イスラム教徒の女性用に全身を覆い隠す「ブルキニ」
フランスのマニュエル・ヴァルス首相が8月29日、イスラム教徒の女性用に全身を覆い隠す「ブルキニ」をめぐる論争を新たなレベルへ発展させた。自国の国民的シンボル「マリアンヌ像」を持ち出して、「ヴェールで覆うよりも胸を露わにする方がよりフランスの精神にふさわしい」と発言した。
「マリアンヌが胸を露わにしているのは、国民に授乳しているからなのです!」とヴァルス首相は演説で叫んだ。「マリアンヌはヴェールで覆われてはいません。マリアンヌは自由だからです。それが共和国の精神です!」
マニュエル・ヴァルス首相
マリアンヌ像は1848年のフランス専制国家崩壊後、自由の象徴となった。国家文書やフランス貨幣にはマリアンヌの姿が使われている。最も有名なのは、1830年にユージン・ドラクロワによって描かれた「民衆を導く自由の女神」で、マリアンヌが片方の乳房を露出し、フランス国旗をかざしている。
マチルダ・ ラルール氏などフランス歴史学者の中には、マリアンヌはいつも胸を露わにしているわけではないと反論する人もいる。また、マリアンヌは美術的にはより保守的に描かれていることが多く、髪をきっちり結び、胸元は完全に覆われ、立っているよりも座っている姿が多い。
マリアンヌの露出した胸は「特段の意味を持っているわけではありません。単に芸術上の構図に過ぎないのです」とラルール氏はツイートした。「マリアンヌが胸を露わにしているのは寓話上の人物だからでしょ、バカバカしい!」
ブルキニを着る女性をめぐる論争から、ヴァルス首相のヴェールに関するコメントが飛び出し、この論争はここ数週間フランスの政界に物議をかもしてきた。
フランスの多くの市町村でブルキニを公の場で着用している女性たちに罰金が科されていたが、フランスの行政裁判の最高裁にあたる国務院は26日、ブルキニ禁止令の凍結を命じる判決を下した。
この論争はフランスの政界に大きな政治的亀裂をもたらした。ナジャット・ヴァロー=ベルカセム教育相は、ブルキニ禁止令の支持者たちは民族論議を焚きつけ、禁止令を政治目的で利用しようとしていると非難した。
2017年の大統領選挙に立候補を表明したニコラ・サルコジ前大統領は、自分が再選された場合はブルキニを禁止するべく憲法を改正するとまで公約した。
フランスの大統領選は2017年4〜5月に行われる。
ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。
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