アメリカのドナルド・トランプ次期大統領は12月13日、次期国務長官にエクソンモービルのレックス・ティラーソン会長兼最高経営責任者(CEO)を指名したと発表した。
ティラーソン氏は1952年テキサス州生まれ。1975年石油最大手エクソンに入社し、2006年CEOに就任した。ロシアの国営石油会社ロスネフチと5000億ドル(約51兆円)の北極海・黒海開発の合弁事業を行うなど、ロシアとの結びつきが深いことで知られる。プーチン大統領は2013年、ロシアの友好勲章をティラーソン氏に授与している。
「レックス・ティラーソン氏は、アメリカンドリームを具現化した。大変な努力を重ね、熱心に仕事に取り組み、先を見据えたビジネスでの決断力を通じて出世街道を歩み、世界最大で最も評価の高い企業エクソンモービルのCEOになった」と、トランプ氏は声明で述べた。
「彼には不屈の闘志と豊富な経験があり、地政学を深く理解している。彼を国務長官に指名することは、素晴らしい選択だ」
トランプ氏は12日、ティラーソン氏の指名は13日朝に正式発表するとツイートしていた。
AP通信とニューヨークタイムズは早い段階で、トランプ氏は自らの意志でティラーソン氏を国務長官に選んだと報じていた。トランプ氏は10日、ニューヨークでティラーソン氏と会談している。
ロシア政府のディミトリ―・ペスコフ報道官は12日、ロシアと関係が深いティラーソン氏を称賛した。ティラーソンCEOが過去に石油会社のクレムリンの担当者と協働していた間、「プロ中のプロ」としての役割を果たしていた、とペスコフ報道官は語っていた。
ペスコフ報道官は、ティラーソン氏が、ロシアのウラジミール・プーチン大統領と数回面会したことがあると語った。
ニューヨークタイムズは12日、もしアメリカがウクライナ東部のロシアの軍事行動に圧力をかける目的で科した経済制裁を解除すれば、エクソンはそれだけで数十億ドルの石油取引を成立できる、と報じていた。
ティラーソン氏は、エクソンの2014年度の総会で、ロシアとの合弁事業が中止に追い込まれたことから、ロシアへの経済制裁に反対すると言明している。
「我々はロシアへの制裁を支持しない。ほとんどの場合、こうした制裁は包括的に完全に実施されなければ効果がないからだ。そして包括的な制裁は、実際には非常に困難だ」と、ティラーソン氏は述べた。「だから我々は、制裁を決定する人間に、本当に影響を受けるのは誰で、その人たちがどれだけ広範囲に巻き添えを食うのか、いつも考えてもらうようにしている」
これから国務省を運営することになるティラーソン氏は、ロシアへの経済制裁に反対するロビー活動をしたことがある。活動費は、最低でも10億ドルを費やしたとみられる。
ティラーソン氏指名の情報が流れたのは、アメリカ中央情報局(CIA)が、アメリカ大統領選の期間中にロシアがトランプ氏を支援するためサイバー攻撃を仕掛けたと結論づけたのと同じ時期だった。マイケル・マクフォール前駐露大使は、ティラーソン氏指名を受けて、大統領選へのロシアの関与を調査するための超党派の委員会設置を議会に要求した。
ティラーソン氏の指名に伴い、アメリカ議会がロシアの干渉に関する独立した超党派の委員会を設立することは、極めて大きな意味を持つ。
ティラーソン氏には、政治的実務経験がない。ニューヨークタイムズによれば、同氏は2017年、エクソンを退社する準備をしているというが、ロシアとの親密な関係から利益相反の懸念が取り沙汰されている。
国務長官候補として名前が上がっていた人物はこれまでも数人いた。ルドルフ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長はは9日に自身の事業に専念するという理由でトランプ政権入りを辞退している。2012年の共和党候補ミット・ロムニー氏は12日、Facebookの投稿で、国務長官を引き受ける意志がないことを伝えていた。
私たちの偉大な国の国務長官候補と考えてもらえるのは、名誉なことだ。私とトランプ次期大統領との会談は終始なごやかで、有意義なものだった。新政権がこの国をより偉大な力、繁栄、平和へ導いてくれることを、強く望んでいる。
ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。
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