アメリカ先住民の居留地の水源が汚染される懸念から抗議デモが続いている石油パイプライン「ダコタ・アクセス・パイプライン」の建設計画について、アメリカ陸軍省は12月4日、水源となるミズーリ川をせき止めたダム湖「オアへ湖」の地下にパイプラインを通す工事を認可しないと発表した。
ダコタ・アクセス・パイプラインは、石油パイプライン会社「エナジー・トランスファー・パートナーズがノースダコタ州からイリノイ州までをつなぐ1172マイル(約1886キロ)のパイプラインを建設するプロジェクトだ。建設ルート近くの居留地に住むアメリカ先住民スタンディングロック・スー族は、水源のミズーリ川、そして先祖から受け継いだ土地が汚染されことを懸念し抗議デモを続けていた。
環境保護グループはダコタ・アクセス・パイプラインの建設中止を、反対を唱えてきた何千人の先住民の人たちにとって「歴史的な勝利」だと称賛した。
権利擁護団体「350.org」創設者ビル・マッキベン氏はガーディアン紙に寄稿し、「アメリカ連邦政府がミズーリ川を横切るパイプラインルートの建設許可を却下したことは、さまざま意味を持つ。先住民たちが非暴力の行動で何を達成できるかを示した、画期的な勝利だ」と述べた。
「この勝利で、先住民たちと政府の関係が劇的に変わることはないだろう。変化というものはそう簡単に起きたりはしないからだ。しかし、この勝利が忘れられることはきっとないだろうし、これから何世紀先まで起きるさまざまな出来事に影響を及ぼすだろう」
政府は今後、環境影響評価報告書(EIS)を作成し、代替可能なパイプラインのルートを調査することになる。
「先住民たちの声が届いたのです」と、天然資源防護協議会代表のリア・スー氏は声明の中で言った。「主権国家の権利が尊重されました。スタンディングロック・スー族と多くの先住民コミュニティーは私たちに、一人一人が立ち上がり、一致団結して環境と正義を求めるパワーの大きさを思い起こさせてくれました」
自然保護団体「シエラクラブ」は、環境影響調査を実施することになった決定を評価し、先住民グループの懸念には十分な根拠があることが明らかになると指摘した。
「パイプラインから油が漏れることは、これまでの歴史を見ても疑問の余地はありません。むしろ問題は、いつそれが起きるか、なのです」と、先住民グループの指導者マイケル・ブルーン氏は声明の中で言った。「総合的な環境のレビューを行うことで、この危険なプロジェクトが、パイプラインが横切るすべての先住民コミュニティに脅威となることが示されるでしょう」
環境保護団体「グリーンピース」のスポークスマン、リリアン・モリーナ氏は、陸軍省の決定を「先住民の権利や主権を守る戦いにおける、歴史的な勝利」と呼んだ。しかし、4日の決定がこの戦いの終着点ではない。トランプ政権はプロジェクトを再開させる可能性が十分あると強調した。
「エナジー・トランスファー・パートナーズ社、ノースダコタ州のジャック・ダーリンプル知事、そしてトランプ次期大統領は今回の決定を尊重し、この破滅的なパイプラインの中止を求める人たちの意思をよく認識すべきです」と、モリーナ氏は声明の中で述べた。「戦いは今日で終わりではありません。地役権(ある土地の便益のために、他人の土地を利用する権利)の拒否を回避しようとするどんな企ても、徹底的な抵抗に遭うことなります」
ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。
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