テレビ番組を放送と同時にインターネットでも流す「同時配信」を、総務省が有識者会議で検証する。高市早苗総務相が10月18日、記者会見で述べた。視聴にかかわる費用や権利処理の問題などを議論し、2018年夏頃に最終的にとりまとめる予定。
高市氏は「ブロードバンドやスマートフォンなどの普及に伴い、インターネット経由で多様な動画配信サービスがグローバル規模で提供されている」とコメント。視聴者の利便性が向上するなどと評価する一方で、「多くの視聴者が同時に視聴した場合のシステム負荷などの技術的な課題や、ネットワーク利用にかかる費用負担、権利処理の在り方といった課題がある」などと話した。
■ネットで同時配信番組を見たときのNHK受信料はどうなるの?
同時配信が実現すると、NHK受信料はどうなるのか。
朝日新聞デジタルによると、有識者会議では、ネットで番組を見る人からも一定のNHK受信料を取る方向で議論するが、ネット配信を放送法が定める「放送」には含めない方針だと解説する。これにより、テレビは家に置いただけで受信料の対象になるのに対し、パソコンやスマホは持っているだけでは受信料徴収の対象にはならない見通しだ。
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というのも、NHKの受信料制度は、テレビの設置を前提とした「放送法」に基づき運営されている。一方でネット配信は放送ではなく「通信」にあたる。
このため、NHKがネットのみで番組を見る人から受信料を取るには、法改正が必要となる。有識者の議論では、実際に番組を見た人だけから徴収する手法の検討などが行われる見込み。
なお、同時配信には受信料の他にも、
- 人気のスポーツ番組を多数が視聴するなどした場合、既存の通信システムに過度の負荷がかかるが、新しくシステムを整備するとなった場合、費用は誰が負担するのか不明確。
- テレビ局が音楽関連の著作権団体や出演者と結んでいる契約の多くはテレビ放送に限っているので、契約を結び直す必要がある。
- 視聴者がネットに流れると、放送の方の視聴率が下がり広告収入が減る恐れがある。
- キー局がネットに主要番組を配信した場合、地方局は視聴者を失い経営が立ち行かなくなる恐れがある。
などの課題がある。