「時代は変る」(The times, they are a changin’)
ボブ・ディランがノーベル賞を受賞するというニュースが流れたとき、文学界では世界を二分する議論が熱くわき起こった。果たしてディランは、主に詩人や小説家のために用意された賞を受けるにふさわしいのかと。
反対していた人も、思いがけない受賞を受け入れ始めた頃、ディランは沈黙を破った。受賞の発表から2週間後たって、ディランはようやくコメントした。そして先月、スウェーデン・アカデミーは「先約のため」ディランが授賞式に出席しないと発表した。
アカデミーは過去の受賞者にも同様のコメントをしたことがある。2007年のドリス・レッシング氏のときだ。
ディランのファンたちは、ディラン自身が歌う形での受賞演説を、1曲たりとも聞くことはできなかった。ディランは、祝賀会で披露する「感謝のスピーチ」を書いた。スウェーデンの文学史研究者で批評家のホラス・エングダール教授が所感を述べた。
「ボブ・ディランは全ての作品を通じて、詩の力と可能性について、私たちの考えを変えた」(英語の演説全文)
パティ・スミスが授賞式に登場し、ディランの「はげしい雨が降る」(A Hard Rain’s A-Gonna Fall)を歌った。パティ・スミスはディランの受賞前から、授賞式への出演を依頼されていた。もともと自分の曲を歌うつもりだったが、自身に大きな影響を与えたディランの受賞を聞いて、ディランの曲を歌うことにした。
「私は10代のときからディランの背中を追ってきた。実に半世紀よ」。スミスは、ローリング・ストーン誌のインタビューに答えている。
スミスは演奏中に1回、歌詞を忘れて口ごもった。「血が滴り落ちている、黒い木の枝が見えた」という部分だ。スミスは緊張していたとして謝り、歌い終えた。
おそらく将来、スミス自身も、音楽で詩的な影響を与えた一人として評価されるだろう。しかし今は、スミスはディランの歌を、アメリカの今の政治状況のために歌っている。
「舌がない1万人が喋っているのを見た」。スミスはこの部分を、重要な、変化を予期させる言葉として、強調して歌った。
ハフィントンポストUS版に掲載された記事を翻訳しました。
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