ASKA容疑者のタクシー車内映像「テレビ局も違法」と弁護士

ハフィントンポスト編集部では、小林正啓弁護士(花水木法律事務所)に話を聞いた。
時事通信社

覚せい剤を使用したとして、覚せい剤取締法違反の疑いで警視庁に逮捕された歌手のASKA容疑者について、逮捕直前に乗っていたタクシー車内の映像が11月29日、日本テレビ系のニュース番組などマスコミ各局で放映され物議を醸している。ハフィントンポスト編集部では、小林正啓弁護士(花水木法律事務所)に話を聞いた。

■車内ビデオ公表は違法?

——車内で撮影されたビデオが公表されたことに法的な問題はあるでしょうか?

明らかに違法だと思います。

——どのような法律違反でしょうか?

勝手に写真を撮られて公表されない権利である肖像権と、私生活上のプライベートな行為を公表されないという権利、プライバシー権の両方を侵害していると言えますね。

——報道目的であれば例外的に公益性が認められる場合もあります。今回の件はどうでしょうか?

一般論として、権利の侵害を覆すほどの公益性があれば形式的に違法でも例外として公表が認められる場合があります。ただし、今回のビデオを見る限り、それほどの公益性はありません。

——覆されるほどの公益性とは例えばどんなことですか。

例えばですが、逃亡している場面や証拠隠滅をしている場面などですね。あるいは今回は容疑を否認しているようですから、「実際にはやっているんだ」と発言しているとか。もしくは、相手が政治家であるような場合です。そこまでの内容であれば公益性が認められる可能性はあります。

——政治家ではありませんが歌手という有名人相手ではあります。

以前、松本人志さんがレンタル店でアダルトビデオを購入する防犯カメラの画像を掲載した写真週刊誌に対して、肖像権の侵害で出版社と編集者を提訴したという裁判がありましたね。2006年の東京地裁の判決では、「掲載は違法」として、松本さんの損害賠償請求が認められました。今回の件は、その判決と同様の案件と言えると思います。

——今回は誰が違法行為をしたと言えますか?

まずは、公表されることを承知で提供したタクシー会社、そして実際に放送したテレビ局も違法行為をしたと言えます。

■タクシー業界団体は

タクシー無線グループの「チェッカーキャブ」は、映像を提供したのは加盟社だとして11月30日、謝罪した

都内のタクシー会社による業界団体「東京ハイヤー・タクシー協会」によると、ドライブレコーダーは現在約98%のタクシーが搭載しており、およそ7〜8割程度は車内の映像を撮影しているという。

一方で、警察に対する捜査協力や、法令上の規定で公開が必要な場合を除いては、映像を第三者への提供はしないようにと各会社単位で指導しているという。「車内の映像を外部提供してはいけない。遺憾に思います」と話している。

■放送された内容は

「ASKA容疑者、逮捕直前の映像を入手」のタイトルで報じている日テレNEWS24によると、この映像が撮影されたのは逮捕される約3時間前、28日午後6時ごろで、外出先から帰宅のために利用したタクシーの車内の映像。ASKA容疑者が、タクシー運転手に「駒沢通りをまっすぐ環七を越えてください」と指示するやり取りなどが報じられた。

ASKA容疑者は午後6時半ごろ、報道陣が待ち構える自宅にいったん帰り、その後警察車両で警視庁へ出頭した。

ハフィントンポスト編集部は日本テレビに本件について問い合わせたが、「広報担当者が不在」としている。

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