発掘作業過程の骨。
13世紀に頭蓋骨に傷を負って死亡した男性の遺骨が2014年に、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州のトゥーレイル国立公園にある川岸で発掘された。この男性は、先住民のアボリジニが使っていたブーメランが頭に刺さった可能性がある。
この口をあんぐりと開けた人骨を分析した研究者グループは、人骨は13世紀に暴行を受けて死んだ青年のものと考えており、頭蓋骨の深い傷は、木製の刃のついたワォンナという戦闘用ブーメランで一撃を食らった傷とみられる。
「ワォンナが戦闘用の武器として使うとすれば、斧のように使われたと思われます」と、オーストラリア・グリフィス大学の考古学者マイケル・ウェスタウェイ博士はニューヨーク・タイムズに語った。ウェスタウェイ博士はこの骸骨の分析した論文の主要著者でもある。「非常に恐ろしい武器だったと思われます。顔面への一撃で直ちにショック状態を起こすほどのものでした」
この遺骨は、バーキンジと呼ばれる地元原住民のウィリアム"バッジャー"ベイツさんが、崩れた頭蓋骨が地面から突き出しているのに気がついた。
遺骨の発掘調査 GRIFFITH UNIVERSITY
ベイツさん夫妻はその亡骸を「カークジャ」(バーキンジ語で「兄」の意味)と名付け、ウェスタウェイ博士にその人物がいつ頃どのようにして死んだのか分析を依頼した。
「バッジャーがいなかったら、この発見はありえなかったでしょう」と、ウェスタウェイ博士はハフポストUS版に語った。
科学雑誌「ナショナル・ジオグラフィック」によると、当初カークジャは、ヨーロッパ人たちがオーストラリアへ入植するようになってから、ある時点で剣か短剣で斬り殺されたと考えられていた。しかし、人骨を分析したところ、1200年代に死んだということがわかった。ヨーロッパからの移民がこの地域にやってくる600年前、まだオーストラリア大陸に金属製の道具がなかった時代のことだ。
CTスキャンや放射性炭素による年代測定などの結果、カークジャが残忍な方法で命を落としたかも明らかになった。ブーメランで、右目が飛び出しそうになるほどの恐ろしく残虐な一撃を受けた後、カークジャの肋骨は折られ、腕の一部が叩き斬られている。
カークジャの肘から下の部分には防御傷が見られないため、主な調査員たちは、カークジャが不意打ちを受けたのだろうと考える。
発掘されるカークジャ GRIFFITH UNIVERSITY
カークジャは一撃で死亡したが、埋葬は正式な儀礼で行われたようだ。カクージャは砂を盛った上に頭が置かれ、「丁重に埋葬されてあった」と、ウェスタウェイ博士は「ナショナル・ジオグラフィック」に語った。「カクージャは間違いなく、多くの人々から慕われていました」
カクージャは今でも慕われている。骨の分析調査の後、カクージャはバーキンジの人々によって再埋葬の儀式が行われた。
ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。
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