新大河『直虎』脚本家が掟破り宣言 子役で1ヶ月、「恋愛模様も描きます」
8日からNHKで新しい大河ドラマ『おんな城主 直虎』がスタートする(毎週日曜 後8:00~8:45 総合ほか※初回は60分拡大版)。主演は女優の柴咲コウ。三浦春馬、高橋一生、杉本哲太、財前直見、小林薫ほか、今回も多くの出演者が1年間にわたって物語を彩っていく。
「もともと大河ドラマは、『エンターテイメント性の高いゴージャスなドラマを作ろう』という発想から出発したんだそうです。その初心に返るようなドラマが作れたら」と意気込むのは、本作の脚本を手掛ける森下佳子氏だ。
2000年、ドラマ『平成夫婦茶碗~ドケチの花道~』(日本テレビ)で脚本家デビュー。13年、NHK連続テレビ小説『ごちそうさん』を手掛け、第32回向田邦子賞/第22回橋田賞を受賞。そのほかの主な作品にドラマ『世界の中心で、愛をさけぶ』『白夜行』『仁-JIN-』『とんび』『天皇の料理番』『わたしを離さないで』(すべてTBS)などがある。
森下氏は「これまでさまざまなドラマを書いてきましたが、1年にわたるドラマは、初めて。それに、大河ドラマのモチーフは“政治的駆け引き”だと思うので、私にとっては未知の領域です。緊張していますが、落ち着いて取り組めているのは、『ごちそうさん』を経験したからもしれません。思えば、私は子どもの時代からの関係を描くドラマが好きで、『白夜行』を書いた経験も今回、生きてくるような気がします」。
本作の主人公は、戦国時代に男の名で家督を継いだ“おんな城主”、井伊直虎。戦のたびに当主を殺された遠江の国(静岡県西部)・井伊家にただひとり残された姫が、「直虎」と勇ましい名を名乗って乱世に立ち向かう。
井伊直虎のことは、これまで全く知りませんでした。この時代の年表をいただいた時、徳川や武田の欄はびっしり書き込まれているのに、直虎に関する欄は真っ白で、『どないするねん!』と正直思いました(笑)。井伊家と関わりのある家の記録を手がかりにして、空白の期間は想像で書いています。一番、難しいのは生活史料がないこと。『直虎も農作業をしていたはず』『どんな方法で検地をしていたんだろう?』、そういったことも興味を深めて書いています」。
第4回までは、子役による主人公の子ども時代が描かれる。子役が最初の1ヶ月を引っ張るのは近年の大河では異例だ。加藤清史郎が大ブレイクした『天地人』(2009年)でも第2回までだった。
「ぜひともそうする必要がありました」と森下氏。「直虎、井伊直親、小野政次の子ども時代の関係性が、あとあとまでドラマの軸となっていくからです」。先述したとおり、森下脚本が真骨頂を発揮するためにも譲れないものだった。
「直虎のことを『面白そう、書きたい』と思ったのは、幼い頃から思い切ったことをする人だと聞いたから。特に驚いたのは、いいなずけが行方知れずになると、出家してしまったという話。今回は、10歳にしていますが、5歳だったという説もあるほどです。子ども時代から彼女らしい、天賦の才があった。そこから人物像を広げていきました」。
これまで森下氏が手掛けてきた作品タイトルをみると、政治的駆け引きだけでなく、友情や恋愛といった青春要素を絡めたストーリーも期待される。
「恋愛模様も描きます。直虎は尼僧ですが、そこは掟破りにやらせていただこうかと(笑)。色恋を目的に書くわけではありませんが、人間関係を描いていく中で、自然と色恋や情が絡んでいく。書き進めるうちに、『この人がこの人のことを好きにならないとおかしい』という発見があって、それは随時反映していきたいと思っています」。
第5回から本格的に登場する柴咲については「クールで、多芸で、自分のペースで生きている、そんな印象を勝手ながら持っていました。逆に右往左往している姿をみたくなって、劇中では大いに右往左往してもらっています(笑)。また、歌手としても活躍されている方なので、歌うように経を読むシーンをつくりました。エンターテイメントの書き手としては、そういうお楽しみを随所にちりばめていきたい」。
願わくは、「いまの世の中、選択肢はAかBかしかないように語られがちで、二者択一を迫られることがすごく多い。でも、直虎にはAやBで納得できなければCやDを探せばいい、答えは一つじゃない、という発想があったのではないかと思うんです。答えを探す意志こそが大切で、粘って考えよう、あきらめないで頑張ろう、といったことを感じてもらえたらうれしいですね」と話していた。
■あらすじ
戦国時代、駿河の今川、甲斐の武田、三河の徳川と3つの大国が虎視眈々(たんたん)と井伊家の領地(井伊谷)をねらっていた。資源も武力も乏しいこの土地で、頼るべきは己の知恵と勇気。“おんな城主”となった直虎は、仲間と力を合わせて国を治め、幼い世継ぎの命を守ってたくましく生き延び、その後の発展の礎を築いていく。彼女の原動力となったのは、幼い頃に約束を交わした、いいなずけへの一途な愛。愛を貫いて自ら運命を切り開き、戦国を生き抜いた女の激動の生涯を描く。
第1回「井伊谷(いいのや)の少女」は、直虎が「おとわ」と呼ばれていた少女時代にさかのぼる。井伊家当主の父・直盛(杉本哲太)と母・千賀(財前直見)のもと、幸せな日々を過ごしていたおとわ(新井美羽)。おてんばな彼女の遊び相手は幼なじみの亀之丞(藤本哉汰)と鶴丸(小林颯)だった。ある日、おとわに亀之丞との縁談話が舞い込む。当主の座を継ぐつもりだったおとわは戸惑うが、やがて亀之丞の妻として井伊家を支えていこうと心に決める。そんな折、亀之丞の父である井伊直満(宇梶剛士)が、主家である今川義元(春風亭昇太)に謀反の疑いをかけられ、駿府に呼び出されることになる。
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