築地市場の移転先の豊洲市場の一部に、土壌汚染対策として施すはずだった「盛り土」がされていなかった問題は、移転を決めた石原慎太郎知事が地下にコンクリートの箱を埋め込む工法への変更に関わっていたことが、徐々に明らかになりつつある。
盛り土を実施していなかったと、小池百合子知事が9月10日の緊急記者会見で発表した後、石原氏は9月13日のBSフジの番組で、こう述べていた。
聞いてません。これは、僕は、だまされたんですね。
やっぱり、都の役人ってのは腐敗してるね。そう思った。
豊洲の土壌汚染対策を話し合う都庁の専門家会議では、2007年5月の第1回会合で、地下構造物の埋め込み工法を取った場合、揮発性の有害物質が「建物の中に入り込むかもしれない」との懸念が委員から示されていた。
しかし、専門家会議が盛り土を提言した直後、2008年5月30日の定例記者会見で石原氏は、盛り土に替わる地下構造物の埋め込みについて「インターネットで見た海洋工学の専門家」が提唱していたのを「担当の局長に言った」と述べていた。
土壌の汚染をどうやってクリーンアップするかじゃなくて、もっと違う発想で物を考えたらどうだと。一回その土地をどこかへ持って言って、違う方法で焼くとかなんかして汚染を取る。一方であの跡地に土を全部さらっちゃったあと、地下2階ぐらいですかね、3m、2m、1mか、そういう段階の箱ですね、コンクリートの。それを埋め込むことで、その上に市場としてのインフラを支える。その方がずっと安くて早く終わるんじゃないか。土壌汚染をどう回復するかという発想だけじゃなくて、思い切ってものを取り換える、みたいなね、違うベクトルを考えた方がいいと私、かねがね言ったけど、それがどう伝わったのか。そういうサジェスチョン(示唆)というかプロポーズ(提案)もありました。
要するに当局が説明しているような方法だけじゃなくて、もっと画期的な方法があるんじゃないか。そうすると、みんなが安心して納得するような手立てが発見されるかもしれない。
この発言について、石原氏は2016年9月15日午後、報道陣の取材に答えた。日本テレビは「盛り土から、地下空間のある設計に変更したと都の事務方から報告を受けていた」と語ったと伝えている。共同通信によると、「都庁の役人からそういう情報を聞いたから、そういう意見があると取り次いだだけ」と言い「全部、下(都職員)や専門家に任せていた。建築のいろはも知らないのにそんなこと思い付くわけがない」と釈明した。
一方、当時の東京都中央卸売市場長だった比留間英人氏は東京新聞の取材に「石原氏から『こんな案があるから検討してみてくれ』と指示を受けた」と話す。比留間氏はNHKに対しては、この翌年に費用面の問題で採用できないことを石原氏に伝えていたといい「当時、知事は工事経費を圧縮することに重点を置き、工法にこだわっていたわけではないと思う」とも話した。
【UPDATE】2016/09/18 9:40
石原慎太郎・元東京都知事は9月17日、「(外部の)専門家からこういう話があるから考えた方がいいと(当時の都中央卸売市場長の)比留間英人氏に言った」と述べた。「元秘書が詳細を覚えていた」として、「市場長から聞いた」との説明を訂正した。