「選挙は良くない。村民が疑心暗鬼になる」姫島村で61年ぶり村長選、現職が9選果たす

「61年ぶりの選挙戦」として話題となった大分県の離島にある姫島村の村長選が11月6日に投開票され、無所属で現職の藤本昭夫氏が9回目の当選を果たした。

「61年ぶりの選挙戦」として話題となった大分県の離島にある姫島村の村長選が11月6日に投開票され、無所属で現職の藤本昭夫氏(73)が9回目の当選を果たした。

今回の村長選は任期満了に伴うもの。1984年から村長職を務める現職が、9選を目指して出馬。これに対し、村教育委員で元NHK職員の藤本敏和氏(67)が「8期連続の無投票は異常で、閉塞(へいそく)感は強い。村政に風穴を開ける」と、親子2代で15期連続で無投票当選だった現職を批判し、村政の刷新を主張。一騎打ちとなった。

NHKニュースによると、現職の藤本昭夫氏が1199票。無所属で新人の藤本敏和氏は512票だった。現職、新人ともに藤本姓だが、親戚関係はないという。投票率は、61年前の97.81%より下がったが、88.13%と高かった。全国町村会によると、現職の町村長の9回連続当選は、全国最多の山梨県早川町長(10回)に次ぎ、北海道乙部町長と並ぶという

藤本昭夫氏は国や県との太いパイプを強調して支持を集め、投票数の7割の票を獲得し圧勝。テレ朝newsによると、当確が伝えられると、「選挙というのは良くないですね。村民が疑心暗鬼になりますからね」と語った。

■親子2代で村長職を50年以上独占

姫島村長選が選挙戦となったのは、1955年が最後だった。毎日新聞によると、前回の村長選は、「元職と新人の一騎打ちで激しい選挙戦となったため、狭い島にしこりが残っ」たという。そのため、村では選挙を避ける風潮が生まれたとされる。村長選は16回連続で無投票が続き、今回の村長選は61年ぶりの選挙戦となった。

姫島村では1960年、現村長の父である故藤本熊雄氏が無投票で当選。その後も無投票で7期務めた。現村長の藤本昭夫氏は、父親の急死を受けて1984年に立候補。8回連続で無投票で当選してきた。熊雄氏・昭夫氏の親子2代で村長職を50年以上独占していることになる。

61年ぶりの村長選、その様子はどんなものだったのか。地元紙の大分合同新聞は、以下のように伝えている。

投票が始まった午前7時。村中心部の姫島小学校に設けられた投票所には、有権者3人が並んだ。最初の2時間で計260人ほどが投票したが、午後は人もまばら。島の中は普段と変わらない日曜の風景で、村職員の一人は「これで選挙か、という感じでしょ」と苦笑いした。

ただ、選挙への関心が低いわけではない。地縁、血縁が中心の村議選では投票率が90%を超える。国政選挙でも80%以上で、村民には「選挙は行くのが当たり前」(村選管職員)という意識があるという。今回の村長選も有権者の67%に当たる1304人は2~5日に期日前投票をしていた。

この日、投票所に足を運んだ40代女性は「投票日に来られるから、期日前には行かなかった。村長選は無投票が当たり前だと思っていたけど、選挙になってびっくり」。他の有権者も「61年ぶりの選挙戦なんて、奇跡やね」と話した。

姫島村長に藤本昭氏  「謙虚にかじ取りを」 - 大分のニュースなら 大分合同新聞プレミアムオンライン Gateより 2016/11/07)

■姫島村ってどんなところ?

姫島村は、大分県国東半島の北部に位置する離島で、人口約2000人。車エビの養殖など漁業などが盛ん。村役場の公式サイトによると、ブランド商品として「姫島車えびしゃぶしゃぶ」を売り出しており、「姫島車えびのプリプリの歯ごたえと甘みが自慢の逸品」だという。

姫島車えびしゃぶしゃぶ

また、国の天然記念物の「姫島の黒曜石産地」や、国選択無形民俗文化財の「姫島盆踊」や、渡りチョウの「アサギマダラ」など風光明媚な観光資源も特徴だ。

姫島盆踊・きつね踊り

姫島で乱舞するアサギマダラ

村役場の運営は「賃金を抑えて多くの職員を雇う」方針で、「日本のワークシェアの元祖」とも呼ばれる

一方で、村の基幹産業である漁業は、漁獲高が低迷するなど近年は不振が続く。西日本新聞によると、当選した藤本氏は「四面を海に囲まれた島の発展には漁業振興が不可欠。加工による付加価値づくりを進めたい」と漁業の再建に力を入れると訴え、「村を支える若い人材を育成したい」と今後の抱負を語った。

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