クリオネ瓶詰めは一般家庭で飼育できるの? 専門家の見解は

「かわいそうと言えばかわいそうかもしれませんが...」
EPA・時事

大阪府内などに出店している「スーパー玉出」で瓶詰めのクリオネが販売されているというTwitter投稿が話題になっている。クリオネはネット通販などでも販売されており、「飼いたい」という声も。一方、アクアリウム愛好家のアクアンガーリックさんは、イラストで「買う前によく考えて」とする意見を投稿しこちらも1万7000人以上がリツイート(19日夕方時点)している。

ハフィントンポストの取材に対してアクアンガーリックさんは「販売する人を非難するわけではありません。飼育しようとする方々に『買うのであれば一度考えてみてね』と投げかけたいと思いました。参照したのはこのような論文や、この論文などです。困難を極めながらも家庭で長期飼育に尽くした方のブログなどが参考になると思います」と話している。

■クリオネ飼育施設で聞いた意外な事実

クリオネを家庭で飼育することは可能なのだろうか?

ハフィントンポストではさらに、クリオネを飼育している2つの施設の専門家にも見解をたずねてみた。すると、2人とも結論は「家庭での飼育は難しい」。一方、エサは水族館でもほとんど与えることができないという意外な事実が判明した。

北海道立オホーツク流氷科学センターの学芸員、桑原尚司さんは、展示・研究用のクリオネをオホーツク海沿岸で採取している。クリオネ数千匹に対し、確保できるエサの巻貝ミジンウキマイマイは2、3匹程度ということもあるという。

「クリオネは確かに飢餓に強い生き物です。エサなしでも、平均で半年〜1年ほど生きることができます。しかし、自然環境以外ではエサを与えるのは大変難しく、その点では家庭も水族館のような施設でも同じかもしれません。かわいそうと言えばかわいそうかもしれませんが...」と話す。それでも、桑原さんは飼育のための新たなエサやろ過装置などに取り組み、クリオネの寿命をできる限り延ばしている。「なるべくクリオネが長生きできるように、研究を続けています」。

また、アクアマリンふくしまでは、特別な許可を得て、北海道の海で潜水によりクリオネを採取している。飼育員、松崎浩二さんによると、潜水であってもミジンウキマイマイの採取は難しく、アクアマリンふくしまの200〜300のクリオネの全てに行き渡るほどには得られないという。

ただ、ミジンウキマイマイは冷凍で与えることができるといい、アクアマリンふくしまではエサやりの実演なども行なわれている。

松崎さんは家庭でクリオネを飼育することの難しい点として、エサではなく温度管理を挙げてこう解説した。

「『冷蔵庫で飼うことができる』という商品を見たことがありますが、冷蔵庫は通常2〜3℃ですから、-1〜0℃の海水温で流氷と共に暮らしているクリオネにとってはあったかい環境です。同じエサなしの条件でも、温度やその他の環境の整った水族館では1年以上飼育することもできますが、家庭の冷蔵庫の環境ではもって2〜3カ月です。それではかわいそうでしょう。クリオネはむやみに飼おうとせず、水族館に見に来て欲しいですね」

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