ノースカロライナ州シャーロットで警官が黒人男性射殺、抗議デモが暴動に

抗議デモが暴動と化した。

アメリカ・ノースカロライナ州シャーロットで9月20日、銃を携帯していたとされる黒人男性キース・ラモント・スコットさん(43)が、別の容疑者を捜査中の警察官に射殺された。しかし射殺されたスコットさんは事件当時、銃を持っていなかったという目撃者の証言を受け、抗議デモが暴動と化し、少なくとも12人以上の警察官が負傷し、デモ参加者の1人が銃撃を受け重体となっている。

警察発表と、現場に居合わせた人との間で、事件当時何が起こったか証言が大きく食い違っている。スコットさんの家族を含めた目撃者によると、警察の発砲は一方的なもので、スコットさんには障害があり本を片手に息子を待っていただけだったという。一方警察は、スコットさんは銃を携帯しており、警察官がスコットさんに何度も銃を手放すように命令した結果だと主張している。

キース・ラモント・スコットさん(右)と家族の写真。日付は不明。彼の名前で設けられたクラウドファウンディング「GoFundMe」アカウントから転載

「銃を手放せと警察官が叫んだが、彼は拳銃を手にしたまま車から出てきた」と、シャーロット・メクレンブルク警察のカー・パットニー本部長は9月21日の記者会見で説明した。「彼は車から降り、警察官を威嚇するようなポーズをとったのです」

そして、ブレントリー・ビンソン警察官が彼に発砲したと、パットニー本部長は述べた。

パットニー本部長によると、警察は一丁の銃を押収したが、家族らが主張する本は見つかっていないという。ノースカロライナ州の法律では、拳銃を見えるように携帯して持ち歩く「オープン・キャリー」を認めている。

パットニー本部長は「スコットさんが実際に警官に銃を向けたかどうかは、はっきりとはわからない」と付け加えた。

現場の警官らは周りにいた多くの目撃者が聞こえるほど「大きな声ではっきりとスコットさんに指示を出した」が、彼は車にいったん戻り、再び銃を手にしたまま外に出てきた、とパットニー本部長は説明した。

警察はスコットさんに発砲後、すぐに医療機関に連絡し、その場で心肺蘇生を施したが、スコットさんはその後病院で死亡した。

■ ボディカメラ映像が公開されない?

シャーロット警察によると、ビンソン警察官は2014年7月から署に勤務しているという。ビンソン警察官もスコットさんもどちらも黒人だ。ビンソン警察官は事件当時、私服の上に警察のベストを着ていたが、ボディーカメラは着用していなかった。しかし他の警察官はカメラを着用していた。

【参考記事】

シャーロット警察による民間人殺害は、2016年になって6人目。地元テレビ局「WSOC-9」によると、地区検事は過去5回の事件について警察の行為は正当だと判断している。

すべての部署の警察官が、1年前からボディカメラを着用しているが、2015年9月から5月にかけて起こった4つの射殺事件のうち、3つはカメラが作動していなかった。残りの7月3日の銃撃事件がボディカメラに記録されたかどうかは不明だ。

地元紙「シャーロット・オブザーバー」によると、メックレンバーグ・シャーロットの機動隊と特殊火器戦術部隊(SWAT)はボディカメラを身につけていない

パットニー本部長によると、現場で対応した別の警察官たちのボディカメラの映像は、調査が終わるまで公表されない見込みだという。

最近通過したノースカロライナ州の法律によって、警察の車載カメラとボディカメラの映像は、特定の状況での例外を除き、一般のアクセスはほとんど不可能になる。ただし、この条例は10月1日までは発効しない。

■ 抗議デモが暴動化、巻き込まれる一般市民

今回の射殺事件は、ノースカロライナ大学シャーロット校からおよそ1マイル(約1.6キロ)の集合住宅の駐車場で起きた。警察官たちは当時、別の容疑者を捜査していた。

アメリカ司法省は21日、「現在、状況を検証している最中」だと述べた。この事件はオクラホマ州の40歳の黒人男性、テレンス・クラッチャーさんが警官に射殺された事件から1週間も経たないうちに起きた。スコットさんと同様、クラッチャーさんも他の事件の捜査中の警官に射殺された。

今回の事件を受け、多くの人々が殺害現場に集まり警察の暴力を非難する言葉を口々に唱え、怒りの波が急速に広まっていった。投げられた石や瓶で12人以上の警官と報道陣も何人か負傷した。警察はパトロール車を破壊したとして抗議に加わった「扇動者たち」を強く非難した

警察によると、デモ隊に車を包囲されて身動きがとれなくなった警察官を移動するため、緊急車両が派遣された

地元テレビ局「WBTV」によると、抗議者たちは一晩中、州間道85号線へ移動し道路を封鎖したり、通行車両に石を投げたりした。

注意して聞くと、通過する車に石が当たる音が聞こえる。

この家族は、州間道85号線を通行中に、抗議者たちがドライバーに石を投げてフロントガラスを粉々に割った、と話している。

デモ参加者はさらに自動車部品を運ぶトラックの積荷を盗んだ後、高速道路で火を起こしたという。あるドライバーは地元テレビ局「WSOC-TV」に「身の危険を感じている」と話した。

【参考記事】

「彼らが主張したいことはわかります、しかし、彼らは生きるために努力している罪のない人々を傷つけています」と、そのドライバーは話した

ロイターによると、警察が来てフラッシュバン(閃光手榴弾)でデモ参加者を高速道路から一掃すると、抗議者たちはすぐに解散したという。暴徒化したデモ隊の中には、地元のウォルマートを襲撃した

速報 | 多数の抗議者がノース・トライオン・ストリートのウォルマートに押し入る

シャーロットのジェニファー・ロバーツ市長は住民に冷静さを保つよう呼びかけた。

「コミュニティーの人々は回答を求める権利があるし、調査は引き続き十分に行われる」と、ロバーツ市長はTwitterに投稿した後、「私も回答が欲しい」と付け加えた。投稿はその後削除された。

動画でスコットの娘と名乗るリリック・スコットさんは、Facebook Liveで射殺直後の様子を捉えた。リリックさんと他の目撃者らが、スコットは身体障害者で銃は持っていなかった、と叫ぶのが聞こえる。

「警察官はたった今、黒人だという理由で私の父に4発撃った」と、リリックさんは話した。

ハフポストUS版はこの動画が本物かどうか独自に確認できておらず、スコットさんとも連絡が取れなかった。彼女のFacebookのページはその後アクセス禁止になったが、あるバージョンの動画はまだYouTubeで見られる。

警察官が何発撃ったかについては、説明がない。

催涙ガスがまかれている

石と粉々に割られたガラスが、抗議が始まったオールド・コンコード・ロードに散乱している。たった今、1人の男性が「抗議は終わらない」と叫びながら車で通り過ぎていった。

■ 州は非常事態宣言を発令

ノースカロライナ州のパット・マクローリー知事は9月22日、非常事態宣言を発令して州兵と州のハイウェイ・パトロールが配置についた。

「市民や警察官に向けられる暴力や器物の破損を容認することはできない」と、マクローリー知事は声明で述べた。

バンク・オブ・アメリカが職員たちに住宅地にあるオフィスへの出勤を控えるように指示したことを受けて、シャーロット市のジェニファー・ロバート市長は外出禁止令を検討していたと、地元メディアが報じた。

オクラホマ州タルサでも、16日に黒人男性テレンス・クラッチャーさんが白人女性警官に殺害された事件をめぐり抗議デモが起きている。クラッチャーさんを射殺した警察官の様子が映った動画が公開されたが、動画にはその当時の黒人男性の手の動きがはっきりと映っていた。タルサでのデモは、射殺したベティ・シェルビー警察官の逮捕を要求した。タルサ郡のスティーヴ・クンツワイラー検事は、シェルビー警察官を第一級殺人で訴追すると発表した

一連の殺害事件で、アメリカ警察当局の人種偏見に対する非難が増大している。そして黒人を殺害する警察に対し、より一層の説明責任を求める声も増えている。警察に関するデータ調査機関「センター・フォー・ポリシング・エクィティ」が7月に発表した調査によると、警察が黒人たちに対して武力行使する割合は、白人たちに比べて3倍以上だ。

【参考記事】

バラク・オバマ大統領は、シャーロットとタルサの市長たちと21日に電話会談した。

人権団体「アメリカ自由人権協会」は、事件のカメラ映像を公開するように警察に要請した。警察車両は通常ダッシュボードにカメラを搭載しており、警察官たちもボディカメラを着用して持ち運ぶように義務付けられている。

ロバート市長は22日、カメラ映像を調査する予定だと述べたが、公開するのか、また公開がいつになるのかは明言しなかった。

「私たちは、知り得る全ての事実の完全公開を求めます」と、全米黒人地位向上協会(NAACP)の州支部代表ウィリアム・バーバー市が文書で述べた。

バーバー氏はによると、NAACPはシャーロット市の職員やスコットの家族と22日に面会する予定だと話した。

ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。

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