児童への性的虐待、英国サッカー界で続々と明らかに。ルーニーも告発呼びかける

「30年間、この重荷を背負ってきた。魂が破壊された」

イギリスの元プロサッカー選手が子供の頃、イングランドのユースチームの男性コーチから性的虐待を受けたことを実名で告発したことから、続々と被害を訴える元選手らが現れ、波紋が広がっている。

イングランド・チェシャー州クルーのサッカークラブチームで、現在リーグ2に所属する「クルー・アレクサンドラ」のユースチームに所属していた元選手のアンディ・ウッドワード氏が11月17日付のガーディアン紙に、11歳〜15歳ごろに男性コーチからレイプされていたことを実名で告発した。これをきっかけに、同じく子供の頃に性的虐待を受けたスティーブ・ウォルターズ氏やポール・スチュワート氏らもBBCに出演して虐待を告発した。

アンディ・ウッドワード氏の現役時代(1998)

イギリスの国家警察署長委員会(NPCC)によると、子供の頃サッカークラブで性的虐待を受けたと名乗り出ているのはおよそ350人にのぼったという。

イギリス各地の警察が、サッカーで起きた過去の児童性的虐待の申し立てを調査している。20人以上の元選手らが今、性的虐待について発言し始めている。

全国警察署長委員会の児童保護担当サイモン・ベイリー警察本部長は、「性的虐待の告発者数は参考程度に過ぎず、情報を今も照合中のため、今後変わっていく可能性がある」と語った。

サッカークラブで起きた過去の児童性的虐待の申し立てについては警察が捜査中だ。

「我々はサッカー協会と緊密に協力し、極めて数が多く、今も増えている被害者たちに対し、サッカー界全体で効果的に連携して問題に対処する」

「児童性的虐待の被害に遭われた方には、はるか過去の話であっても、被害を受けたことを名乗り出るよう引き続き促していく。私たちはすべての申し出に対し誠意を持って真摯に耳を傾けて対応する。児童性的虐待について情報をお持ちの方にも名乗り出るよう促す」

ニューカッスル・ユナイテッドの選手だったデレク・ベル氏は実名を出すことを承諾し、ガーディアン紙の取材に応じた。

ベル氏は11月29日付のガーディアン紙で、1970年代に同氏の地元の少年サッカークラブで「恐ろしい」性的虐待を受けたと告白した。

デレク・ベル氏の現役時代(1982)

「信じられないような苦しみだった。彼は私の両親が隣にいることを分かっていながら性行為をしていた。彼は数年間、私たちを仕込んでいた。あの人にとっては、それが普通のことだった」

「心の奥底では普通ではないと分かっていたが、それを誰かに話したり、それは正しくないと申し出るのは、とても怖くてできなかった。本当に怖かった」

元北アイルランド代表のマーク・ウィリアムズ氏も11月29日に名乗り出た。ウィリアムズ氏はスカイ・ニュースの取材に、実名を出すことを承諾して虐待された体験を語った。

ウィリアムズ氏は、「個人的にも職業的にも、私の人生に取り返しのつかない影響があった。30年間、この重荷を背負ってきた。魂が破壊された」

「私は申し出ることを恐れ、鎖につながれているかのように感じてきた」

■ イギリス各地の警察、クラブチームの対応

元選手たちの告発を受けて、イングランドだけでなく、スコットランドの警察も捜査に乗り出した。サッカー協会も内部調査を開始した。

スコットランド警察の報道官は、「英国警察の調整された対応を確保するため、性犯罪者の取り締まりを行う警察の『消火栓作戦』、そしてイギリス児童虐待防止協会(NSPCC)の双方と連携している」と述べた。

イングランド・サッカー協会のグレッグ・クラーク会長は、これまでにない「最大の危機」へ迅速に対応し、「虐待が隠蔽されてきたかどうかはわからない」と語った。

ケンブリッジシャー警察の報道官は、イギリス児童虐待防止協会(NSPCC)から過去に何度か虐待の申し立てを受けたことがあると認め、現在調査中だと付け加えた。

現在、ロンドン警視庁、スタッフォードシャー警察、グレーター・マンチェスター警察、ハンプシャー警察、チェシャー警察、ノーサンブリア警察などが虐待の申し立てを受けて捜査している。

チェルシー・サッカークラブは、元選手のゲーリー・ジョンソン氏が1970年代、スカウトから虐待されたという告発を受け、調査を実施するため法律事務所と契約したと発表した。このスカウトはすでに死亡している。

チェルシーの報道担当者は、サッカー協会に調査で判明したあらゆる情報を提供する意向だと語った。。

ケンブリッジシャー州のチーム、ピーターバラ・ユナイテッドのオーナー兼チェアマンであるダレイ・マッカンソニー氏は、警察、サッカー協会、イングランド・プロサッカー選手協会「プロフェッショナル・フットボーラーズ・アソシエーション」(PFA)、サッカーの他の統括団体による性的虐待の調査に協力すると述べた。

マッカンソニー氏は「もし有罪と判明した場合、当局が当該人物へ厳しい処分を迅速に下すことを希望する」と述べた。

「私たちは、今後可能な限り当局に協力できるよう、あらゆる人に情報提供を呼びかけたい。 サッカークラブの上からから下まで、完全な透明性と誠実さとをもって対処し、率先して模範を示したい」

ケンブリッジ・ユナイテッドの報道担当者は、ケンブリッジシャー警察から過去の児童性的虐待の開示について、連絡を受けていると述べた。

ケンブリッジ・ユナイテッドは、「ケンブリッジシャー警察に数件の照会があったと聞いた。1990年代、そしてそれ以前にまでさかのぼることになる」と語った。

「ケンブリッジ・ユナイテッドは、すべての申し立てについて真摯に対処する。今はケンブリッジシャー警察からの詳細の情報提供を待っている段階で、どんな捜査にも協力する」

■ ルーニーが告発を呼びかけ「今すぐ伝えて」

マンチェスター・ユナイテッドのウェイン・ルーニーなど、各サッカーチームの主将らはイングランドサッカー協会とNSPCCが作成した動画で、虐待された選手たちに「積極的に告発をしてほしい」と呼びかけている

ルーニーは動画の中で、「子供たちを守る上で気になっていることを言う方法をみんな知っておくことが大切だ。誰かに何かされて傷ついているなら、そして怖がっているなら、信頼できる人に今すぐ伝えてほしい」と語っている。

ハフィントンポストUK版より翻訳・加筆しました。

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