内部告発サイト「ウィキリークス」は1月22日、アメリカのドナルド・トランプ大統領の納税報告書を入手した際には、ネット上に公開すると発表した。
確定申告のために収入や納税額を記した納税報告書は、大統領選で候補者が慣例的に公開することになっている。トランプ大統領は一貫して「監査中だから公開しない、監査が終われば喜んで公開する」と述べて公開を拒否し続けていた。
ウィキリークスは大統領選期間中、民主党候補だったヒラリー・クリントン氏や民主党全国委員会(DNC)だけにダメージをを与える情報を漏えいさせてきた。今回ウィキリークスがトランプ大統領の納税申告書の提供を要請するツイートをするで、最終的に両陣営に対するバランスを最終的に保とうとする狙いもあるとみられる。
納税申告書にアクセスできるハッカーや内部告発者に向けられているように見える今回の要請は、かえってウィキリークスへの非難を招くことになった。というのは、ウィキリークスは大統領選挙中、トランプ氏について沈黙を守っていたからだ。
トランプ大統領は納税申告書を開示することを選挙公約にしていたが、「開示はしない」とケリーアン・コンウェイ大統領顧問が1月22日のテレビ番組で発表した(コンウェイ氏はこの発表を撤回している)。
リチャード・ニクソン大統領以来、通常は自ら納税申告書を公開している(ジェラルド・フォード大統領は納税申告の概要書を公開)。経営者として世界中に企業を保有しているトランプ氏の納税情報は、大統領職と利益相反にならないことを証明するために必要不可欠だ。
ウィキリークスは22日、納税報告書の提供を呼びかけるツイートをした。さらに、トランプ大統領の納税申告書公開拒否は、ゴールドマン・サックスの幹部に対して行った有料の講演に言及して、その有力な金融会社との会話記録を公開しないクリントン氏よりもはるかに悪質だ、と指摘した。
トランプ大統領のケリーアン・コンウェイ顧問は、トランプ大統領が納税申告書を公開するつもりはない、と本日発表した。私たちが公開できるように、これらをここに送ってもらいたい: https://wikileaks.org/#submit
自らの納税申告書を公開の公約を破棄したトランプ氏は、ゴールドマン・サックスとの会話記録を隠しているクリントン氏よりもはるかに悪質だ。
ワシントンポストとABCによる1月上旬の世論調査では、共和党支持者の53%を含むアメリカ人全体の74%が納税申告書の開示を求めている。しかし、ウィキリークスが突然情報提供を呼びかけたことに対し、トランプ氏をひいきしていた過去の経緯から賛否両論がある。トランプ氏当選を後押しするために、ロシアのウラジミール・プーチン大統領の指令を受けたハッカーが民主党に不利になる情報をリークしたと、アメリカの諜報機関は結論付けている。
ニューヨークタイムズの編集者パトリック・ラフォージュ氏は「素晴らしいアイデアだ」として、ウィキリークスの要請をリツイートした。同紙は「自社のジャーナリストとの連絡と情報共有の方法を内密に提供する」と述べた。
別のジャーナリストはまた、「ウィキリークス以外の他のニュースサイトも、情報提供があった場合は真摯に対応すべきだ」と提案した。
プロパブリカ、マザー・ジョーンズ。情報提供や協力要請に対して真摯に対応する報道機関はたくさんある。
一方、ウィキリークスに批判的なユーザーは、「こんなクソみたいなサイトををつくって、今じゃその中でのうのうとしている」と反応した。また別のユーザーは、ウィキリークスの今回の対応に半信半疑のツイートをしている。
待ってくれ、何だ? ウィキリークスが公平になっている? 夢じゃないと言ってくれ。
ウィキリークスがプーチン大統領にシェアしないって、信用できるか?
ハッキングやリークを促しているように見えるウィキリークスのツイートは、トランプ氏が選挙期間中、ロシアにクリントン氏へのハッキングを呼びかけたのに似ている。トランプ氏は2016年7月27日の会見で、クリントン氏が国務長官を務めている間に私用サーバを使ったメールを送受信していた問題を追及するため、「ロシアよ、もしもあなた方が聞いているなら、失われた3万通のメールを見つけるように願う」と呼びかけていた。外国に対し機密情報を含むメールをハッキングすることを呼びかけたとして、この発言は強い批判を呼んだ。後にトランプ氏は、「皮肉だった」と釈明した。
ウィキリークスは2016年、民主党全国委員会(DNC)やクリントン氏の選対本部長だったジョン・ポデスタ氏のメールから、ハッキングされた数千件の文書を暴露した。ウィキリークスの創設者ジュリアン・アサンジ氏は、この文書がプーチン大統領の指示を受けたロシアのハッカーから提供されたことを否定している。トランプ氏はアメリカの情報機関首脳が断定したロシアの関与をめぐり、アサンジ氏の主張を支持している。
トランプ氏は、ウィキリークスに軍の機密情報を提供したチェルシー・マニング元上等兵について「恥ずべきことだ」と批判し、「軍事情報の守秘義務違反は、死刑やそれ相当に値する」と述べている。
トランプ大統領は選挙中、アメリカ合衆国内国歳入庁(IRS)の監査が終了した後、自分の納税申告書を公開すると約束した。しかしIRSは、監査中でも納税報告書を公開することは禁じていない。
大統領顧問のコンウェイ氏は22日、ABCのニュース番組「ジス・ウィーク」でインタビューに応じ、ホワイトハウスのウェブサイトに納税申告書の公表を求める請願の署名が22日夕方の時点で22万8000件になったことについて、「トランプ大統領は納税申告書を公開するつもりはありません。私たちはこの選挙期間中ずっと、この問題を法廷で争ってきました。国民は気にしていません」と発言した。
トランプ大統領は1月11日の記者会見で、「アメリカ国民はこの納税申告書について何も気にしていない。気にしているのは記者だけだ」と述べている。
ハッキング活動家集団「アノニマス」は、トランプ大統領との戦闘開始を宣言した。アノニマスは、大統領に「今後4年間のうちに後悔させる」ことを誓っている。
ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。
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