2016年のノーベル平和賞は、コロンビアのフアン・マヌエル・サントス大統領に贈られることが10月7日、ノルウェー・オスロのノーベル平和賞選考委員会によって発表された。
52年にわたって続いたコロンビアの内戦終結に向け、反政府ゲリラ組織「コロンビア革命軍」(FARC)と交渉を進め、和平の合意に至った姿勢が評価された。
■コロンビア内戦とは?
1959年のキューバ革命後、中南米では反政府左翼ゲリラの結成が相次いだ。
1964年に結成されたFARCは、政府軍との内戦の中で、不法な麻薬取引や誘拐、略奪、テロを組織的に主導した。52年にわたる内戦の結果、国土は荒廃し、暴力と麻薬栽培・取引が横行した。殺害されたのは22万人以上、行方不明者は数百万人に上るとみられる。
■コロンビア和平とは?
サントス氏は、親米右派で対ゲリラ強硬路線のウリベ前大統領の下で2006~09年まで国防相を務め、アメリカ軍の支援を受けてFARCの鎮圧作戦を進めた。
しかし、FARCを完全に制圧することはできなかった。一方、最盛期に2万人を擁したFARCも掃討作戦で衰退し、最近は7000人弱に弱体化した。
2010年の大統領選で初当選後、左派政権のベネズエラ、コロンビアとの関係改善に乗り出したほか、ウリベ政権下で途絶えていたFARCとの対話を再開。2012年からキューバやノルウェーの仲介で本格的な和平交渉を始め、2016年9月26日、和平合意文書に調印した。
【合意の主な内容】
・FARC戦闘員への刑罰を一部免除
・FARCの政治参加を容認
・紛争被害者への賠償
・薬物取引の根絶
しかし、対FARC強硬派だったウリベ前大統領ら反対派は、戦闘員の恩赦や政治参加を認める内容を「FARCに甘い」と批判。10月2日の国民投票で否決された。
選考委員会は、否決が「コロンビアの未来に多大な不確実さをもたらした。和平へのプロセスが崩壊し、内戦が再び激化する大きな危険を秘めている」としたが、「和平のプロセスが死んだことを意味しない。国民投票は和平そのものへの賛否を問うものではない。反対派が拒否したのは平和への欲求ではなく、FARCとの和平協定だった」として、サントス大統領がすべての勢力が参加する国民対話の場を準備していることなど、和平の進展に向けた努力を評価した。
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