東京都武蔵野市は9月29日、吉祥寺で近隣住民の建設反対運動が起きていた私立認可保育所の開設を断念すると発表した。2017年4月に開設予定だったが、運営事業者が撤退を決めた。
この保育所は、吉祥寺駅まで歩いて10分ほどの同市吉祥寺東町の住宅地に開設予定の「ましゅまろ保育園」。運営事業者は保育に新規参入する埼玉県所沢市の自動販売機管理会社で、約500平方メートルの空き地に鉄骨2階建ての施設を作り、0~5歳児81人の受け入れを計画していた。
朝日新聞デジタルは次のように報じた。
近隣住民約20人が「道路が狭くて危険な立地だ」「保育事業の経験がない業者では不安だ」として市議会に陳情書を出すなどの反対運動を展開。市は「住民との合意形成を優先してほしい」などとして、事業者が8月末から9月上旬に予定していた着工の延期を求めていた。
事業者側は「すでに保育士も確保しているが、このままでは4月に間に合わないので断念した。市は反対意見ばかりでなく、開設を望む人の声も聞いて着工を決断してほしかった」と話す。
(吉祥寺の認可保育所、開設断念 住民反対で事業者が撤退:朝日新聞デジタルより 2016/09/29 20:43)
毎日新聞によると、反対の住民団体で共同代表を務める男性(64)は「本来は行政主導で事業者を選び、市有地に開設すべきだ」と話した。一方、待機児童解消を期待していた市議は「住みたいまちナンバーワンと言われてきた吉祥寺が高慢なまちだと見られかねず、残念を通り越して情けない」と述べた。
武蔵野市の待機児童数は122人と深刻な状況で、同市は待機児解消を急いでいる。特に吉祥寺地区の保育所不足は深刻といい、市内に20ある認可保育所(認定こども園を含む)のうち、吉祥寺駅の半径1キロ以内にあるのは1カ所だけ。4月時点で地区の待機児童は32人だが、幼稚園や別地区の保育所に行くケースも多いという。
朝日新聞デジタルは、「ましゅまろ保育園」の開設断念について「来年度新設予定の認可保育所はこの1件だけで、市の待機児童対策への影響は必至だ」と伝えた。
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