「千と千尋の神隠し」今こそ伝えたい名言15選 「つらくても、耐えて機会を待つんだよ」

「トンネルの向こうは、不思議の町でした」

日本テレビ系「金曜ロードSHOW!」では1月20日、スタジオジブリの長編アニメーション映画作品「千と千尋の神隠し」を放送する予定だ。

「千と千尋の神隠し」ポスター(ジブリの大展覧会にて)

宮崎駿監督は1997年公開の「もののけ姫」の成功を経て、引退すると受け取れる発言をしていたが、のちに撤回。2001年7月、21世紀幕開けの年に宮崎監督が世に送り出したのは、神々が住む異世界へ迷い込んだ10歳の少女「千尋」が人間としての成長を遂げ、生きる力を獲得する物語だった。

映画のキャッチコピーは「トンネルの向こうは、不思議の町でした」。神々が疲れを癒す銭湯「油屋」を舞台に、魔女の湯婆婆、心優しい少年ハク、仕事に対して哲学をもつ釜爺、謎の化け物「カオナシ」など個性的なキャラクターたちが描かれる。そのセリフの中には、現代を生きる人々への示唆に富む内容もある。その一部を紹介しよう。

■千尋

ここで働かせてください!

私が欲しいものは、あなたには絶対出せない

■ハク(湯婆婆の弟子の少年)

私のことはハク様と呼べ

嫌だとか、帰りたいとか言わせるように仕向けてくるけど、働きたいとだけ言うんだ。つらくても、耐えて機会を待つんだよ

千尋の元気が出るように、まじないをかけて作ったんだ。お食べ

■釜翁(かまじい、銭湯のボイラーを取り仕切る)

いいなあ、愛の力だなあ

手ぇ出すならしまいまでやれ!

あんたも気まぐれに手ぇ出して、人の仕事を取っちゃならねぇ

えーんがちょ!せい!えーんがちょ!切った!

■湯婆婆(ゆばーば、油屋を経営する魔女)

来ちまったものは仕方がない。お迎えしな!こうなったら出来るだけはやく引き取ってもらうしかないよ!

ずいぶん生意気な口をきくね。いつからそんなに偉くなったんだい?

そう簡単にはいかないよ、世の中には決まりというものがあるんだ!

■銭婆(ぜにーば、湯婆婆の双子の姉)

一度あったことは忘れないものさ…想い出せないだけで

ちひろ。いい名だね。自分の名前を大事にね

■河の神

よき哉(よきかな)…

■宮崎監督が伝えたかったメッセージ「言葉は力」

「日本映画史上、興行収入歴代1位」という金字塔を打ち立てた『千と千尋の神隠し』。その世界観は海外でも評価され、ベルリン国際映画祭では金熊賞に。アカデミー賞では長編アニメ映画部門を受賞した。「映画の世界観に似ている」と、台湾の観光地・九份も話題になった(※宮崎監督は、九份が舞台のモデルだとする説を否定している)。

九份の茶館。現地ガイドは「千と千尋のお茶屋さん」と紹介していたが…

ヒットの背景には何があったのだろうか。スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーは、朝日新聞のインタビューでこう語っている。

不思議の町に紛れ込んだ少女が、ブタにされた両親を取り戻すために奮闘する話ですが、宮さん(宮崎監督)のテーマは一貫して、少年少女を励ますということ。少女の姿を通し、そのメッセージが見事に伝わっている。カオナシという化け物がいて、少女にひとめぼれし、気をひこうとするがわかってもらえず、ついには暴れ出す。悲しい存在ですが、自らを投影する観客がかなりいます

(朝日新聞・2001年09月22日夕刊より)

鈴木敏夫プロデューサー

宮崎監督自身は『ジブリの教科書12 千と千尋の神隠し』(文春ジブリ文庫)の中で、物語の中で重要だと考えたのは「言葉は力」という点だと記している。

言葉は力である。千尋の迷い込んだ世界では、言葉を発することはとり返しのつかない重さを持っている。湯婆婆が支配する湯屋では、「いやだ」「帰りたい」と一言でも口にしたら、魔女はたちまち千尋を放り出し、彼女はどこにも行くあてのないままさまよい消滅するか、ニワトリにされて喰われるまで卵を生み続けるかの道しか無くなる。

(中略)

今日、言葉はかぎりなく軽く、どうとでも言えるアブクのようなものを受け取られているが、それは現実がうつろになっている反映にすぎない。言葉は力であることは、今も真実である。力のない空虚な言葉が、無意味に溢れているだけなのだ。

『ジブリの教科書12 千と千尋の神隠し』(文春ジブリ文庫)

その上で宮崎監督は、困難な世の中に放り込まれた千尋の成長を通して、言葉が持つ力の意味を訴えたかったようだ。

世の中の本質は、今も少しも変わっていない。言葉は意志であり、自分であり、力なのだということを、この映画は説得力を持って訴えるつもりである。

『ジブリの教科書12 千と千尋の神隠し』(文春ジブリ文庫)

善も悪も織り混ざった、困難な21世紀。『千と千尋の神隠し』は、そんな時代を生きる人々のために向けられた、宮崎監督からのエールなのかもしれない。

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