「国宝級」とテレビ番組で紹介された茶碗をめぐって、所有者が住む徳島県が文化財登録のための調査を予定していたが、1月23日までに調査を中止した。 所有者から「一切、外部への資料提供を控える」と連絡があったのが原因だという。
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2016年12月20日放送のテレビ東京系「開運!なんでも鑑定団」で、出品された天目茶碗が世界に3点しかないとされる「曜変天目」だと鑑定された。これを受けて、徳島県では文化財登録のための調査を企画していたが、県教育文化財課の担当者はハフィントンポストの取材に対し「調査を進めることができなくなった」と明かした。
この茶碗は、徳島県徳島市の支那そば店経営の男性が同番組に鑑定を依頼。大工だった男性の曽祖父が、戦国武将・三好長慶の子孫の武家屋敷の工事を請け負った際に譲り受けたという。
番組での評価額は2500万円。古美術鑑定家の中島誠之助氏は以下のように語っていた。
「開運!なんでも鑑定団」始まって以来の発見。12世紀から13世紀、中国の南宋時代に福建省の建窯(けんよう)で焼かれた「曜変天目」に間違いございません。日本にもたらされた茶碗は数あるが、曜変はたった3点。その全てが国宝。これが出たことによって4点目が確認された。
中島誠之助氏(「開運!なんでも鑑定団」公式サイト)
鑑定結果を受けて、徳島県では茶碗の調査を進めようとしていたという。ハフィントンポストでは、茶碗の調査決定から中止の間の経緯について、徳島県教育文化財課の担当者に話を聞いた。
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――徳島県の方で調査をする予定だったようですが、具体的にはどういう経緯だったのでしょうか。
「開運!なんでも鑑定団」の鑑定結果を受けて、県では所有者に連絡し、「県指定の文化財として登録を希望しますか?」と確認をしました。確認したところ、当初は所有者の方も登録を望む意向を示されました。条例では、県指定文化財として認定するには、所有者の方に登録申請をしてもらう形になっています。
――その後、県ではどのような対応をとったのでしょうか。
文化財としての申請には、申請前に予め調査を終わらせておく必要があります。そこで県のほうで茶碗の調査を進めることになりました。ただ、徳島県には専門家がいないため、外部から有識者を招へいする必要がありました。そこで県では、茶碗の所有者の方に実物を持参してもらい、写真を撮影。その写真を専門家に送り、「こういう茶碗がありますので、調査をしていただけないか」と依頼をしていました。
――なぜ、調査を進めることができなくなったのでしょうか。
「開運!なんでも鑑定団」の鑑定結果をめぐる波紋が広がったからか、所有者の方から「一切、外部への資料提供を控えさせていただきたい」との連絡があり、調査を進めることができなくなってしまいました。そのため県としては、専門家に見せる段階ではなくなりました。
個人所蔵ということもあり、県が強制的に調査することは…。ただ、県と所有者の関係性が悪化したわけではなく、あくまで「一旦保留」だと認識しています。もし今後調査をする機会があり本物だと立証されたら、徳島にとって良いニュースになると思います。
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※ハフィントンポストでは、「開運!なんでも鑑定団」で鑑定された「曜変天目」とされる茶碗に関する情報や見解を募集しています。情報をお寄せいただける方は、news@huffingtonpost.jpまでお知らせ下さい。