結婚後に職場で旧姓使用が認められず人格権を侵害されたとして、東京都内の私立中高一貫校「日大三高・中学」に勤める30代の女性教諭が、同校を運営する学校法人に旧姓使用と約120万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁(小野瀬厚裁判長)は10月11日、女性の請求を棄却する判決を言い渡した。「職場で戸籍上の氏名の使用を求めることには合理性、必要性がある」などというのが棄却の理由。共同通信などが報じた。
判決によると、教諭は2003年から同校に勤務。2015年に結婚し、改姓した。結婚後も旧姓の使用を認めるよう学校側に申し出たが、学校側は「教職員として行動する際には戸籍名を使用すること」などとして、認めなかったため訴えを起こした。
毎日新聞は今回の判決について、次のように解説している。
判決は旧姓について「個人が結婚前に築いた信用、評価の基礎となるもので、通称として使う利益は法律上保護される」と認めた。その上で学校側の対応を検討し「職員を特定するために戸籍姓使用を求めることは合理性がある」とした。
教諭側は「旧姓の通称使用は広く認められている」と主張したが、「医師など旧姓が認められない国家資格も多数ある。戸籍姓と同じように旧姓を使用することが、社会に根付いているとまでは認められない」と退けた。
(東京地裁、認めず 女性教諭の訴え棄却:毎日新聞より 2016年10月11日 20時50分)
朝日新聞デジタルは、今回の判決は「男性裁判官3人が判断した」と指摘する。「既婚女性の7割以上が戸籍名を使っている」とする新聞社のアンケート結果や、旧姓使用が認められていない国家資格が「相当数」あることを挙げ、「旧姓を戸籍名と同様に使うことが社会で根付いているとは認められない」と結論づけたのだという。
判決後に記者会見した原告の女性教諭は、「生徒や保護者、同僚も旧姓で呼んでくれている。戸籍姓を強要されパワハラと変わらないのに、我慢しろと言われた感じで非常に悲しい」「裁判官の中に女性が1人でもいたら判断が変わったかもしれないと思います」などとコメント。弁護団は「社会の動きに逆行する判決だ」として控訴する方針を示した。
最高裁大法廷は2015年12月、夫婦別姓を認めない判決を言い渡した。その理由の1つが、「旧姓を通称としての使用が広まることで、不利益は一定程度緩和される」というものだった。この最高裁の判断によって、職場などで旧姓使用ができると考えられるが、11日の東京地裁の判決は、職場で戸籍姓の使用を求めた学校側の対応に違法性はないと判断するというものになった。
■「夫婦別姓が認められないから旧姓なのに」
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