小銭でいっぱいになった、ニック・スタッフォードさんの5台の手押し車
運転免許の申請や実技試験といった手続きをするアメリカの陸運局(DMV)は、対応が遅い、電話がつながらない、何時間も待たされる、いつも何十人もの行列ができるなど、悪評が高い役所として知られている。
そんなDMVに業を煮やした1人の男が、とんでもないことをした。
バージニア州レバノンに住むニック・スタッフォードさんが自社のウェブサイトに載せた声明によると、2016年12月11日、スタッフォードさんは、小銭でいっぱいの手押し車5台を押して、バージニア州レバノンの自動車両局(DMV)に持ち込んだ。
数カ月間、DMVと争ってきたスタッフォードさんは、29万8745枚のペニー硬貨で、車にかかっている税金2987ドル14セントを支払おうとした。DMVの自動硬貨計数機はその量を処理できず、職員が手で1548ポンド(約702キロ)の小銭を数える羽目になった。BBCによると、スタッフォードさんは11日の午前9時にDMVに到着したが、DMVの職員が、そのペニーを数え終えたのは12日の早朝だったという。
すべての発端は、DMVとの長年にわたる因縁だった。スタッフォードさんは次のように理由を説明している。
「あなたはこう聞くかもしれない。『なぜわざわざそんなことをするのか?』と。2016年、私は州と連邦に所得税だけで30万ドル支払いました。そして、私は、州法に従わない政府機関の職員を一切容赦しません。それが理由です」
スタッフォードさんは9月、、地元のDMVに「30秒しかかからない質問」をするために電話をかけた。スタッフォードさんは地元に複数の邸宅を所有しているので、どこに車の登録をし、どこに消費税を支払うのかを尋ねようとした。
サイトに掲載されている電話番号にかけると1時間以上も待たされた。レバノンのDMVへの直通の番号はオンラインには載っていなかったので、電話番号の情報公開を要求して、直通番号を入手した。
スタッフォードさんが電話すると、電話に出た職員は、「この番号に電話することは許されない」と言って、その電話を切ってしまった。スタッフォードさんは、繰り返し同じ番号に電話して、やっと質問の回答をもらった。しかし、「自分の正しさを証明する」ため、スタッフォードさんはその番号に再び電話して、バージニア州にある9つのDMV事務所の電話帳に載っていない番号を要求した。
レバノンのDMVがその要求を拒否すると、スタッフォードさんは、DMVに対して訴訟を起こした。
「DMVが私に迷惑をかけるつもりなら、私も彼らに迷惑をかけてやりますよ」と、スタッフォードさんは地元紙『ブリストル・ヘラルド・クーリエ』に対して語った。
スタッフォードさんは165ドルを支払って、ラッセル郡一般地方裁判所に3件の訴訟を起こした。1件の訴訟は、レバノンのDMV自体に対して、そして2件の訴訟は、特定の職員に対するものだった。
裁判官は2016年12月10日、すべての訴訟を却下した。法廷で州司法長官の代理人からすべての電話番号がスタッフォードさんに提出されたからだ。
スタッフォードさんは、自身のサイトに入手したすべての電話番号を掲載している。
「私たちの共和政と民主主義の根本は、開かれた政府であり、政府の透明性だと思っています。そして多くの人が、情報公開法(FOIA)の力を知らないことに私は驚いています」とスタッフォードさんは、『ブリストル・ヘラルド・クーリエ紙』に語った。
しかし、スタッフォードさんの闘いは、これで終わりではなかった。
24時間も経たないうちに、スタッフォードさんは、DMVで税金を払うために、何百本というペニーのロールを集めた。それから、ロール状に巻かれた硬貨を開けて崩すのに、時給10ドルで11人雇った。これを行うのに4時間の時間を要し、スタッフォードさんには440ドルの費用がかかった。その後、5台の手押し車を購入し、さらに400ドルの費用がかかった。結果的に、スタッフォードさんは、10の電話番号を得ることと、DMVで山ほどのペニーを置いてくることに1005ドルを費やした。
DMVはスタッフォードさんの支払形式を受け入れなければならなかった。1965年の米国貨幣法で、硬貨は「すべての債務、公共料金、租税公課の法定通貨」であるとされているためだ。
スタッフォードさんによると、DMVの職員は、騒ぎ立てることはしなかったという。
「DMVの職員はとても丁重に、その状況を考慮して親切な対応をしてもらいました」と、スタッフォードさんはウェブサイトに書き記した。
ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。
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