Facebook、偽ニュース対策を発表 「真偽がはっきりしない」警告を表示する機能を追加

「Facebook社は、ようやく偽ニュース問題を受け入れる意向を示した」

Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOは11月、投稿に関する変更について示唆した。

Facebookは12月15日、ニュースフィード上の偽ニュース対策を発表し、同日から試験運用を開始した。アメリカ大統領選に影響を与えたと指摘されている捏造記事の拡散を防ぐことが狙いだ。

デマが本当のニュースのように拡散された大統領選以降、Facebookは1カ月以上にわたって世界中から抗議を受けていた。偽ニュース「ピザゲート」を信じ込んだ人間による銃撃事件がアメリカで実際に起こり、Facebookは、ようやく偽ニュースの拡散を防止する取り組みを強化した。

Facebookは15日、ユーザーが「Disputed(真偽がはっきりしない)」とフラグをつけることで偽ニュースに警告ラベルを貼り、ラベルが貼られた記事を事実確認専門の第三者機関が確認する、ファクトチェック機能を取り入れていくと発表した。ニュースフィードの責任者アダム・モセリ副社長が、報道関係者に向けた発表で変更について公表した。

これからは、ユーザーがサイト上で偽ニュースをシェアする前に、その正確性について「真偽がはっきりしない」という警告が出る。ユーザーは理由を確認するため、記事の事実を確認するリンクをクリックできる。

アップデートは15日に公開され始めたところなので、今すぐにこのフラグを目にすることはないだろうが、まもなくお目見えとなるだろう。

Faceboookは、当該の投稿に対し、ユーザー用の"真偽不明"というフラグを付けることになる。

またFacebookは、11月にCEOのマーク・ザッカーバーグ氏が予告していた他の対策についても公表した

ザッカーバーグ氏はこれまで偽ニュースが大統領選に影響を与えたことを否定してきたが、ここにきて動いた。 ドナルド・トランプ氏の勝利もあって、偽ニュースがより深刻な問題になってきたからだ。

こうした対策が偽ニュース問題の解決につながるかどうか判断するには時期尚早だ。多くの人が当初思っていたよりも、偽ニュース問題は拡大している。

「Facebook社は、ようやく偽ニュース問題を受け入れる意向を示した」と、ジャーナリズム検証他団体「ポインター」の国際ファクトチェック・ネットワーク部長アレキシャス・マンザリス氏はハフィントンポストの取材に答えた。マンザリス氏は偽ニュース問題について何カ月も取り上げ続けている。

「Facebook社はポインターと提携する意思があると私に伝達してきた」と、マンザリス氏は言った。ポインターは明確なファクトチェックの基本原則を提示している。今のところ、Facebookは偽ニュース対策にファクトチェックサイトSnopes、FactCheck.org、Politifact、そしてABCニュース、AP通信の協力を得ているが、これから何が効果的かを見極めていく中で、ポインターからより多くの情報の提供を受けたいと考えている。

ポインター・ネットワークのファクトチェックの基本原則は、「不偏不党」「公正さ」「情報源の透明性」「資金源」「修正への対応」といった項目が対象となる。ポインター・ネットワークは非営利組織として、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、Google、全米民主主義基金などから資金調達を受けている。

12月15日の発表は、大統領選挙の運動期間にトランプ支持派のウェブサイトが流した偽ニュースが続発し、拡散したことによる。

BuzzFeedニュースの分析によると、アメリカの選挙の3カ月前から、大統領選にまつわる偽ニュースのFacebookのエンゲージメント(いいねとシェア)は、主要な19のニュースサイトからの選挙の話題よりも高くなっていた。

BuzzFeedの他のレポートによると、多くの人が関心を持った偽ニュースは民主党候補のヒラリー・クリントン氏を批判し、トランプ氏を支持する内容だった。これは「ピザゲート」と呼ばれる偽ニュースで、クリントン氏は殺人者で、ピザショップ「コメット・ピンポン」を拠点として児童買春組織を運営している、というものだ。

クリントン氏は議会の演説で、「これはもはや政治や党派に関する問題ではありません。人の命、つまりいつも通りに仕事に行ったり、あるいは地域社会に貢献したりという日常生活を送っている普通の市民の命が危険にさらされているのです」と語った。「これがどんなに危険なことか、これは早急に対処しなければならない問題です」

Facebookのニュースフィードには膨大な数のユーザーがいる。投稿サイト「Reddit」やTwitterなど、他のサイトは最近、偽ニュースや卑劣な煽りを防止する対策を立てたが、Facebookは巨大すぎてコントロールが難しい。

月間アクティブユーザー18億人を抱えるFacebookは、ニュース配信になくてはならないプラットフォームだ。ニュースサイトはトラフィックの大部分をFacebookから得ている。インターネットユーザーは今やデスクトップでホームページを開くのではなく、モバイルのアプリを利用するようになっている。世論調査機関「ピュー・リサーチセンター」によると、アメリカでは成人の44%がFacebookでニュースを見ているという。

Facebookは、ユーザーが偽ニュースではないかと考えた記事を通報しやすくする機能を発表した。

ノースカロライナ大学のゼイネップ・トゥフェクチ准教授はニューヨークタイムズに「難民支援をしているローマ法王フランシスコはトランプ氏の支持者だ、と断定した偽ニュースは100万回近くもシェアされ、おそらくは何千万という人の目に触れてしまった」と話した。「訂正については、ほとんど話題にならなった。Facebookが大統領選に大きな影響力が与えたことは間違いない」

こういった偽ニュース記事はトランプ氏を支持するウェブサイトで量産され、アメリカ大統領選挙前の数カ月間にSNSなどで次第に拡散し、投票者に影響を与えた可能性がある。また投稿が広くシェアされることで世界中で暴力行為をあおり、挙句の果てにはブラジルで女性が撲殺される事態を招いた、とポインターは指摘する。

当初、ザッカーバーグ氏は偽ニュースが大統領選挙にも影響を与えたという批判を「馬鹿げた見解だ」と取り合わなかった。偽ニュースが実際に投票者へ与える影響を十分に測定するのは不可能かもしれないが、ザッカーバーグ氏はそれが問題であることすら受け入れようとしなかった。

しかし、ニューヨークタイムズによると、Facebookの社員はこの問題を深刻に捉えていたという。

11月末、非難が激しくなるにつれプレッシャーを感じたザッカーバーグ氏は、今までの個人の見解を変え、Facebookは虚偽情報の拡散を防ぐための対策を講じると投稿した

12月15日に発表された対応策の変化から、この問題に対する同社の取り組みが前進してきたことがわかる。

今回の対策はおそらく、Facebookが自社のコンテンツ運営で外部組織と連携する初めての試みと言える。

情報やニュースがFacebookのポップアップ通知で「偽」という代わりに「真偽がはっきりしない」と表示されるのは興味深い。報道発表ではこの2つの用語は同義語として扱われているように思われる。モセリ氏は第三者機関による事実検証で虚偽であるとされた情報のみが「真偽にはっきりしない」として扱われることになると述べる。

ワシントンDCのピザレストラン「コメット・ピンポン」が児童買春組織の拠点だという偽ニュースが報じられた後、ライフルを持った男が、実際に店舗を襲撃した。

今回の対策は、何が正しいニュースで、何が偽ニュースなのかSNSが自身が意図的に決定しないことがポイントとなる。Facebookは自社が報道機関ではなく、ニュースの内容やニュースフィードに現れたステータスには責任を持たないと繰り返し主張してきている。

むしろ Facebookは、自身をニュース配信にとらわれていないプラットフォームだと考えている。「私たちは自身が真実の決定者になることを望んでいないが、自身のコミュニティを頼りにし、第三者機関を信頼する」と、ザッカーバーグ氏は11月の投稿で述べていた。

これまでもユーザーは自分が好まない話には報告することができたが、その理由としてはっきりと「偽ニュース」と表示することはできなかった。これまでの選択肢は「不愉快または面白くない」「Facebookに載るべきではないと思う」「スパムである」であった。

Facebook広報担当者は15日、Facebook上を通じて広がった噂に関し、同社には多少の責任があると認めはした。しかし、この声明は、同社が投稿の内容を判断したり、発言を制限していると見られることについて躊躇していることが見てとれる。

「私たちは、人々に発言権を与えることの価値を信じていますし、自分たち自身の真実の裁定者にはなれないことも確信しています」と、モセリ副社長は声明で述べた。「この問題に対しては、注意深く取り組んでいきます」

Facebookは、フィード上の記事について判断を下すことには慎重だが、投稿を検閲して削除したことがある。もっとも有名な話では、ベトナム戦争でナパーム弾の攻撃から逃げる「ナパームの少女」の写真が児童ポルノと判定され、削除された。

Facebookは、リンクは禁止しない予定だ。「それは私たちが立ち入るべき領域ではありません」と、広報担当者は述べた。

ポインターのメンバーは、ユーザーが最も多く偽ニュースだとフラグを付けた記事を調査することになる。この手法は、うまくいけば、多くの人が目にし、シェアされる偽ニュースの氾濫を鎮めていくだろう。

またFacebookでは、クリックされてもシェアはされないコンテンツは、質の低いコンテンツとみなして下位に表示されるようにもなっている。この機能について、広報担当は「スーパーで試食しても、その食品を購入しないようなものだと考えてもらいたい」と述べた。

ついにFacebookは、SNSで宣伝しようとする疑わしいウェブサイトに対して、さらに断固たる処置を取ることを発表した。今回の対策では、一部のユーザーを対象にテストされ、上手くいけば広範囲で本格的に実施されることになる。

偽ニュースの問題は、インターネットや現実世界を混乱させてきた。

バラク・オバマ大統領は、演説や11月に掲載されたローリング・ストーン誌のジャン・ウェナー記者とのインタヴューで、偽ニュースを非難していた。「ノーベル賞受賞者が書いた気候変動の記事と、地下室でパンツ一枚の男が書いた記事が同じように信憑性があると思われるのは問題だ」と、オバマ大統領は述べた。「常に報道の自由が重んじられ、インターネットコンテンツの検閲が求められないインターネット時代に、これは解決するのが困難な問題です」

トランプ氏や周辺の関係者は、偽ニュース問題について公式見解を発表していない。トランプ政権で国家安全保障顧問を務めるマイケル・フリン氏の息子は、「ピザゲート」事件は陰謀論だとツイートしている。

ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。

▼画像集が開きます

(スライドショーが見られない方はこちらへ)

【お知らせ】

ハフィントンポストでは、12月18日に働きかたに関するイベントを開催します。お申し込みは以下よりお願いします。

■イベント詳細と申し込み用フォームは下記リンクからもご確認いただけます。

注目記事