「歴史的な均衡を破る挑発だ」トランプ氏の電話外交、アメリカ政界を揺るがす

「私がこのお祝いの電話を受け入れるべきではないというのは興味深い」

アメリカの次期大統領ドナルド・トランプ氏は12月2日、正式な外交関係がない台湾の蔡英文総統との電話会談を行った。アメリカ大統領や次期大統領が台湾の総統と会談するのは、1979年にアメリカが台湾と断交して以来、30年以上の歴史で初めてのことだ。

トランプの政権移行作業チームが発表した電話会談の内容によると、蔡総統はトランプ氏の勝利を祝福し、2人は「台湾とアメリカの間には緊密な経済的、政治的、安全保障関係がある」ことについて話した。

今回の電話会談は、その会話がアメリカとその最も重要な世界規模の貿易相手国である中国との30年に及ぶ関係を揺るがす可能性がある。

アメリカと国際社会のほとんどは、台湾に対して主権があるという中国の主張を認めている。しかし台湾には自国の選出による政府、憲法、軍隊があり、自らを独立国家とみなしている人たちもいる。

トランプ氏の会談は中国を激怒させ、そしてトランプ氏の就任前にアメリカと中国との関係を損なう可能性がある。

ホワイトハウスのアメリカ国家安全保障会議(NSC)の元アジア担当イヴァン・メデイロス氏は2日午後、フィナンシャル・タイムズに「中国の指導部はこの問題を、歴史的な均衡を破る挑発だという見方をしている」と語った。

「それが故意か偶発的かに関係なく、この会談はトランプ氏の戦略的意図に対する中国の見方をネガティブなものへと根本的に変えるだろう。 このような動きによって、トランプ氏は米中関係に不信と戦略的競争を促す長期的な土台を築いている」

ニューヨークタイムズによると、ホワイトハウスや国務省には事前に会談の知らせはなかったという。

トランプ氏は2日夜、蔡氏が電話をしてきたとツイートした。

台湾総統が今日私に電話をかけてきて、大統領選での勝利をおめでとうと祝福してくれた。ありがとう!

アメリカが台湾に兵器を何十億ドル売っていても、私がこのお祝いの電話を受け入れるべきではないというのは興味深い

しかし台湾のタイペイ・タイムズ紙は、会談はトランプ氏の「台湾友好キャンペーンのスタッフが、彼の補佐官が台湾と台湾海峡の状況について彼に説明した後」電話会談を調整したと報じている。

CNNによれば、中国はこの会談に関してホワイトハウスに接触しようとしているという。

ホワイトハウスは2日遅くの声明の中で、台湾が中国の一部であるという「我々の『一つの中国』という原則が揺るぎないことを明言する」と述べた。

「我々の基本的な関心は、台湾海峡の平和と安定にある」と、ホワイトハウスの国家安全保障会議のスポークスマンであるネッド・プライス報道官は語った。

中国の王毅外相はこの会談について、中国は「一つの中国」政策への「いかなる干渉や破壊も望んでいない」と語った。

「私はこの問題によって、ここ何年ものあいだアメリカ政府が主張してきた一つの中国という原則が変わるとは思わない。一つの中国という原則は、中米関係の健全な発展の礎石だ」と、王毅外相は声明の中で述べた。

蔡氏との会談は、トランプ氏と海外首脳との一連の会談で、国際関係の専門家や外交官に衝撃と不安を残した。

トランプ氏はパキスタンのナワーズ・シャリフ首相と電話で話し、大統領として国を訪問するのを楽しみにしていると語った。バラク・オバマ大統領は、パキスタンとの関係は複雑で時には騙し合いになり、警戒と判断力の必要となるために慎重に対処していた。トランプ氏はまた、1989年か独裁支配しているカザフスタンのヌルスルタン・ナザルバエフ大統領とも電話会談した。

また、トランプ氏はフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領とも電話会談している。就任以降、ドゥテルテ大統領は麻薬取引に関わった人物の超法規的殺人を奨励している上、「ジャーナリストは暗殺されて当然だ」というような発言もしている。

トランプ氏の電話会談について、ホワイトハウスのジョシュ・アーネスト報道官は2日、慎重な言い回しながらトランプ氏は国務省で外交官からのアドバイスを求めるよう促した。「オバマ大統領は、国務省の職員が共有してきたアドバイスと専門知識から多大な恩恵を受けてきた」と、彼は記者会見で記者団に語った。

「トランプ氏が大統領に就任したとき、トランプ氏が海外でビジネスを指南するように、国務省の職員がアドバイスを提供する準備ができていると確信している。彼が受け入れてくれることを望む」

民主党はクリス・マーフィー上院議員は、より直接的にトランプ氏を批判した。

「過去48時間に起こったのは変化ではない。これらは何のプランもない、外交政策の重大なピボット(方針転換)だ。戦争はそうやって始まるものだ」と、マーフィー上院議員は2日にツイートした。

「そして、もし彼らが方針転換したのでないなら(過激で一時的にレールを外れたにすぎないのなら)、同盟国は我々の立場がどうなっているのか見当もつかずに去っていくだろう。どちらにせよ問題だ。おそらく、我々がなるべく経験のある国務長官を選任する時なのだろう。そう、本当に、本当に今すぐにだ」

ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。

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