ドナルド・トランプ新大統領は1月20日(日本時間21日)、連邦議会議事堂で就任演説を行った。連邦議会議事堂前に広がるナショナル・モールには、トランプ氏の就任演説を聞くために多くの人々が集まったが、2009年のオバマ氏の就任式より少なかった。ハフィントンポストも以下の記事で報じている。
しかし、日本ではこの報道に対して「メディアの意図的なトリミングで、捏造だ」とする日本語のツイートが1月23日深夜に投稿され、24日午後2時時点で8000回近くリツイートされるなど拡散されている。
だが、このTwitterユーザーが「メディアが意図的にトリミングして少なく見せかけているだけだ」と主張するために使用している下の写真をよく見ると、群衆たちが頭にピンク色の帽子をかぶっていることがわかる。
そう、これはトランプ大統領就任に反対するため、演説翌日に集まったデモ「ウイメンズマーチ」の写真であり、就任式に集まった人々ではない。
ツイッターで使用されている写真は、ロイター通信がハフィントンポストを含む報道各社に配信しているものとみられ、The Indian Express が使用しているのがネット上では確認できた。
この写真説明には明確に「第45代大統領のトランプ氏就任に抵抗するため『ウイメンズマーチ』に参加しているデモ隊、ワシントンの連邦議会議事堂付近で1月21日撮影」と書かれている。
Demonstrators take part in the Women's March to protest Donald Trump's inauguration as the 45th president of the United States near the U.S. Capitol in Washington, January 21, 2017. REUTERS/Lucas Jackson
念のためデマを吹聴しているツイッターの投稿と、ロイターの写真を重ねてみると、同一のものであることが確認された。やはり就任演説ではなく、その翌日の「ウイメンズマーチ」デモの写真が使用されているようだ。
ABCニュースによると、2009年のオバマ大統領就任式には約180万人が、2013年には約100万人が集まった。トランプ大統領の就任式に参加した人数については議論が続いているが、ファクトチェックサイト「ポリティファクト」は、トランプ大統領の就任式の参加者は25万〜60万人と推定している。
いずれにせよ、正しい写真で比較すると明らかに少ないことがわかる。
また、ナショナルモール周辺では、車両規制が行われており、就任式会場へのメインのアクセス手段は地下鉄となっていた。ワシントンメトロのツイートによると、この日の午前11時の時点での利用者は19万3000人。2009年の51万3000人、2013年の31万7000人人と比べても少なかった。
BBCによると、トランプ氏はこれらの報道を「捏造だ」と断じ、スパイサー大統領報道官は21日の記者会見で「集まった群衆は過去最大だった」と主張した。
一方、メディアに追及されるスパイサー報道官を擁護したコンウェイ大統領顧問は、22日、NBCの取材に「彼はもう一つの真実(オルタナティブ・ファクト)を示しただけだ」と苦し紛れに発言し、全米の失笑を買った。
そしてスパイサー報道官は23日に、記者会見で「ネットなどで見た人を含めば最大だ」と釈明した一方で、「今後はうそをつかない」と記者団に対して約束した。
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