クリントン氏、ウォール街を賞賛する非公開講演 ウィキリークスが暴露

「私たちは中間層から遠く離れた存在になった」

内部告発サイト「ウィキリークス」は10月7日、アメリカ大統領選の民主党候補ヒラリー・クリントン氏が、過去にゴールドマン・サックスなどウォール街の複数の企業を相手に、非公開で講演した内容の抜粋とみられる文書を公開した。

クリントン氏はこうした講演で多額の講演料を受け取り、講演内容を公開していないことから批判を浴びていた。

当初BuzzFeedがレポートしたこの抜粋は、1月25日にクリントン陣営のリサーチディレクターを務めるトニー・カーク氏から、選対本部長を務めるジョン・ポデスタ氏など陣営幹部に送られた、クリントン氏の発言を80ページ以上にわたってまとめたメモのメールが公開されている。

CBSによると、カーク氏は、クリントン氏の講演の中から特に政治的に批判を受けると思われる部分をメモしている。その主な内容は「クリントン氏は、ウォール街の立て直しにはウォール街の内部関係者が必要と述べ、ウォール街への資金援助の必要性を認めている」、「クリントン氏、上院議員としての自らのウォール街との関係を強調」、「クリントン氏、大統領選への立候補に向けた課題を語る」、「ブラックベリー(クリントン氏が使用していた携帯)に関する安全上の問題を自覚しているクリントン氏」、「クリントン氏の発言は、キーストーン・パイプライン(カナダの石油企業『トランスカナダ』がカナダからテキサス州に石油を運ぶパイプラインの建設を計画していたが、オバマ政権が建設申請を却下した)に賛成の立場を示している」、「カナダの健康保険制度と、単一支払い制度により好意的なクリントン氏」といったものだ。

この抜粋によると、クリントン氏は2014年の講演で、自身と夫のビル・クリントン元大統領が蓄えた資産からすると、自分たちは中間層から「遠く離れた存在」になったと話している。

アトランティック」誌によると、2013年の講演でクリントン氏は「開かれた国境と開かれた貿易による、半球規模の共通市場」を作るというビジョンを持っていると語ったことが記されている。現在、クリントン氏は環太平洋連携貿易協定(TPP)に反対の立場をとっている。

またクリントン氏は、政治家が結果を出すためには、様々な問題に対して「公」と「私」の立場を持つ必要があると語っていたことが引用されている。

政治はソーセージが作られる過程に似ています。それは面白みがないし、常に同じやり方で行われますが、大抵の場合は必要なところに行き着きます。ですが、非公開の議論や取引のすべてに常に皆さんの目が向けられていたら神経質になってしまうでしょう。ですので、公と私の両方の立場が必要なのです。

「ウォール街との関係を強調」という題が付けられた部分では、クリントン氏が金融業界を賞賛する発言がある。その賞賛の対象には、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、フィデリティ、アメリプライズといった金融機関の名前が挙がっている。ゴールドマン・サックスが主催した講演でクリントン氏は、「この会場にいる人々の多くがトレンドライン(株式用語で、市場のトレンドが明確に見えるようにするために引く補助線)の達人です。あなた方は水平線の向こうを見つめ、誰も作り出したことのない商品を考案し、それを実現するためにすべきことをしています」と発言している。

また、クリントン氏は「業界を誰よりも理解しているのは、その業界で働いている人々です」と述べ、金融規制について批判的な立場をとっている。

魔法のような規制はありません。多すぎても、少なすぎても駄目です。どうやって黄金の鍵を手に入れるのか、何がうまく機能するのかどうやって見極めればいいのでしょうか? 業界を誰よりも理解しているのは、その業界で働いている人々です。

政治ニュースサイト「ポリティコ」によると、2015年10月、民主党の候補指名を争っていたバーニー・サンダース上院議員に勢いがつき始めた頃、カーク氏はサンダース氏への攻撃材料となる論点のリストを、同僚に向けてメールで送信している。メールの題名は「レビューをお願いします サンダースへの攻撃」となっており、サンダース氏への攻撃材料となりそうな1994年の犯罪法案、銃規制、同性婚、環境などの論点について書かれている。クリントン氏の陣営は、サンダース氏が掲げた公約を実現するための支出について実際に攻撃している。

「サンダース上院議員は、アメリカ国民に対して彼の政策のコストはどの程度なのか、その支出をどうするのかを説明していない。具体案を聞かれると、彼は答えを渋る。その新しい支出に数兆ドルが必要だという試算を誰かが出しても、彼はただ否定するだけで、自分の資産を出そうとしない」と、カーク氏は書いている。

クリントン氏の広報を務めるグレン・カプリン氏は7日夜、ウィキリークスの発表に対して声明を発表した。

本日、アメリカ政府はロシア当局がウィキリークスを用いて我々の選挙に干渉し、ドナルド・トランプ氏を利するよう目論んだのではないかとする正当な疑惑をすべて排除した。我々は、ヒラリー・クリントンに対して損害を与えたいという欲望を隠そうとしないジュリアン・アサンジ氏(ウィキリークスの創設者)によって公開された、盗用された文書が本物であるかどうかについての確認はしない。国家安全保障関係者の上層部が警告してきたように、その文書はロシアによる巧妙な誤報キャンペーンの一部として捏造された可能性がある。

ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。

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