MXテレビ「ニュース女子」に沖縄メディアなど反発「基地反対派に日当」発言など巡り

沖縄の高江ヘリパッド建設について放送した内容が「虚偽報道」と批判が相次いでいる。

東京の地上波テレビ局「TOKYO MX」が放送した「ニュース女子」が、沖縄の高江ヘリパッド建設について放送した内容が「虚偽報道」と批判が相次いでいる。

「ニュース女子」は化粧品会社のDHCがスポンサーで、東京・中日新聞論説副主幹の長谷川幸洋氏らが司会を務める番組。TOKYO MXはエフエム東京を筆頭に、東京新聞を発行する中日新聞や東京都が出資する東京ローカルのテレビ局。

問題となったのは、1月2日に放送された「沖縄基地反対派はいま」。沖縄・高江地区のヘリパッド建設現場での反対運動について、ジャーナリストの井上和彦氏が「運動家の人たちが襲撃してくるということを言ってるんですね」と述べたり、普天間飛行場の周辺で「2万」と書かれた茶封筒が見つかったとして「反対派は日当をもらってる?」「反対派の人たちは何らかの組織に雇われている?」などのテロップやナレーションが流れたりした。

また、ヘイトスピーチや人種差別に対抗する団体「のりこえねっと」が、高江の状況をネットで伝えるための「高江特派員」を募り、ネットなどで寄せられたカンパから交通費などとして5万円を支給したことを巡って、以下のようなやりとりをスタジオで交わした。

須田慎一郎氏「この方々、反原発、反ヘイトスピーチ、職業的にずーっとやってきて、今沖縄行ってる」

上念司氏「隙間産業ですね。何でもいいんです。盛り上がれば」

八田亜矢子氏「あの交通費5万円は、財源はどこなんですか?」

長谷川幸洋氏「これは誰が出してるの?」

井上和彦氏「これは本当に分からないですよ」

「のりこえねっと」はカンパを募ったと、チラシや集会、公式サイトでも繰り返し公表しており、1月5日には「反対派が金銭目的で運動に参加している証拠であるかのように歪曲して報道しました」と抗議声明を発表した。「私たち『のりこえねっと』関係者は同テレビ局から事前にまったく取材を受けておらず、意見の聴取はおろか単純な事実確認すらされていません」と批判し「傷つけられた人権と名誉の回復と補償を求めるため、必要なあらゆる手段を講じます」とした。

また、在日コリアン3世の辛淑玉氏が共同代表を務めていることに絡み「韓国人がなぜ反対運動に参加するのか」としたことを「人種差別にもとづくヘイト発言」と非難した。辛氏は近く放送倫理・番組向上機構 (BPO)に申し立てるという。

■「民主主義の根幹を揺るがす」

地元紙2紙もこの番組を取り上げた。沖縄タイムスは1月11日付で「真偽不明 悪意むき出し」とする社説を掲載。「放送法の規制を受ける地上波から流れるのは極めて憂慮すべき事態」「事実ではない情報で敵をつくり、快哉(かいさい)を叫ぶ。民主主義の根幹を揺るがす危険な動き」と批判した。

社会面の記事では、番組内で「反対派の暴力行為により近寄れない」として「足止めを食っている」として「ロケ断念」を発表した場所が「高江の現場から直線距離でも25キロ、車で行くと約1時間はかかる名護市の『二見杉田トンネル』前だった。結局、抗議する市民の声は1人も紹介されなかった」と指摘している。

琉球新報も12日付で「ヘリパッド建設に反対する市民をテロリストに例える内容の番組を放送した」と番組内容を詳細に紹介。東京のMX本社前で抗議行動があったことなどを取り上げている

「ニュース女子」は翌週1月9日放送の番組で、長谷川氏ら出演者が冒頭で「Twitterで、5万円でデモ隊を動員したんじゃないかみたいに伝えたこの番組はけしからん、と、ワーッと来たんですよ」とネットの反響を伝え「5万円もらってたって、だからどうなの」と発言。デモ現場のはるか手前で井上氏が引き返したことについては井上氏が公安調査庁の「内外情勢の回顧と展望」を読み上げて「中国が米軍基地反対運動の人々に接触している」と危険性を強調したが、長谷川氏は「(井上氏に)行ってほしかったなあ」と苦言を呈した。コーナーの終わりには「これからも皆さんと議論を深めていきたいと思います」とテロップが流れた。

沖縄の新聞は本当に「偏向」しているのか』などの著書があるフリージャーナリストの安田浩一さんは1月12日、MXの別番組への出演を見合わせるとツイートした。

安田さんはこの番組に不定期のコメンテーターとして2016年12月から出演している。ハフィントンポストに対し「沖縄デマについて取材を続けていく一人として、『ニュース女子』の内容はまったく理もなく許せないと考えた。同じMXに出演する以上、避けて通るわけにいかなかった」と批判。その上で、番組の制作会社(「ニュース女子」とは別の会社)と協議の結果「視聴者に誤解を与えかねない。いずれBPOで決着がつくだろうから、そのときにスッキリする形で出演してもらいたい」と打診され、受け入れたと話した。「激しいやりとりがあったわけではない。制作会社は彼らなりに私の立場を分かって奔走してくれた。立場の弱い制作会社に不利益が生じることは避けたかった」と説明している。

MXテレビ編成部広報は「ニュース女子」の内容の事実関係について「状況確認及びご回答の可否も含めて、結論が出ておりません」、「モーニングCROSS」については「個別の返答は差し控えさせて頂いております」と、ハフィントンポストに回答した。

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