潘基文氏「LGBTを支持しない」宗教票目当てに豹変か 国連時代は積極的だったのに...

「LGBTを支持するということではなく、彼らの人権、人格が差別されてはいけない」???
United Nations Secretary-General Ban Ki-moon speaks about the worldwide fight for LGBT equality after receiving the Harvey Milk award in San Francisco, California June 26, 2015. REUTERS/Elijah Nouvelage
United Nations Secretary-General Ban Ki-moon speaks about the worldwide fight for LGBT equality after receiving the Harvey Milk award in San Francisco, California June 26, 2015. REUTERS/Elijah Nouvelage
Elijah Nouvelage / Reuters

2017年の韓国大統領選への立候補を目指している潘基文(パン・ギムン)前国連事務総長が、キリスト教指導者たちと面会して性的少数者(LGBT)の人権について意見を述べたが、わかりにくい話だった。

ノーカットニュースによると、潘氏は1月24日、「韓国キリスト教協議会」「韓国キリスト教総連合会」「韓国教会連合」の、プロテスタントで政治的にはそれぞれ保守系、リベラル系を代表する3つのキリスト教団体を訪問し、宗教界の支持を訴えた。

ニューシズはそのうち、「韓国キリスト教協議会」総務のキム・ヨンジュ牧師との会談で、潘氏がLGBTについて以下のように明らかにしたと報じた。

「国連憲章や万国人権宣言を見れば、宗教、人種、性別、年齢、職業、貴賎を問わず、すべての人は平等の権利を有する」「少数性を持つ人が世の中にはかなりおり、人間として差別しろなどと言ってはだめだ」「私が強調したいのは、差別してはならない。政治、経済、社会的な地位で差別してはならないと主張したのであり、そのようなレベルで会合にも行った」「それはLGBTをそうしろというのではない。人間として当然に享受すべき権利を享受すべきだということだ」(1月24日)

しかし、他の報道を見ると、少し語感と意味が違う。聯合ニュースは、潘氏が「そのような会合にも行き、そうしろと勧めたのではなく、人間として当然享受すべき権利は損なわれてはならないと言ったものだ」と述べたと伝えた。プレシアンはこれに対して以下のように批判した。

「そうしろと勧めたのではない」という言葉を、先に例に挙げた「人種」「年齢」「職業」などに当てはめてみると、「黒人であることを勧めないが、黒人を差別してはならない」「年老いることを勧めないが、高齢者を差別してはならない」「清掃の仕事を勧めないが、清掃労働者を差別してはならない」と、つじつまが合わなくなる。(1月24日)

特に潘氏側が出したプレスリリースには、より明確に書かれている。プレシアンによると、潘氏側は24日午後、潘氏の正確な発言内容は「私がLGBTを支持するということではなく、彼らの人権、人格が差別されてはいけないという意味であり、差別を受けないよう、様々な政策について支持したものである。私が積極的に『あなたたちもそうしなさい』という行為を推奨するものではない」と明らかにした。

プレスリリースに「LGBTを支持するということではなく」と直接的な表現が入ったのは、自分の発言とは別に、公式な立場を整理しようとする意図と思われる。

■国連事務総長時代は権利擁護に積極的

このような発言は、潘氏が韓国に帰国前の言葉とは明確に異なり、そもそも一体何の話なのか分からない。国連事務総長時代、潘氏はほぼ任期全般を通して、LGBTの人権擁護に尽くしてきたことで知られる。

潘氏は2014年、同性婚をした国連職員全員を結婚と同じ待遇にすると明らかにし、2010年から少なくとも9回以上(国連資料を参照)LGBTの人権を支持する公開演説をしたことがあり、LGBTの人権を巡ってロシアと正面から対抗した唯一の事務総長であり、アメリカの同性愛者団体「ハーヴェイ・ミルク財団」からLGBTの権利のため尽力した功績で、ハーヴェイ・ミルクのメダルを授与された

代表的な演説の一つが、2012年3月7日の国連人権理事会での演説だ。ハフィントンポストUS版は当時「歴史的な演説」と評価した。

レズビアン、ゲイ、両性愛者、トランスジェンダーについてお話しします。あなたたちは一人ではありません。暴力と差別を終わらせるための闘いは、私たちと共にする闘いです。あなたたちへの攻撃はすべて、国連や私が守り支持してきた普遍的な価値への攻撃です。今日、私はあなたたちを支持します。そしてすべての国と人々に、ともに立ち上がることを呼びかけます。

■保守的な宗教票を意識か

しかし、帰国1カ月前の2016年12月12日、潘氏の45年来の知人、イム・ドッキュ元国会議員はTV朝鮮に出演し、潘氏が電話で「自分は同性愛支持者ではない」と自ら釈明したことを明らかにした。イム氏は「国連の立場では万民が平等だが、そういった概念で同性愛を支持して称賛することは全くない、そのようなことを言われた」と発言した。

潘氏の今回の発言は、1000万人ともいわれるプロテスタント信者票の行方を左右する宗教界の重鎮の前で、LGBTの人権を望み通り切り捨てたと解釈できる。

ちなみに宗教界の代表は潘氏の態度に非常に満足したようだ。プレシアンによると、潘氏の話を聞いたキム・ヨンジュ牧師は「差別されてはならないという面に完全に同感し、それは信仰の信念とは関係なく、人間愛についての見方を変えなければならない」と答えたという。

一方、大統領選への立候補を表明している野党第一党「共に民主党」の安熙正(アン・ヒジョン)忠清南道知事はインターネット放送で、潘氏の態度やキリスト教界を批判した。

「宗教的な教義であれ理念でもあれ、すべて常識的に…私たちが現実的にそうした人々に対して…後ろ指を指す権利は誰にもありません。宗教や理念や国家やそのどんな論理でも、一人の人間が持つそれぞれのアイデンティティと、その個性を切り捨てたりする権利はありません」

ハフィントンポスト韓国版に掲載された記事を翻訳・加筆しました。

関連記事

注目記事