EU離脱、イギリスの次はイタリア? 国民投票の結果次第で「イタレグジット」の可能性も

多くの観測筋は、危機が起こると予測している。

身振り手振りで熱弁を振るうイタリアのマッテオ・レンツィ首相。ローマのテレビトーク番組「ポルタ・ア・ポルタ」(ドア・ツー・ドアの意)で。

2016年はありえないことが続いている。

最初はイギリスだ。EU離脱(ブレグジット)を問う6月の国民投票で、イギリス人は史上初めてEUから離脱する国になることを選び、世界に衝撃を与えた。

次はアメリカだ。ドナルド・トランプ氏が11月の大統領選で、不動産王とテレビのリアリティ番組のスターというキャリアから大統領の座まで上り詰め、アメリカ国外にも衝撃を与えた。

今注目されているのはフランスだ。当初はありえないと言われていた、極右の国民戦線党首マリーヌ・ルペン氏が大統領選で最終的な候補の1人になったからだ。

しかしフランスの大統領選はあと5カ月先だ。その前に12月4日、イタリアで憲法改正の是非を問う国民投票が予定されている。結果によっては首相を辞任に追い込み、一部で言われているブレグジットならぬ「Italexit(イタレグジット)」に発展する可能性がある。

マッテオ・レンツィ首相は4日の憲法改正をめぐる国民投票を呼び掛けた。可決されれば、イタリアの政治システムを劇的に再編させることになる。首相の提案した一連の憲法改正案は、控えめに言っても複雑で完全に理解するのは難しい。テレグラフ紙によると、あまりに複雑なので、実際、あるスタートアップ企業は国民投票を理解するための「偏りのない講習」を1時間150ドル以上で開催しているという。

11月の最新の世論調査では、「反対派」が5ポイントリードしていた。国民投票で否決された場合に辞任を示唆しているレンツィ首相にとっては好ましくない結果だ。

もし反対派が勝ったら、憲法改正反対派の中心で、元コメディアンのベッペ・グリッロ氏が率いるポピュリズム政党「五つ星運動」が政権の座に就く可能性がある。十分な議席数を得れば、政党が以前から求めていたイタリアのEU離脱に関する国民投票を実施することができる。

多くの観測筋は、危機が起こると予測している。

「このような国民投票が実施され、実際に五つ星運動が政権を獲得すれば、イタリアの株式市場は混乱し、新たな金融危機が起こり、単一通貨ユーロは崩壊する可能性がある」と、イタリア経済の衰退に関するドキュメンタリーの共同執筆者ビル・エモット氏は11月30日付のフィナンシャル・タイムズの中で述べた。

■ 国民投票の結果、何が起きるのか

まず、憲法改正に「賛成」の票を投じるということは、議会から上院議員の数を大幅に削減することを承認するということだ。選挙で選ばれた315人の上院議員をわずか100人の任命された上院議員に減らす。イタリアでは現在、下院と上院に945人も議員がいる。これはアメリカの下院議員数の2倍以上にあたる。イタリアの人口はアメリカの約5分の1なのに。

レンツィ首相は、この国民投票は民主主義を変えるためではなく、国内の政治を簡素化することが目的だと強調している。またイタリアは共和国として70年の歴史の中で63の政権が発足し、「世界で最もひどい官僚制の国だ」と主張している。その指摘は的を射ている。例えばガーディアン紙によると、イタリアは未婚の母から生まれた子供に、結婚している両親から生まれた子供と同等の権利を与える法律を承認するまでに3年半以上かかった。

国民投票に批判的な人は多く、この改正案は国民から国の代表を選ぶ権利を取り上げ、権力を議会からレンツィ首相の元に集中させるものだと訴えている。

しかし、もしイタリアが近年債務不履行に陥っているギリシャと同レベルの不況にあえぐ経済を活性化させたいなら、改正は必要だ。

2016年11月26日、憲法改正の国民投票が迫る中、反対を支持するデモで語る反体制派政党「五つ星運動」の創設者ベッペ・グリッロ氏。REMO CASILLI / REUTERS

もしイタリアの投票で反対派が勝てば、レンツィ氏は辞任し、五つ星運動が選挙の前倒しを求め、2018年より前に事実上不可能と言われていた政権を握る可能性が増す。そうなると、この政党は以前から訴えてきた別の国民投票を実施し、イタリアが3番目の経済規模を誇るEUからの離脱の是非を問うことになる。フィナンシャル・タイムズによると、反対派が勝っても経営難にある8つのイタリアの銀行が破綻する可能性がある。

「トランプが勝ったのだから、私の五つ星運動も同じように勝てるかもしれまない。メディアはあっけにとられ、私たちが以前いた場所を尋ねるだろう」と、イタリアのトランプと呼ばれるグリッロ氏は11月、ヨーロッパ向けのメディア「ユーロニュース」に語った。

「我々はイタリアで最大の野党になった。ジャーナリストや哲学者たちは、私たちの躍進が人々の不満の現れだと言っている。我々が政権を握り、彼らはどうやって我々がそれを成し遂げたのか自問するだろう。国民はただ出かけて行って投票するだけでいい。我々は絶対に勝つ」と、グリッロ氏は述べた。

言うまでもなく、レンツィ首相の一か八かの国民投票は、複雑な状況を作り出している。そしてヨーロッパ中に政治的、経済的な不安定を生む可能性がある。世論調査で予測されているように改正が否決されれば、イタリアは反体制派の党首であるポピュリストを首相に任命し、イギリスとアメリカの仲間入りを果たすことになる。

ルペン氏は、トランプ氏の衝撃的な勝利は「絶対に不可能だと思われていたことを可能にした」とCNNに語ったが、今のところ、2017年のフランス大統領選で彼女が当選する確率は低い。

イタリアの政治的な既成勢力が直面している問題は、ルペン氏の場合よりずっと高い確率で起こる可能性がある。

ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。

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