなどの国際入札が実施される予定だ。
こうした背景から、時事ドットコムは「今回のトランプ氏の発言は、新幹線に追い風となる可能性がある」と分析し、日本の鉄道ビジネスにとって有利になると報じている。
一方で、トランプ氏は「高速鉄道と航空会社の競合は望まない」とも述べており、新幹線の"追い風"となるかは不透明な情勢だ。