ヨーロッパ初の海底美術館が出現。美しい彫刻にはある願いが込められている(画像)

ここは鑑賞するためだけじゃなく、命を助ける美術館。

カナリア諸島の一つ、ランサローテ島の沖に、神秘的な美術館がオープンした。ヨーロッパ初となる海底の美術館「アトランティコ海底美術館」だ。

約2万7000平方フィート(約2500平方メートル)に及ぶ海底に沈む彫刻は、鑑賞するためだけに作られたわけではない。彫刻はここで、人工の岩礁として役割を果たす。すでに生き物で埋め尽くされている自然の岩礁に代わって、魚などの海の生き物たちが 生息するための場所となり、侵食によって崩れてしまった生態系を回復するのだ。

鏡の中をのぞき込む、半分人間、半分動物の生き物「ポータル」。鏡には海面が写っている。鏡が設置されている台は、タコやウニを引き寄せるようデザインされている。(JASON DECAIRES TAYLOR/CACT LANZAROTE)

スーツを着たビジネスマンがブランコに乗っている作品「規制のない場所」。自然保護より企業の利益を優先させる社会を描いている。(JASON DECAIRES TAYLOR/CACT LANZAROTE)

実物大の人間の彫刻200体を使って円を描いた「渦巻き」。「海の力の前では人間は弱い存在である」というメッセージが込められている。(JASON DECAIRES TAYLOR/CACT LANZAROTE)

アトランティコ美術館を考案したジェイソン・ ディキャネス・テイラー氏は、これまでメキシコバハマ諸島にも海底美術館を作ってきた人物だ。このランサローテ島の海底美術館では、訪れた人たちのためにツアーを設けた。

1時間のツアーの参加費は、シュノーケリングの場合は8ユーロ(約1000円)で、ダイビングでは12ユーロ(約1500円。器材を含む)。ツアーの目的は、海を保護することの重要性と緊急性をわかってもらうことだ。参加者たちは、海が今どれほど危機的な状況にあるかを学ぶ。

中でも、長さ98フィート(約30メートル)、重さ1102トンの「ルビコン川を渡る」には強いメッセージが込められている。

人々が壁に向かって歩いている様子を描いた作品「ルビコン川を渡る」。壁は、海を自分たちの手で分け、支配しようとした人間の失敗を象徴している。(JASON DECAIRES TAYLOR/CACT LANZAROTE)

「愛国主義や保護主義が強まる今、壁は『人間は、土地をわけたように、海や気候、自然をわけることはできない』というメッセージを伝えます。この作品は、2017年が歴史の転換点で、引き返すことができない時であること、そして海と気候が変化しつつあり、手遅れになる前に今すぐ行動しなければいけないことを、私たちに知らせているのです」とディキャネス・テイラー氏はプレスリリースで綴っている。

彫刻は、海の生き物たちに優しい材料で作られている。(JASON DECAIRES TAYLOR/CACT LANZAROTE)

「ルビコン川を渡る」を眺めるダイバー。(JASON DECAIRES TAYLOR/CACT LANZAROTE)

幾つかの彫刻は、約1年前から海底に置かれていて、魚やタコ、エイなどが訪れている。(JASON DECAIRES TAYLOR/CACT LANZAROTE)

アトランティコ海底美術館に運ばれる彫刻。海底に沈められた後は、そこで永遠に岩礁となって海の繁栄を助ける。(JASON DECAIRES TAYLOR/CACT LANZAROTE)

アトランティコ海底美術館を作る様子(英語)

ハフィントンポストUS版に掲載された記事を翻訳しました。

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