民進党の長妻昭氏は10月3日、衆院予算委員会で安倍晋三首相に対し、自民党の憲法改憲草案に関する説明を求めた。長妻氏は、基本的人権を「永久の権利」と定めた憲法97条などを削除した理由を追及。これに対し安倍首相は「憲法審査会で議論を」との答弁に終始し、説明を避けた。
■安倍首相「私が改憲草案を出したのではない」
質問の冒頭に長妻氏は、安倍首相が9月30日の予算委員会で、97条の削除理由を「条文の整理にすぎない」と答弁したことを問題視。「(基本的人権が)永久の権利である由来が描かれている重要な条文」として批判した。
また長妻氏は、基本的人権を「現在及び将来の国民に与えられる」とする憲法11条の文言が、自民党の改憲草案では削除されている点も追及。「自民党の責任者として、なぜこういう改正草案を出したのか。基本的人権に関わる条文を変更したのか」と説明を求めた。
これに対し、安倍首相は「私が憲法草案を出した言うが、どこに出したのか。世に出したのは私ではない。谷垣総裁の時に出された。これは屁理屈ではない」と反論。憲法草案は、あくまで自民党が改憲の全体像をわかりやすくしたもので、憲法審査会に提出したものではないという姿勢を示した。その上で、「国民が心配しているというが、我々はこれを示した4回の選挙で、皆さんよりは圧倒的勝利を収めている」と挑発した。
また安倍首相は、「97条は新しい条文を加えるのではなく、削除。(反対であれば)削除すべきじゃないという議論をすればいい」と述べた上で、「予算委員会で議論するならば、何のために憲法審査会をつくったのか」と長妻氏を批判。「予算委員会は、逐条的に私が解説する場所ではない」とし、説明を避けた。
長妻氏は、数回にわたって基本的人権に関する条文削除の理由を質問。「参院選後、改憲案をベースに議論すると言っている」と追及し、説明できないのであれば改憲草案の取り下げるよう求めた。これに対し、安倍首相は「基本的人権、平和主義、国民主権については変えないと再三申し上げている」「憲法審査会において議論を」と答弁した。
■長妻氏「"ぼくちゃん知らない"と聞こえる」安倍首相「デマゴーグだ」 双方非難の応酬
3日の予算委員会では、長妻氏と安倍首相が挑発しあう場面も。安倍首相の答弁を受けて、長妻氏は「谷垣総裁の時に出したものだから、『ぼくちゃん知らない』というふうに聞こえた」とし、責任転嫁ではないかと追及。
これに対し安倍首相は「谷垣総裁の時に出したものだから、『ぼくちゃん知らない』とは一言も言っていない。言っていないことを言ったかのように言うのはデマゴーグだ」と長妻氏に反論した。
長妻氏と安倍首相の討論の最中、議場では与野党双方からヤジが飛び交った。野党のヤジに安倍首相が応戦する場面もあり、浜田靖一委員長が「不規則発言を止めて下さい。総理も不規則発言にお答えになるのを止めて下さい」と制止した。
7月11日に安倍首相は、参院選の結果、憲法改正に前向きとされる4党(自民・公明・おおさか維新・日本のこころ)などが総定数の3分の2に達したことを受け、自民党の改憲草案をベースに改憲論議を進めたい意向を示した。
その一方で安倍首相は9月29日、参院本会議で「合意形成の過程で特定の党の主張がそのまま通ることがないのは当然だ」と発言。衆参両院の憲法審査会で、自民党の改憲草案にこだわらない考えを示している。