中国を訪問中のフィリピンのドゥテルテ大統領は10月20日、北京市で開かれたビジネスフォーラムで演説し「軍事的にも経済的にもアメリカと決別する」と発言した。さらに、「今後長い間、中国が頼りだ。中国にとってももちろん利益があるだろう」と語った。中国重視の姿勢を明確に打ち出した。CNNなどが報じた。
朝日新聞デジタルによると、ドゥテルテ大統領と、中国の習近平国家主席は同日会談したが、南シナ海の領有権問題については表立った議論はなかった。
その一方で中国は、ドゥテルテ大統領が尽力している薬物中毒者の更生施設について、90億ドル(約9330億円)の融資を約束した。さらに鉄道や道路、港湾建設などインフラ整備への積極的な参加を表明し、覚書を交わした。民間の投資も含めると、経済支援の規模は総額135億ドル(約1兆4000億円)に上る見通し。
フィリピンは領土問題については棚上げし、中国からの経済支援や関係改善を優先させたとみられるという。
習主席は会談で、南シナ海問題を念頭に「摩擦を適切に処理する努力をしたい」と発言。これに対してドゥテルテ大統領は「積極的な両国関係の発展に尽力し、中国との協力を強化したい」と応じたという。
ABCニュースによると、米国務省のカービー報道官は20日の記者会見でドゥテルテ大統領の発言について「アメリカとフィリピンの70年間の同盟関係に合致せず困惑している。真意についての説明を求める」と述べた。
南シナ海の領有権問題をめぐって、中国はほぼ全域の管轄権を主張していたが、国際仲裁裁判所が2016年7月に中国側の主張を認めない判決を下している。
中国の覇権を懸念する日米はこの判決を守るように中国に呼びかけ、フィリピンを支えてきたが、ドゥテルテ大統領によるフィリピンの方針転換によって、今後、難しい対応を迫られそうだ。
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