絶海の孤島ナウルでは、難民が凄惨な虐待を受けている

人々は留置所のような環境の中で暮らしているという。

国際人権NGO「アムネスティ・インターナショナル」は10月17日、オーストラリア政府が太平洋の島国ナウルに設置した難民収容所で、難民と難民申請者に残虐な行為、拷問をしているという報告書を発表した。

ナウルは「世界で最も弱い立場の人々に、オーストラリア国内で安全な場所を探すのを断念させるだけの苦しみを与えるために設計された、『野外刑務所』である」と、調査チームシニアディレクターのアンナ・ニースタット氏は述べた。

アムネスティは7月から10月にかけて現地調査を実施した。ビザの取得が難しいことで知られるナウルに、長期間滞在するのは珍しい。アムネスティは難民と難民申請者58人に取材した。またオーストラリア政府から直接雇われているか、政府が雇っている民間会社で働く現役職員や元職員からも話を聞いた。

オーストラリアは難民や難民申請者がボートで直接入国することを認めていない。そのため難民たちはナウルの難民収容所に送られる。アムネスティによると、現在島には難民と難民申請者が約1159人いて、島の人口の約10%を占めている。

2015年、ナウルにある難民収容所の家族居住区。(アムネスティ・インターナショナル提供)

報告書によると、世界の国際空港よりも小さい面積の島で、人々は留置所のような環境の中で暮らしているという。彼らは一度オーストラリアから難民認定を受けると、ナウルから出ることは許されない。

また、島の難民と難民申請者は適切な医療を認められないことが多く、個人やコミュニティ全体を危険にさらす可能性がある。

ナウルでどれだけの人が精神的な問題に苦しんでいるか、統計で確認することはできないが、アムネスティが取材した人のほとんど全員が「苦痛を感じ、自傷行為、自殺未遂を告白した」という。

ある男性はアムネスティに対し、10週間で2回自殺を図ったと述べた。あるイラン難民の女性は1週間に数回死のうとしたと語った。この女性は結局自分の家族の住居に火を付け、今は難民収容所の病棟の中に幽閉された生活をしている。

島の医療スタッフは、精神的な疾患には強い鎮静剤や抗精神病薬を処方することが多い。報告書によると、これにより「重い副作用が起き、少しも安らぎが得られない」という。

彼らは身体的な病気も放置されているようだ。例えば、重い心疾患や腎疾患、治療が不十分な骨折、糖尿病による合併症、婦人科系・泌尿器科系の疾患、感染症、皮膚病などだ。

「私の娘は視力が低下しましたが、メガネを手に入れる方法がありません。ここの政府は、視力を測定する機械がないと言います」と、2人の子供を持つイラン人の母親はアムネスティに告白した。

最も深刻な病気を抱えた人は、治療のためにオーストラリアの病院に搬送されるが、退院するとすぐナウルに戻される。

ナウルの地元住民から攻撃を受けた難民。(アムネスティ・インターナショナル提供)

■ 地元住民が難民を山刀で襲撃

アムネスティはまた、恣意的に拘束され、虐待されている人がいると伝えている。

あるバングラデシュ人男性はアムネスティに、頭部に負った深刻な傷に苦しんでいると伝えた。ナウルの男性たちから巨大な石を投げつけられ、蹴られてモーターバイクから降ろされ、殴られたという。地元住民たちはソマリ人男性もマチェテ(山刀)で襲ったと報告されている。

子供たちは特に狙われやすい。教師たちは地元の学校に通う難民の子供たちを殴り、ナウルの子供たちはマチェテで難民の子供たちを脅しているという。

アムネスティによると、オーストラリア当局は「ナウルで起きていることについて常に報告を受けているが、それでも政府は虐待を容認している。なぜなら、ボートで難民申請者がやって来るのを阻止したいからだ」と批判している。

「オーストラリアのマルコム・ターンブル首相は、あらゆるレベルで子供たち、女性、男性を標的にした虐待があるのを知りながら、この悲惨な状況を容認している」と、アムネスティのデニス・ベル広報部長はハフポストUS版に語った。

「このシステムがうまく機能しているというオーストラリア政府の考えは、懲罰的なものです」と彼女は付け加えた。「それは一方の集団を守るためなら、もう一方を傷つけてもいいということです」

アムネスティはオーストラリア政府に対し、すみやかに収容所を閉鎖し、国内外の権利にしたがって、難民と難民申請者全員をオーストラリアに連れて行くよう勧告した。

オーストラリア政府は17日に出した声明の中で、報告書で主張されているもののいくつかには「証拠がない」と反論している

「移民・国境警備省はナウルの難民や亡命者の健康と安全の問題を真摯に受け止め、オーストラリアが支援する収容所について独立した調査を歓迎する」と述べた。

声明によると、公表前、アムネスティは報告書の件でオーストラリア政府と連絡を取らなかった。また移民・国境警備省はアムネスティに「その件に関わるよう求め、移民省は行政サービスを提供する人たちと、監視団体と共にあらゆる問題に取り組む」と約束したという。

ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。

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