10月3日、ノーベル医学生理学賞を受賞したことが発表された、東京工業大の大隅良典栄誉教授(71)は、細胞自身が不要なたんぱく質を分解する仕組み「オートファジー」を分子レベルで解明したことが評価された。神経疾患のパーキンソン病の解明とも深く関わるオートファジー(自食作用)とはどんな仕組みだろうか。
大隅研究室の公式サイトなどによると、オートファジーとは、細胞に核のあるすべての生物が持つもので、その細胞の中で起こっている分解作用。細胞内に作られた膜が、分解するたんぱく質などを包み込んで分解酵素を含んだリソソーム(細胞小器官)や「液胞」と呼ばれる器官と融合することで分解している。
オートファジーの作用では、不要になったたんぱく質などを細胞自身がリサイクルし、新しいたんぱく質を作る材料にしたり、細胞内をきれいに保つ役割などをしていることがわかっている。食事で摂りきれないたんぱく質は、オートファジー作用で再生産しされたたんぱく質が補っており、これが生命維持に重要な働きをしていると考えられている。大隅良典教授は、その仕組みを約30年前に解明して以来、研究を続けている。
大隅教授は、酵母を使ってその膜をつくるのに必要な遺伝子を見つけた。さらに動植物にも、その酵母と同じ働きをする遺伝子がほとんど揃っていることがわかってきたという。
2012年時点の朝日新聞のインタビューで、大隅教授は、「遺伝子が作るたんぱく質が膜形成にどんな影響を与えているのかを調べている」と語り、研究を始めたきっかけについて、以下のようにも語っている。
酵母の液胞に分解機能があることはわかっていましたが、誰も研究していなかった。酵素を持たない変異型の酵母を使ったら、液胞に取り込まれた小部屋が分解されずにたまっていくのが観察できました。1988年に独立して自分の研究室を持ち、研究を始めてから1、2カ月目のことでした。ラッキーでした。
朝日新聞、2012年11月15日朝刊科学面より
パーキンソン病などの神経疾患の一部は、このオートファジーの機能がうまく働かず異常なたんぱく質が脳に蓄積してしまうことが原因と動物実験でわかっており、病気の解明に役立つ可能性がある。
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